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解決不可能だからこそ、理想を追い求め続ける~映画『四等辺三角形』~

映画『四等辺三角形』(早川黎監督、2024年。以下、本作)の本編約140分の間、ずっと辛かった。逃げ出したいとさえ思った。 断っておくが、それは本作がつまらないからでも、出来が悪いからでもなく、観客である私が、私自身ときちんと向き合わざるを得なくなるからだ。 本作が描き出すのは、ずばり「いじめ」だ。 本作で描かれる現代のいじめは、私が中学生だった昭和より陰湿化しているように見えるが、一度も家庭を持った事がない私には、これがリアルなのかカリカチュアなのかわからない。 しかしそ

    • 映画『夜のまにまに』

      僕は映画で、夜を引き延ばすことしかやってない 映画『夜のまにまに』(磯部鉄平監督、2024年。以下、本作)のパンフレットに、磯部監督がそう語ったと書かれている。 夜というのはとても不思議で、そこには「秘め事」の背徳感と高揚感、さらには謎の親密感の気配までが付き纏う(さらには「ほとんどの人が寝ている時間に起きている」という謎の優越感も)。 セックスはもちろん浮気だってそうだが、それだけでなく、自分の裏というか、日中では絶対に人目に晒さない言動をしてしまう。或いは、それを臆面

      • 「映画」は『あの頃。』の記録装置だ~テアトル新宿・20代の太賀と仲野太賀オールナイト特集『あの頃。』『ほとりの朔子』『南瓜とマヨネーズ』~

        テアトル新宿で開催された『20代の太賀と仲野太賀オールナイト特集』の3本立てを観ながら、改めて「映画」という媒体は『あの頃。』を記録する装置だ、と思い知った(以下、当日の上映順)。 『あの頃。』(今泉力哉監督、2021年)実際の松浦亜弥のPV、石川梨華の卒コン映像などがふんだんに使われているこの映画には、まさに2004年~05年の『あの頃。』が詰まっている。 と同時に、私j自身は実際に映画館で観た2021年も想起された。 だから、その時の拙稿に書いた、仲野演じるコズミンの生

        • 「読書」を堅苦しく考えて尻込みする人へ。読書は自由だ~青山南著『本は眺めたり触ったりが楽しい』~

          「読書」というものに高い壁を感じるのは、もしかしたら、いや、かなりの確率で、「かくあるべし」という「作法」というか「決まり」がある、という思い込み或いは刷り込みによるものではないだろうか。 曰く、「最初から読み始め、最後まで読まなければならない」だとか、「内容や作者の主張が理解出来なければならない」だとか、「感想や内容を人に伝えられるように読まなければならない」だとか。 しかし、青山南著『本は眺めたり触ったりが楽しい』(ちくま文庫、2024年。以下、本書)は、タイトルから

        • 解決不可能だからこそ、理想を追い求め続ける~映画『四等辺三角形』~

        • 映画『夜のまにまに』

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        • 「読書」を堅苦しく考えて尻込みする人へ。読書は自由だ~青山南著『本は眺めたり触ったりが楽しい』~

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          映画『AT THE BENCH アット・ザ・ベンチ』を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

          映画『AT THE BENCH アット・ザ・ベンチ』(奥山由之監督、2024年。以下、本作)を観た帰り、それなりに混んでいる電車のつり革につかまって観てきた映画を振り返ろうとして、セリフひとつ正確に思い出せないことに愕然とした。映画館を出て、まだ30分も経っていないのに、だ。 思い出すのは映画を観ながら自分が思ったことで、しかしこれとてはっきりとした記憶ではなく、何となく摸とした感じでしかないことにもまた、愕然としてしまった。 そのときは確かに覚えていたはずなのに、どんどん

