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「難民」が「自分ごと」になる映画『ミッドナイト・トラベラー』

☆今回の主題は「難民問題」ですが、先住民族の問題についても触れています。

アフガニスタンからの果てしない道のり

オンライン試写会で、9月11日から公開予定の『ミッドナイト・トラベラー』という映画を観た。これは、アフガニスタンを追われることになり、ヨーロッパまで難民申請に行く映画監督とその家族(妻、娘2人)の果てしない道のりのドキュメンタリー映画だ。


撮影はスマホのみ。だが、それゆえに、とてもリアルに、難民申請の過程や国境をこえる際の大変さが伝わってくる映画だった。映画を観ている間ずっと、私は家族の一員になったような想いを抱いた。

そこにあるのは、データからは見えない日常

家族の日常はつらいことばかりではない。マイケルジャクソンの歌を動画で見ながら踊る娘、喜怒哀楽がハッキリしていて、笑うとすごくチャーミングな妻、雪が降った次の日に難民キャンプの家の前で楽しそうに遊ぶ家族の様子なども出てくる。だから、決して暗い空気感の映画ではない(と私は感じた)。

でも、当たり前だけど、難民の日々は、想像を超えるほど大変だ。いつ難民申請を受け入れてもらえるかわからず、待ち続ける。住まいも転々とする。時には硬い床の空きビルで寝ることもある。

監督からのメッセージ

監督からは、こんなメッセージが日本の観客向けに寄せられた。

「私たちも母国を出たいわけでも、捨てたいわけでもない。私たち、難民は
いつも厄介者のような目でみられてしまう。しかし、私たちも人間です。
悲しみも、喜びも、希望もある。
私たちは食事のため、水のために、難民になっているわけではない。
望んで今の状態にあるわけではなく、私たちは仕方がなく、
難民になってしまった。
本来は私たちも、アナタたちと同じような普通の人間なんです。
難民もひとりの人間。私たちの痛みも苦しみも理解をしてほしい。」
映画『ミッドナイト・トラベラー』
ハッサン・ファジリ監督

「自分ごと」への大きな一歩になるはず

先住民族に関する問題を見聞きするたびに感じるのだが、「無関心」「知ろうとしない」という態度、その問題を「自分ごと」としてとらえないことが、問題をますます難しくしている側面もあるのではないか…と思う。

難民の問題も、同じような「自分ごと化」の問題があるのではないだろうか。この映画は、それを乗り越え「自分ごと化」する、大きな力となってくれる、と私は感じた。

1人でも多くの人に、この映画を観てもらい、「難民」の靴を履き、自分ごと化してほしい。心の底から願っている。

#映画感想文

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