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こわいこわい カゲチャン(ホスト 〈仮〉源氏名 28歳)の話

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〈単身不倫〉〈占ってごめんねー、だ〉のスピンオフ  あらあら、書き始めちゃいますよ、創作大賞の部門に当てはまらないのに    (単身不倫)で キングゴージャス 〈占ってごめんね…
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こわいこわいカゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話 9

 父親の彼女は翌日夕方に家に戻ると、先に帰宅していた悠人に、ねえ、昨日良かった?と、優しいお姉さんの笑顔見たいのを作ってにっこり笑いかけてきた。

 どうなんでしょうね
 悪くはなかったです
 いくつか返答が頭に浮かんだが、結局答える義理もない。

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こわいこわいカゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話 8

 なけなしの5まんえんだよん。
 と、女は悠人の前で一万円札を5枚扇型に広げた。

 急な展開に、流れのままにキッチンに来てみたが、悠人はどうにも落ち着かず、ダイニングテーブルの脇に所在なく立ったまま、差し出された5万を受け取った。

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こわいこわいカゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話 7

 髪の長さは違うけれど、なんとなく体型と顔つきの似ている女たち。アメリカの犯罪史では、シリアルキラーは、似たタイプをターゲットにする、特に髪型と顔だったけど、それだね、と悠人は思う。髪型に関しても、父親は自分と一緒にいる時間に、自分の好みの長さになるように仕向けていく。彼ば殺人を目的としているわけではないから、時間がある。そうして、悠人の記憶に区別されて残らない悠人の母親にどことなく似た女たちが入

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こわいこわいカゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話 6

 多分、父親が父親であることのタガが外れたのだろう。悠人が高校卒業と共に家を出るまで、月単位、下手すると週単位で、見知らぬ女が入れ替わり立ち替わりやってくるようになった。

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こわいこわいカゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話 5

 翌月はタクシーで祥悟を送り届け、玄関先で待ち受けていた母親に預けると悠人は無言で立ち去った。
 母親は祥悟を抱いたまま苦しそうな表情で悠人を見ていた。苦しみの中に、もしかしたら祥悟と残ってくれるのではないかという一縷の期待。それに気づかないように無表情で、無言で、悠人は背を向けた。今回は母親が悠人の背中に向かって彼の名前を呼んで引き止めようとすることはなかった。

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こわいこわい カゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話 4

 歩いて30分の距離にある祖父母の家は保育園児の祥悟を連れてでは、永遠に思える。
 それを悠人が中3になったある時期から、父親は月に一度、第三土曜日に必ず連れて行けと、突然言い出した。
 裁判所の判決が出たのだろう。親権と養育費は父親に。そして、母親は月に一度の面会権を主張した。

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こわいこわいカゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話 3

 悠人は祥悟の面倒を見る以外はぽぽ何もしなかった。コンビニメシを二人で食べ、保育園の送り迎えをし、二人で風呂に入り、自分たちの服や下着は洗ったが父親のものは放っておいた。

 父親は部屋の掃除をしろとか、食器を洗え洗濯をしろ、と文句を言ったが、いうことを聞かず筋トレをしていたら父親は黙った。

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こわいこわい カゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話の話 1無料(2話以降有料部分あり)

 小学校から帰ってくると、家の中がひっそりしていた。

 父は仕事で母はパートに出ている。弟は保育園だ。いつも通りそれぞれに理由がある不在のはずなのに、何かが違うと悠人は思った。
 或いは、もしかしたら当時はそんなことは思わずに、記憶の改竄というヤツで、あとから、そう思ったように自分で思い込んだのかもしれない。
 そうならば、テーブルの上のメモを目にする前にイヤな予感があったのも、後付けの記憶だろ

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