          映画『AT THE BENCH アット・ザ・ベンチ』を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

          ウーマンリブ公演 舞台『主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本』を観た、というだけの拙稿

          ウーマンリブ公演 舞台『主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本』(宮藤官九郎作・演出)を観て、本当に免疫力があがった気がする。 何故そう感じるかというと、きっと、頭ではなく身体が無条件に喜んでいるからだと思う。 「2時間強(と、本当にアナウンスされている)」の中で、タイトルどおり6本のコント(+緩いアフタートーク)が展開される。 ……いや、されたはずだ。 というのも、何も覚えていないからだ。 時折断片的に面白かったシーンがフラッシュバックしてしまって帰りの電車の中で

          ウーマンリブ公演 舞台『主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本』を観た、というだけの拙稿

          舞台『そのいのち』

          「対等な関係」という言葉は、ある。 しかし現実社会に「対等な関係」はあるのだろうか? 舞台『そのいのち』(佐藤二朗作、堤泰之演出。以下、本作)を観ながら、それをずっと考えていた。 当人同士がどう思っていようと、人間社会において他者同士が「関係」を持つとき、そこに(一時的であれ)必然として「する(した)/される(された)」という「関係性」が生じてしまうのではないか? そしてその関係性は「上/下」を想起させ、やがて「優/劣」となり、慢性化(或いは過剰化・過激化)すると「上/下」

          舞台『そのいのち』

          映画『AT THE BENCH』公開中~奥山由之写真集『君の住む街 復刻版』~

          街-特に大都会・東京-は、変化が激しい。 何げなく歩いていて、ふと後ろを振り返ると、そこにあったはずの物が、もう、ない。 というか、そこにあったはずの物が思い出せない。 変わりやすい街を思い出そうとすると、それはいつだって、少しフォーカスが甘く、輪郭がおぼろげだ。 映像作家・写真家の奥山由之は言う。 少女もそうだ。 すれ違って、ふと振り返ると、そこには印象とは違う大人の女性が立っている。 思い出す少女は儚げで、やっぱりフォーカスが甘い。 そこにいる女性は確かにかつての少女

          映画『AT THE BENCH』公開中~奥山由之写真集『君の住む街 復刻版』~

          誰かが握ってくれたあったかい"おにぎり"を食べながら~映画『ココでのはなし』~

          ホントはわかってる。 何をしたいのかも、何をしなくちゃいけないのかも。 ホントはわかってる。 自分はアイツらより真剣じゃないからとか、親がうるさいからとか、自分がいなくなると周りが困るからとか、そんなことは単なる言い訳だということも。 ホントはわかってる。 私が食べたいのは、そして何より美味しいと思うのは、コンビニで売られている機械が握った冷たいおにぎりじゃなくて、握った人が直接差し出してくれるあったかいおにぎりだということも。 わかってるのに行動に移せない。何もしてな

          誰かが握ってくれたあったかい"おにぎり"を食べながら~映画『ココでのはなし』~

          2024年11月2日~11月5日 酒。読書。観劇。それだけ ~東京国際映画祭2024~

          私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。 たとえば、2024年11月2日から11月5日にかけて…… 2024年11月2日朝から雨。その中を映画館に向かった。 道中、敷村良子著『がんばっていきまっしょい』(幻冬舎文庫。単行本はマガジンハウスより1996年刊)を数十年ぶりに読み返していた。 10:00 映画『港に灯がともる』(TIFF2024 Nippon Cinema Now)@T

          2024年11月2日~11月5日 酒。読書。観劇。それだけ ~東京国際映画祭2024~

          言葉はウソをつく~映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(TIFF2024 コンペティション)を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)~

          言葉はウソをつく。 ホンマの事も言うが、やっぱりウソをつく。明らかにウソというのもあるが、「自分、何ゆーてんねやろ?」と思いながらも、勝手に口が動いてしまうのを止められないことも(本当に)よくある。 時には、実際に「何ゆってんるんやろ」と口にしながらも、それすら口が勝手に動いている所業だったりもするから厄介だ。 ウソでも何でも、口が勝手に動いて止まらないのは、そうやって言葉を吐き出し続けていないと、「自分」というものを保てないからだ。 それは「本当の自分」という事とは全く関係

