お風呂からの卒業に向けてきみへ贈るメッセージ
テレビもなけりゃ、スマホもない。
裸でぶつかり合う時間無制限一本勝負。
嫌がられながらも洗い上げ、目の周りが真っ赤になるくらい水遊び、追いかけながら拭きあげて、服を着せたら同じ場所から頭と手が出てるじゃねえか!ちっくしょう!
我が家でよくあるお風呂時間の一コマ。
5人いる子どものうち、上3人はずいぶん前に卒業したが、まだ8歳の三女、2歳の次男とは一緒にお風呂に入っている。
上3人(女、女、男)がまだ小学生や保育園だった頃、築古の公営住宅に住んでいた。それはもう大きめのタライぐらいのサイズのお風呂だった。4人で一度に湯船に浸かろうとすると芋洗い状態。誰か一人はいつも立って湯船に浸かっていた。
こんなリラックスとは程遠い環境であったが、風呂の中はいつも賑やか。
しりとり、マジカルバナナ、ジェスチャーゲーム、10回言ってゲームなど、のぼせた人が負け、勝敗は曖昧になる言葉遊び。
高音がどこまでも出るような気がして異様な声量のお風呂カラオケ。ご近所にもたくさん迷惑をかけただろう。
「シャンプーでほんまシャボン玉作らんといて!お願い」何度言っても子どもたちの好奇心は止められない。シャボン玉対決。
少しでもお風呂時間を楽しむため、色々なバスグッズにお世話になった。今も貼ってあるけど、常にあるのはポスター系。
完全に私の趣味で貼ったお魚ポスター。「私はメガネモチノウオが好き……」とか子どもたちも自然と魚の名前を覚えていった。
足し算や九九なんかもあわせると、何枚張り替えただろうか。おかげでみんな計算は得意。
オモチャ系も多種多様。水鉄砲、釣りゲーム、バスケットボールとかいろいろあったなぁ。でもこういう昔ながらの単純なおもちゃが一番長持ちしたりするんだな。最近まで家にあった。
私も何周、観覧車を回したことだろうか。きっと心のモヤモヤも水に流す効果があるのだろう。
そして気がつけば、子どもたちは一人、また一人とお風呂から卒業していった。そしてまた卒業の時が近づいてきた。一人でお風呂に入ることが多くなった三女。
私と一緒に入るときはシャンプーをして欲しい時だけではないだろうか。これは私が身につけたシャンプー技術に他ならない。
これには次女から続くストーリーがある。
今でこそ髪の毛サラサラ、美活を愛する15歳JKの次女。小さい頃はシャンプーが本当に苦手だった。
髪が長く、自分でちゃんと洗えないから奥さんが洗う
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ワシワシと洗う奥さんから逃げる。指に髪がひっかかって痛いの悪循環。
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それを避けて自分で洗う。しかし、ちゃんと洗えないから顔が似ていることもあり「頭がカワウソみたいな臭いがする」と家族から言われる始末。
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可愛い娘の頭皮がこの先、魚っぽい臭いがしていたら可哀想。
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そこでワイ。シャンプーの手ほどきを当時の美容師さんにうける。
イケオジ美容師が教えてくれたポイント3つ
•シャンプー前に髪を流し、汚れを落として泡立ちやすいように
•洗う時は指の腹しか使わない
•痒くなりやすい箇所を念入りに
要は髪を洗うという感覚ではなくマッサージするような感覚でスッキリ、サッパリしてもらうことに注力するらしい。
実際に私の頭を使ってこんな感じと丁寧に教えてくれた。
痒みポイント①サイド生え際
サイドから後方の髪の生え際。同じ箇所を4本指の腹でゴシ×10回。この痒みゾーン一体で50ゴシくらいだろうか。
痒みポイント②頭頂部付近
そして頭頂部付近。ここも痒みポイント。頭頂部左右をそれぞれ念入りに20ゴシくらい。それ以外の箇所は5ゴシほど。その時のフィーリングにあわせて。
最後は顔を上げ、お湯がかからないようにサロンスタイルでしっかりゆすぐ。この技術のおかげで娘とのお風呂時間は確実に伸びた。
「頭臭いからそろそろパパにシャンプーやってもらいな」
奥さんからも私のシャンプーはお墨付きをもらっている。
これからリラックスしてバスタイムが楽しめるはずなのに、子どもたちとワイワイ言いながらお風呂に入る機会がなくなると思うと少し寂しい。
正確に言うと、息子とはまだ一緒に入れるので、娘がここからますます私の手を離れていくことが寂しいのだろう。
「いつ一人で入ってくれるようになっても構わないけど、最後だけは教えてよね」
「まだまだ入るよぉ」
なんて目線も一切あわさず言ってるけど…
「今日でパパとのお風呂卒業式します。今までシャンプーありがとう」
なんて実際に言われちゃうと頭から浴びるシャワーが止められなくなっちゃうね。
子どもと一緒に風呂に入って、背中を流してもらうという親としてのお風呂の夢はもうすでに叶ったし、もう何も思い残すことはない。
” 今日が最後かもしれない ”ということを頭の片隅にいれながら気持ちをこめてシャンプーに励みます。
いつ来るか分からないし、実はもう終わっている可能性もあるから先に言っておこう。
卒業おめでとう。そして楽しいひとときをありがとう。これからはカワイイ弟の頭に専念するよ。
きみの頭がカワウソみたいな匂いがする事があったらいつでもゴシゴシするから呼んでくれよな。