幼い頃の奇妙な記憶~呉明益著『歩道橋の魔術師』~
1970年生まれの私が子どもだった頃は高度経済成長期で、生まれ育った田舎町にも新興住宅地が増え、色々な場所から様々な人々が流入してきた。一方で、まだ戦後を引き摺っていて、近くの川沿いの土手などにはバラック小屋で暮らしている人たちがいたり、所謂「部落者」と呼ばれていた人たちも日常的に見掛けていた。
まだインターネットどころか、テレビ局さえNHKと民放1局程度であり、しかもテレビのチャンネル権も新聞も大人のもので、私たち子どもは、数だけは大勢いる近所の子どもたちと外で無邪気に遊ん