          言葉はウソをつく~映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(TIFF2024 コンペティション)を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)~

          山崎バニラの活弁小絵巻 2024(TIFF2024 ユース)

          映画祭では普段観る機会のない作品や過去の名作、まだ公開前の作品まで様々な映画を観られるのが嬉しい。 さらに、こんな特別企画も観られて本当に嬉しい。 『唯一の弾き語り弁士である山崎バニラが、サイレント映画に合わせ、大正琴やピアノの生演奏をつけつつ、活弁をする』という「山崎バニラの活弁小絵巻」は、東京国際映画祭(TIFF)の名物企画で、今年で何と7回目なのだそうだ。 私は初めて参加したのだが、「ユースプログラム」に設定されているだけあって、老若男女が同じものを観て笑う、という幸

          山崎バニラの活弁小絵巻 2024(TIFF2024 ユース)

          映画『サンセット・サンライズ』(TIFF2024 ガラ・セレクション)を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

          映画『サンセット・サンライズ』(岸善幸監督、2025年1月17日公開予定。以下、本作)の開始早々、菅田将暉演じる主人公・西尾の無遠慮な振る舞いに、本作をどう観ればいいか戸惑った。 西尾の「自由に生きてる風」の行動にイライラしながら暫しの時間を過ごした後、井上真央演じるヒロイン・百香がマスクを外す姿に見惚れる彼を観て、合点がいった。 これは「大人のラブコメ」だ。 フォーマットは完全に漫画『めぞん一刻』(高橋留美子、1980~87)で、その上に乗っている「大人」とは「歴史」-つ

          映画『サンセット・サンライズ』(TIFF2024 ガラ・セレクション)を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

          オールメン、ついてこい!~劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』~

          頑張って何かをやれば、何か得られるし少しは前に進める。頑張ることには意味がある。 若い頃、大人が放つそんな言葉は、中身も真実味もない、ただの使い古された定型説教文句にしか聞こえなかった。 恐らく今の若者たちだって、劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』(櫻木優平監督、2024年。以下、本作)の主人公・悦ネエほどわかりやすく表出しないまでも、そんな鬱屈した諦めの気持ちを持っているのではないか。 本作の原作である敷村良子による同名小説(幻冬舎文庫。単行本はマガジンハウ

          オールメン、ついてこい!~劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』~

          "手"が伝える"記憶"~映画『Underground』(TIFF2024 Nippon Cinema Now)~

          その映画『Underground』(小田香監督、2025年公開予定。以下、本作)が完成し、2024年の東京国際映画祭(TIFF)で上映された。 本作はドキュメンタリーともフィクションとも割り切れない不思議な映画だ。 『Underground』というタイトルが示すとおり、本作は天然の洞窟から人工的に造られた雨水路や鉄道など「地下」の映像で構成されている。 しかし、ただ地下空間を撮っているわけではなく、そこに何らかの映像を投影させてみたり、影を映し出したりといった「作為」が施さ

          "手"が伝える"記憶"~映画『Underground』(TIFF2024 Nippon Cinema Now)~

          "普通"に生きたいだけなのに~映画『港に灯がともる』(TIFF2024 Nippon Cinema Now)~

          映画『港に灯がともる』(安達もじり監督、2025年。以下、本作)が公開される2025年1月17日は、阪神・淡路大震災からちょうど30年の日にあたる。 灯(富田望生)が成人式-つまり震災から20年-に出席するところから始まる物語は、だから、そこから彼女が生きてきた10年を辿ることになる。 脚本を担当した川島天見は、上映後のティーチインで『"わかり合えなさ"を描いた』と語った。 その"わかり合えなさ"は、「"普通"に生きたいだけなのに、それすらできない」という灯の"しんどさ"

          "普通"に生きたいだけなのに~映画『港に灯がともる』(TIFF2024 Nippon Cinema Now)~