こわいこわい カゲチャン(ホスト〈仮〉 源氏名 28歳)の話の話 1無料(2話以降有料部分あり)
小学校から帰ってくると、家の中がひっそりしていた。
父は仕事で母はパートに出ている。弟は保育園だ。いつも通りそれぞれに理由がある不在のはずなのに、何かが違うと悠人は思った。
或いは、もしかしたら当時はそんなことは思わずに、記憶の改竄というヤツで、あとから、そう思ったように自分で思い込んだのかもしれない。
そうならば、テーブルの上のメモを目にする前にイヤな予感があったのも、後付けの記憶だろうか?
ランドセルを放り出して、不安な気持ちでメモを見下ろした。
「必ず迎えに来ます。
祥悟の保育園のお迎えお願いします。」
なんだよ、これ
頭に浮かんだ言葉がそのまま口から出ていた。
いつもなら、弟の祥悟の迎えは、パート帰りの母の役目だった。
母は家を出て行ったのだ、と、瞬間的に分かった。
必ず迎えに来ます、っていうのは、もうしばらくは迎えに来れないってことだ。しばらくってどれくらいだよ。3年、とか、5年、とか。祥悟はまだ子供かもしれないけど、オレはもう大人になってるよ。そんなに経ってから迎えに来ても、意味ねえよ。
悠人はテーブルの上に突っ伏した。
保育園に弟を迎えに行く。
悠人を見つけて弟はニッコリ駆け寄って飛びついたが、すぐにキョロキョロ辺りを見回して、おかあさんは?、と素直な疑問を口にした。
悠人は答えずに、
祥悟、にいちゃんがおんぶしてやろうか、と言った。
するする と言って祥悟が早速しゃがんだ悠人の首に手を回す。
スルスルしゃなくて、シテシテ、じゃないのか、と、どうでもいいことを頭に浮かべながら、悠人は、しょ、っと立ち上がった。
第2話 https://note.com/inuyoshi/n/ne664391c3a2e
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