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マインドフルネス-1|することモード

1. マインドフルネスに見られる様々なモード

マインドフルネス(mindfulness)に興味をもって勉強を始めようとすると、最初の壁が立ちはだかります。それは、マインドフルネスの「定義」です。様々な定義があるのですが、中でも難しさを感じるのは「今ここ」や「評価しない」などの言い回しだと思います。心理学の知識は正しく学んだ方が役に立ちますので、定義を理解することは避けては通れないのですが、別のアプローチからマインドフルネスを理解する方法もあります。それは、マインドフルな状態やマインドフルでない状態について説明してくれている「モード」から理解することです。noteで説明をしたい「モード」や関連したマインドフル(レス)な状態については、以下のものを取り上げたいと思っています。

・することモード|あることモード
・評論家の私モード|観察者としての私モード
・自動操縦状態
・対象モード|メタ認知モード

マインドフルネスに関連する様々な治療法に見られるモードの内容を理解しておくと、マインドフルネスを理解するうえで重要な「心の使い方」について分かるようになります。その時にもう一度、「マインドフルネスの定義」を見てみると、実はシンプルな内容だったんだなと感動するかもしれません。今回の記事では、おそらく一番有名なモードとして知られている「することモード(doing mode)」について、ご紹介したいと思います。

2. することモード

私が最初に「することモード」と見聞きした時は「意訳が相当されているのかな?」と思いました(←心理学の訳って難しい言い回しや漢字羅列系が多いイメージがあるので)。しかし、原語は doing mode ですので、実はそのままの訳なのです。することモードは、マインドレス・・(マインドフルではない状態)の代表的なモードの1つです。このように紹介してしまうと、あまり良くないモードなのかなと思うかもしれません。しかし、することモードは目的達成のために行動を駆り立てられている状態ですので、目的達成に役立つこともあります(日常生活はほとんどすることモードで活動していると言っても過言ではないかもしれません)。しかし、することモードで生活を続けるとで心が疲れてしまうことがあるので要注意です。下のイラストは、することモードについてまとめたものです。1つ1つ解説とともに見ていきましょう。

すること2

判 断|「これは良い・悪い」とか「こうすべき・すべきでない」などの判断をしながら生活していると、心が落ち着かない状態になることがあります。そして、自分自身が判断の対象になった時、とても辛い状態になってしまうかもしれません。

憶 測|「ひょっとしたら・・」とか「こういうことを意味しているのかな・・」などと、仮説をもとにあれこれ考えていると、不安感が込み上げてくる状態になってしまいます。その不安感を取り除くために、憶測をさらにして準備しようとするかもしれません。

想 起|「確かあれは・・」などと過去のことを繰り返し考えて、原因などを理解しようとすると、後悔の気持ちが出てきたりします。そして、ますます原因を明らかにしたいという想いから、積極的に想起をしてしまうかもしれません。

自己批判|自分批判をすることで自分自身を鍛え上げようとしたり、自分の欠点を克服しようとすると、自分に自信がもてなくなってしまうこともあります。また、自分の長所も欠点として捉えてしまうこともあります。特に、何かに失敗したりした時の自己批判は必要以上に自分を追い詰めがちです。

感情への関与|どんな感情を感じてもかまいませんが、その感情に巻き込まれるような関わり方をしてしまうと、自分が想像もしていなかった行動をしてしまったり、ネガティブな考えから離れられなかったりしてしまうことがあります。

反 応|慣れている物事には何も考えずにいつも・・・の反応をしてしまいがちです。また、感情的になっている時は予想外の反応をしてしまうことがあります。いずれにしても、「反応」は本来の自分が意図していたものとは違うものがふくまれていることがあります。実は、反応に先立つきっかけは、その時々の状況で異なります。1つ1つ丁寧に「対応」できるといいかもしれません。

問題解決と決心|問題解決や決心に固執こしつしてしまうと苦しい状態になってしまいます。私たちが生活している世界は、自分が思うように解決できる環境ではなくなったり、そのタイミングではなかったりすることも多くあるように思います。頑なに問題解決をしようとしたりすることで、「判断」「憶測」「想起」「自己批判」「感情への関与」「反応」で悩むことも多くなるかもしれません。その時は「問題解決と決心」を柔軟に見直す時かもしれません。

3. することモードの自分に気づく

することモードは日常生活を送るうえでは必要なモードかもしれません。ただ、することモードが過剰だったり固執こしつ的だとだと心身に影響がでてきまし、心が苦しい状態で生活を送ることになってしまうかもしれません。それでも、自分を甘やかさないで突き進むという考えになってしまっていたら要注意です。することモードをしているときの心理状況は人によって様々かもしれませんが、大きく分けると2つあると考えられます。

自分の不安を解消するための「することモード」
私たちのある行動が強くなる背景には、不安などを解消するために行われるものがあります。たとえば、「あさってのテストが不安だから勉強する」という感じです。勉強をすればするほど、「悪い点数をとるかもしれない」という不安が少し解消されます。この場合、不安を抱えながら勉強もするわけですから、非常に心が疲れてしまいます。
自分の喜びを増やすための「することモード」
自分の喜びを増やすために何かをすることは一見すると悪いことではありません(むしろ良いことです)。しかし、その喜びのために「することモード」を酷使しすぎると心が苦しくなっても「すること」を続けてしまいます。たとえば、「家族のために(=自分の喜び)、どんなに体が辛くても働き続ける」という場合を考えてみてください。この場合は、自分にも休息を与えるような「自分への優しさ」が大切ですし、家族や自分にとっても喜びとなると考えられます。

することモードを極端な形で使っている場合は、自分がどんなに苦しんでいても気づくことが難しい状態かもしれません。また、気づいていても、することモードを継続してしまうかもしれません。そんな時は「自分への優しさ(セルフ・コンパッション)」を気にかけてみましょう。そして、「あることモード」に変換して過ごしてみると良いかもしれません。


心理学の知識を楽しくご紹介できるように、コツコツと記事を積み上げられるように継続的にしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。