シニアになって働く意味を考える㉔ ~2度のパワハラに潰されず乗り切ったコツは?~
新卒入社2年目でパワハラにあう
Iさん(55歳2024年2月時点)は、理系新卒として半導体設計開発職で社会人をスタートさせ、入社2年目で上司からのパワハラにあう。1993年頃の事なので「パワハラ」という言葉はまだありませんでした。(“パワーハラスメント”は2001年に登場した和製英語とネットに記述有り)。
その後も理系職と縁遠い企画職へ異動し2度目のパワハラにあいついに転職。しかし、コロナ禍で思うように仕事ができなくなる。聞いていてハラハラさせられる。パワハラを冷静に受け止め乗り切ったIさんの労働観をうかがいました。
いつもの仕事人生満足度曲線を描いてもらいました
一度目のパワハラ①は入社2年目の時。品質不具合の処理を任せられ、当時の上司は彼のやり方にダメ出し、叱責するのみ指導法で、なんと終息まで1年半もかかり相当きつかったそうです。
その後、担当製品が変わったことで上司が変わりパワハラ①から生還。この新しい環境で仲間と上司に恵まれ、チームワークでタスクを解決するというIさんの仕事スタイルが確立したと言います。海外出張も任されるようになり仕事人生満足度も上昇。
しかし良い時は長く続かず、転居を伴う人事異動で未経験の企画職に就き、要領が分からず点数急下降。ここでIさん得意のチームワーク業務で仕事満足度も回復していく。
思い通りにならないと怒鳴り散らす上司がやってきてパワハラ②にあう
業務量が増え残業や休日出勤もこなしアップアップな状況で、2度目のパワハラ②にあうことになる。気に入らないと怒鳴り散らして威圧するという典型的昭和スタイルの上司(ステレオタイプ?) の部下になる。職場の雰囲気も最悪だったため、ついに転職を決行することになる。
転職後の新天地で自分の仕事スタイルを取り戻すもコロナ禍に
転職先の会社では(Iさん得意の)チーム戦で戦う仕事ができ、部門の責任者も任され充実していた。が、コロナ禍がやってくる。チームメンバー同士の密なコミュニケーションができなくなり、仕事も個人戦の様相を呈してくる。自分の得意な仕事スタイルに疑問が浮かぶようになる。
コロナ禍終息のタイミングで、Iさんの会社は役職定年を廃止し、それに代わる新しい制度(シニア社員のジョブ型雇用)がスタート。現在Iさんは、その制度のもと東アジア海外担当のグループリーダーに任命され4-5名のチームを率いる。会社から与えられた目標は厳しいが、自分の仕事のやり方を認めてくれていたことがうれしく、期待に応えられるようやる気に満ちているとのことです。(いい会社ですね)
2度のパワハラ①②に潰されず乗り切ったコツは?「主張とやり方の分離」
お待たせしました。このNote投稿の本番「パワハラの乗り切り方」です。Iさんの方法をご紹介します。
「仕事のやり方(進め方)と主張の中身を分離する」とのことです。パワハラ上司も業務目標達成や課題解決の遂行をやっているわけで、彼らの主張自体は間違っていないことが多いと気が付きました。部下を威圧する、黙らせる、意見を聞かない、失敗を責める、仕事量やスピードも当然のように求めてくる、などのやり方が間違っているだけ。この2つを分離してパワハラ上司と対峙してきたと。
そう考えて行動していると、潰されるほどのエスカレーションは避けられたし(その代わり他の同僚が潰れていった、、、)、周りの同僚から助けられたり、上位上司の配慮で職場環境が好転(パワハラ上司や自分の人事異動)することもあった、と。
なんと冷静な対処なこと!スゴイ!
「オレ、何で働いてるの?の図」
著者の勝手な指標で作った「オレ、何で働いてるの?の図」を作ってもらいました。Iさんのは、こんな感じです。
Iさんのこの労働観は、インタビューの内容通り、「他者との絆、自己実現、自立」を重視。コミュニケーションを大切にして、各チームメンバーを尊重し仕事を任せて育てることで自己実現していく。経済的な「お金」のことは、55歳だと誰もが考えざるを得ないことでしょう。
「働くモチベーションの6つのカテゴリー地図」
「学習のモチベーション」を描いたマップ(参考文献は下図に記載)を参考に、「働くモチベーションの6つのカテゴリー地図」というのを作ってみました。Iさんがどこに位置するのか図示してもらう。
Iさんの働くモチベーションは「仕事自体が楽しい」、ついでにおカネが儲かればなお良い、です。このパターンがやっぱり多いですね。
また、勤め先の会社が、自分の得意な仕事スタイルを見てくれていて、任せてやらせてくれることが何より大きなモチベーションになっているそうです。
後記:
60歳、65歳以降についての働き方についても聞いてみましたが、まだそこまでイメージが湧かないとのことでした。今の勤め先からIさんの将来性に期待をかけられているみたいなので仕方ないですかね。
仕事以外では、夏の渓流釣り、冬はウィンタースポーツの趣味を持ち、これからもっと充実もさせたいともおしゃってました。
Iさんの「チーム戦」とは、これまで受けたパワハラが反面教師になっていて、「チームメンバーみんなで目標を決め、各自が自発的に仕事を遂行する」「自らやっている姿を部下に見せ、やらせて自信をつけさせる」を理想としているとのことです。日本企業風土にはあっていますね。一方で、コロナ禍後、個々のプレーヤーを重視する働き方もあり、こちらが多くなっていくような気もします。
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