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【助成先紹介】3年間の集大成 生徒主導のリアルなビジネス実践

インクラインファンド事務局の下尾です。引き続き23年度の助成先を紹介させていただきます。※今年度の募集は終了しました。

今回は、実験/こだわり探究部門にご応募いただき、見事採択となった京都すばる高校 起業創造科 Fゼミ、ゼミ長小西さんをはじめとするメンバーにお話をお聞きしました。(以下、お名前は敬称略でおおくりします)

Q.皆さんは現在3年生で起業創造科に所属されているということですが、普段どんなことを学ばれているんですか。

小西:1年時から簿記や会計はもちろん、地域の貢献や発展を目指し、様々な勉強をしてきました。今回は課題研究の授業の一環で、ゼミのメンバーで応募しました。これまでチームビルディングや、地域に対してどういったことができるのか、どのような価値を創造できるかということを学んできました。3年間の集大成として、それらが今回のイベント実施に繋がっています。

会場であるまちの駅 クロスピアくみやま

Q.どのようなイベントを実施されたんですか。

小西:主に3つのことを掲げ、まちの駅クロスピアくみやまにて1dayイベントを開催しました。

①イベントを1から企画し、ビジネスの仕組みを学ぶこと
②自ら出資して収益を得るビジネスチャレンジを行うこと
③子どもに久御山に興味を持っていただくきっかけづくりをすること

コンテンツとしては、地域の企業さんとコラボしたオリジナル久御山産品の販売、親子向けワークショップ、キッチンカーの出店、その他企業さんの出店や地域の団体によるステージ、スタンプラリーの実施を行いました。

1から自分たちでアイデア出しを行い、企業さんと連携して進めました。私たちは主に、オリジナル久御山産品や野菜の販売、親子向けワークショップを担当しました。

Q.インクラインファンドの助成金はどのように活用されましたか。

小西:イベントで販売する野菜の仕入れ費用に使用しました。2万5000円程の見積もりだったのですが、後払いの相談をしたところ難しいということでしたので、インクラインファンドを活用させていただきました。

Q.イベントの様子はいかがでしたか。

小西:雨天のため一部プログラムの変更をしましたが、目標としていた来場者数1000人の達成、オリジナル久御山産品もすべて完売しました。物販に関しては午前10時の開始早々から好調な売れ行きで、2種のおにぎり計200個、コロッケパン30個、ようかん50
セットが午後4時のイベント終了までに完売しました。

久御山の焼肉店とのコラボ商品、コロッケパンとおにぎり

Q.来場者の様子はいかがでしたか。

小西:例えばオリジナル久御山産品の1つ、おにぎりを購入される際、兄弟姉妹や親子で「どっちの種類が食べたい?」といった会話が生まれていたため、家族間での交流を増やすきっかけになったのではないかと嬉しく感じました。

辻井:親子向けワークショップのゴーカートとスライム作りを担当しました。実は私は子どもと接するのが得意ではなかったのですが、ワークショップで小さなところまでこだわって作ってくれている様子を見て、とても嬉しかったです。保護者さんが「もう行こうか」と声掛けしても熱心に作り続けていて、楽しんでもらえたのではないかと感じました。

親子向けワークショップの様子

メンバー同士の工夫と紆余曲折
Q.ゼミのメンバー13人で進められたということですが、なにか工夫されたことはありますか。

小西:パン、和菓子、野菜、ワークショップと担当ごとに班分けを行い、進めました。

Q.イベント直前まで打ち合わせや最終調整に取り掛かっていた印象があります。進める中で大変だったことはありますか。

川島:和菓子班の私たちは実際、班を結成するまでにも色々と問題がありました。当初、久御山に拠点のある大企業さんと交渉していたのですが、その話はうまくまとまりませんでした。そこで、もう1つの案として出していた和菓子に転換しました。その際は早めに切り替えが出来たので、よかったところだと思っています。一方で、和菓子の商品開発では、当初希望していたものが物価高のため予算内で進めるには難しくなりました。相談を重ね、最終的にはみかんと桃のようかんの開発に落ち着きました。

