【夢の守り人】 書評#84
みなさん、いつもお世話になっております!
本日は、私の投稿の軸とする一つ「本」「読書」に関して書かせていただきます。
自己紹介に書いたマイルールを守りながら、私の大好きな本について書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
今回は、ジャンル的には児童文学です!
小説であり物語としての児童文学。マジ最強な本の第3弾です!
ヘッダーは、HUTAYAKUさんの作品を使わせていただきました!
本書のテーマは「夢」。
それ以外にもキーワードがあると考えているのですが、それも含めて守り人シリーズを3冊読んできて私の中に描かれる世界観に近いイメージなので使わせていただきました!
ありがとうございます!!
目次
基本情報
上橋菜穂子(著)
新潮社 出版
2009年1月1日 第1刷発行
全348ページ
読書所要期間9日
私が本書に出会うきっかけ
#76で本作品のシリーズ第1弾である「精霊の守り人」、そして#78で第2弾の「闇の守り人」について書いてきた。
先の二冊を貸してくださった先輩が、シリーズの残りをごっそり袋に入れて持ってきてくれたw w
この本の本質
おそらく前作から1つ歳をとった31歳頃の主人公バルサ。
実は女性なのだが、性別など全くの問題にならないほど、とてつもなく強い。
本作でも、全く腕は落ちていないようだ!
そんなバルサの幼馴染であり、ちょっと何とも煮え切らない間柄のタンダ。
少なくとも、バルサにとってなくてはならない存在だろう。
そのタンダは、トロガイというベテランに師事する呪術師。
眠りから覚めない姪っ子を救うため、呪術を使って夢の世界へ自ら飛び込んでいく。
そちらの世界は、人の心を惑わす。
なかなか現実世界に戻ってくることができず、ついには現実世界にある身体が乗っ取られてしまう。
鬼獣と化してしまったタンダ。
ミイラ取りがミイラになるといった状況。
今度はタンダを救うため、トロガイやチャグム、そしてバルサが知恵と呪術と剣術などあらゆる力を尽くしてタンダを取り返すために命や立場を賭ける。
前作までは、国をまたにかけて、広範囲で活躍する姿が描かれるが、今回はそういった物理的な往来というよりは、夢と現実といったいわば時空の往来といった感じか。
私が感じたこと
1点目 〜キーワード
まず1点目としては、本書のタイトルともなる「夢」が挙げられるだろう。
そしてその夢は、通常私たちが使うふたつの意味合いが本作でも用いられていると感じる。
一つは、例えば一攫千金で大金持ちになると言ったような、起きて欲しいと希望するもの。
もう一つは、寝ている時に見るもの。
前者の夢を持って後者の夢の中へ行くと、居心地が良くなって、誘惑されて、戻ってくることができなくなる。
一時的な現実逃避のつもりが、結局、戻って来ることができなくなる・・・
戻ってくるためには、いかに芯を強く持つか。
これが強く求められていた。
もう一つのキーワードは「花」である。
これについては、2点目で。
2点目 〜「五十二年かけて育ててきた顔さ」
夢の世界・空間へ行って見た目が若い頃に戻ったり、長寿を授けられて見た目も若くなってしまうなど、不思議な力により翻弄される人々が描かれている。
この小見出しにした言葉は、トロガイが夢の世界へ取り込まれながらも、何とか戻ってきたときに言ったものだ。
ともすれば、このまま昔のように若くて力のみなぎる様な感覚を味わい続けたいと思うだろう。
しかし、52年間生きてきたという体験と、そこから生まれる自分に対する自信が夢から目覚めさせ、現実へと引き戻したのだろう。
昔があるから、今がある。
特にトロガイは若い頃、誰も知らなかった辛く悲しい経験がある。
それでも前を向いて進み続けてきた。
そのときそのときの自分をしっかりと受け入れてこそ、その人の確固たる芯が徐々にできあがていく、見出していくのだろう。
芯とは、自分自身に偽りのない心が身について初めてできあがっていくものとも言えるし、その人自身、つまり、自分の中にある本当の自分、大切にするべき自分ということも言えるだろうか。
自分自身を大切に、そして信じることができるからこそ、他人から与えられる夢から自分の力で抜け出すことがきる。
そう考えると、現実世界と全く同じかもしれない。
例えば前述のように大金持ちになって周りからチヤホヤされたい、思うがままにあらゆるものを手に入れて他者を圧倒したいとした場合、それは周囲から与えられる夢と考えることもできる。
本来夢とは、周りから見てどうこうではなく、自分自身が信じるものを自分の力で引き寄せていくことなのかもしれない。
このように、自分自身を見出したとき、自分自身の中に素敵な「花」が咲くということなのだろうか。
むすびに
現実世界と夢の世界。
現実は今を生きる現実社会で昼の世界、夢は眠りの中にある夜の世界。
一方で、現実には目指したい夢のあるところであり、夢の中は現実から逃れることができる優しくて誘惑のある世界。
そう考えれば、現実と夢は表裏一体の関係。
ともすれば、どっちが裏でどっちが表と言い切れない、同じ時の中にも同時に存在しうる、そんなものだと言えるのかもしれない。
トロガイは言う。
「人はね、生きるのに理由を必要とする、ふしぎな生き物なんだよ。」
現実と夢との往来は、理由を探す旅なのだろうか。
以上です。
毎度書きますが、これは本当に児童書か!?
本作は、これまでにも増してとてつもなく考えさせられました。
何が現実で、何が夢か・・・
私が生きる理由は、いったい何か・・・
ぜひみなさんも、本書を通して考えてみていただきたいと思いました!
本書では、チャグムの成長がとてもみられました!
チャグム推しの私としては、とても嬉しい内容でしたが、それに勝るとも劣らず、トロガイ師の奥深さが心にしみました!!
思わず二つもセリフを引用してしまいました。
マイルール違反です汗
しかし、名言はまだまだ詰まっていますので、ぜひご覧ください!!
あっ、そうそう。
前作もそうなのですが、今回は特に前二作を見なくても十分背景が理解で切るように工夫されています。
本作一作の読み切りとしても十分お楽しみいただけますよ〜♪
ありがとうございました!!