昭和50年代前半、ある映画狂の日常~田中小実昌アンソロジー『ひるは映画館、よるは酒』~
『ひるは映画館、よるは酒』(ちくま文庫、2023年。以下、本書)
何とも羨ましいタイトルの本を見つけ、思わず手に取った。
本書は直木賞作家の故・田中小実昌氏の著書を再編した、ちくま文庫オリジナルアンソロジーシリーズの一冊。
主に昭和50年代初め(1970年代半ば)に週刊誌等に掲載された氏の映画館巡りの日々を綴ったエッセイをまとめたものだが、巻頭には昭和30年代、巻末には昭和末期の同様エッセイが何篇かずつ収録されており、戦後日本の映画文化の移り変わりも感じられるという、映画フ