Q.一度計画したものを途中で変更するとなると、様々な壁があったのではと想像しますが、そのあたりはいかがでしたか。

川島:今回、様々な大人がイベントに関わってくださったのですが、そのなかで、「常に代替の案を決めておく」という教えをいただきました。そのことを念頭に置き、進めていたことで方向転換が必要になった際も、すぐに舵取りできたのではないかと思っています。

和菓子班の桃ようかん、みかんようかん

Q.今回久御山が舞台ということでしたが、久御山についてイベント前とイベント後の印象変化はありましたか。

上田:イベントのチラシを家族に見せた時、今回「和牛しぐれ煮おにぎり」でコラボさせていただいた焼肉のお店を母も聞いたことがあったようで、テイクアウトで買ってきてくれました。実際に食べてみたのですが、とても美味しかったです。事前にそのお店の美味しい焼肉を食べていたからこそ、イベント当日お客さんや来てくれた友人に、「めっちゃ美味しいからまず1回食べてみて」とコラボのおにぎりを心からおすすめすることができました。最初はそのお店自体も知らなかったのですが、今回のイベントを通して知ることが出来ました。

小西:そもそも、Fゼミ13人のメンバーのうち、久御山町出身の生徒は1名しかいませんでした。そんな13人で進めていたため、当初は久御山に対して知っていることが少なく、実際に地域にどんな企業さんがあるのかが分からず、コラボ先すら決めることができませんでした。自分たちで調べたり、久御山に住むメンバーに頼り、知る中でアイデアが着実に生まれていったと思います。地域を盛り上げるためには、まず自分たち自身がその地域を知ることが必要だと感じました。何事にもまず情報収集をして取り組んでいくことで、よりよい選択をしていくことができるのではないかと感じる経験でした。

イラストも素敵な和牛しぐれ煮おにぎり

イベントを通した気づき
Q.販売学習の機会は、皆さんの普段の授業の中でどの程度ありますか。

小西:コロナ禍においてこの2年間(2021年・22年)は、「すばるデパート」という毎年恒例の販売学習自体、オンラインでの実施でした。今年やっと、オンラインと対面のハイブリッドでの再開という形をとることができたのですが、やはりまだ招待制であったり、本来の形には戻っていません。これまでお客さんとの直接の関わりがほぼない中で、今回のクロスピアくみやまでのイベントでは、1000人以上の方にお越しいただきました。商品について説明する経験は私たちにとっては初めての経験で、直接お客さんの笑顔を見ることが出来、とてもいい機会でした。

Q.「すばるデパート」についてもう少し詳しく教えてください。

小西:すばるデパートは、学校内で運営している百貨店のようなプロジェクトです。ビジネス社会と連携した実際的・体験的学習の場であり、これまでの学びの成果を外部へ紹介する機会でもあります。具体的には、私たち生徒が地元の企業さんと連携して商品の仕入れから企画、販売までを行う実践学習です。2023年度はコロナを経て4年ぶりの対面販売を行うことが出来ました。

すばるデパートのチラシ

Q.すばるデパートと比較して、今回の皆さんのイベントはいかがでしたか。

井筒:すばるデパートはクラス全体、ある程度の人数でおこなうため、私自身お客さんと積極的に話したりすることはあまりありませんでした。今回はゼミでのイベント実施ということで、少人数でブースを分けて取り組んだため、すばるデパートのときよりも自分ごととして進めることが出来たと思います。自分からどうすれば商品を良いと思ってもらえるか、おすすめの仕方等を積極的に考えることができ、いい体験になりました。

また、私は準備期間に体調を崩してしまったこともあり、当日頑張るぞと意気込んでいましたが、実際お客さんを前にすると瞬時に合計額を計算するのが思ったよりも難しかったです。暗算がとても得意な子が同じ班にいるのですが、その子に任せきりにも出来ませんし、その子がいないときや忙しい時には自分でやる必要がありました。構想段階や準備中は、その子がいればきっと大丈夫と思っていましたが、実際はそうはいかなかったです。自分で計算してお客さんにお釣りを渡したり、合計額をお伝えしたり、テキパキいかずお待たせしてしまうこともありました。それを受けて、実際に接客業をしている人、お店でレジしている人はすごいなと思いました。実際私たちが普段学校で座って、勉強してることよりも、実践は難しいことだと身をもって感じました。

Q.これまでビジネスについて授業で学ばれてきた皆さんですが、今回の実践の場を通してどうでしたか。

川島:すばるデパートでも、どれぐらい売れるかといった簡単な予想を立てたりはしたのですが、それはあまり根拠がないようなものでした。一方で、今回のこのイベントは、きちんと理屈を立て、どれぐらい売れるかを考えて、実際それを実行に移すというところからだったので、まずそこが決定的に違うと思います。結果を見ても予想とは違ったので、ビジネスは思い通りにいかないということも分かりました。実際当日、おにぎり等のコラボ商品は想定よりもずっと早く売れました。一方で野菜はなかなか思うように売れなかったので、予想通りにいかないことが身にしみて分かりました。

Q.野菜の販売についてもう少し詳しく教えてください。

小西:収支に関わる話なのですが、特に野菜の仕入数が当日まで分からず、値段で仕入れ量を決めていたため、結果的に過剰に仕入れることになってしまいました。また、当日雨天で、野菜を持ち帰る際に手がふさがるため、購入に至る人があまり見られませんでした。そのようなこともあり、途中から割引し原価売りしたことから、当初想定よりも売上が減少することになりました。仕入数を抑える、あるいは人気であったしいたけのつかみ取りの一本化にすることで原価売りにせずとも売り切れたのではと考えています。また、詰め放題にするなど販売方法をもう少し工夫する手もあったかもしれません。

インクラインファンドから助成をいただいた後も、赤字が出た場合には自分たちでお金を出し合ってやるしかないというところに、少しシビアな部分があったとは思うのですが、そこはメンバー皆がきちんと覚悟を持って販売してくれたと思います。だからこそ、お昼頃でおにぎりが売り切れ、野菜も原価は割ることなく、原価販売で損だけは出ないような形に落ち着かせることが出来ました。損失は絶対に出さないようにという思いがあったからこそ結果的に一定の利益を出すことが出来たと思っています。

野菜販売の様子

Q.先生にもお聞きできればと思うのですが、今回の助成金の活用について期待されていたことがあれば教えてください。

先生:すばるデパートと今回のイベントの決定的な違いは、生徒が言ってくれた通りだと思います。結果的には、生徒たちから持ち出しでということはなかったですが、自分たちで出資して経営するというところに限りなく近い形で、リアリティを持ってビジネスの勉強をするいい機会になったのではないかと思います。そこに生徒自身どういった心境の変化が生まれるか、それを自覚できるかというところをテーマにしたいと思っていたので、一定覚悟を持って取り組んでくれた様子がよく分かりました。

また、今回実施に至るまでの流れとしては、今まで座学であったり、シミュレーションでやってきていたところをいかに現実社会へ橋渡しするか、リアリティを持ってやるかというような狙いがありました。私から生徒たちに今回のイベント案を提案したとき、とても良い反応をしてくれました。モチベーションがあってそれが学びに繋がっていくのだと、そのバランスが非常に大切だと改めて感じました。そういった意味で、彼らは良いモチベーションをもって取り組んでくれましたし、だからこそ彼らにとって良い経験になったのだろうと思っています。

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座学と実践の違いだけでなく、毎年恒例の学校をあげた販売学習との差異も含めて学びとしてくださったFゼミの皆さん。班分けをして役割分担をしたり、様々な想定をして予想外の事態にも備え、想定通りにいかない場合も素早く切り替えて取り組まれてきたことがよく伝わってきました。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。

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