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#20 「噛む力」は脳を覚醒させる!シニア世代にこそ重要な”おとな歯磨き”

本日6月4日は、「虫歯予防デー」。そんなこたぁ社会人になってから、トンと忘れておったがw 認知症の母とMCIの父の介護をするようになってから、「口腔ケア」の重要性を再認識している。

「おとなの歯磨き」の著者で、noteでもご活躍されている訪問歯科医師の伊東材祐(いとう さいゆう)先生の記事に大変、興味深い記事がある。

私の父は、長年、歯周病を患っており、若い頃から「歯茎が痛い・・・。」と言っては歯医者さんへ通っていた。その父が完全リタイアを機に思い切って「総入れ歯」にしたのが、73歳の時。

「これでもう、歯に悩まされなくていいんだーっ!! ヒャッハーっ!!」な父だったが、我が家での介護が始まった時、どうも食が進まない事に気づいた。身体の大きい人なので、若い頃から好き嫌いなく良く食べる人だったが・・・。

認知症の母と離れて暮らすようになった事への心配か、環境の大きな変化への不安か、それとも私の料理が口に合わないのか・・・。(だけど言っとくけど、私のレシピは”お母さん”のレシピだから、品も味も同じだぜ?!と思いつつ。)

原因は色々浮かぶ。そしてそのどれもが、当てはまる。しかし、そのどれもに慣れてもらわなければならない。

父のMCI(軽度認知障害)は、認知症へと進行する”崖っぷち”にいると危機感を持っていた私は、とても焦っていた。ウチに来ても、日に日に、しゅんとしていく父に、何とか乗り越えてもらわなければならない。

ある日も父は顔をしかめながら、ボソボソと箸を口に運んでいた。

私「あれ、何か、苦手なもの出した?あんまり美味しくない?」
父「うん・・・いや美味しいよ。美味しいんだけど、実は、歯茎が痛いんだ・・・。」
私「なぬっ?! いつから?」
父「ずっと前から・・・。でもお前に言うと悪いと思って・・・。」
私「我慢してたの?!」
父「うん・・・。これ以上、迷惑かけたくないから・・・。」
私「いやいや、それは言ってくれていいんだよ。」

優しく穏やかに言ったものの、その後、驚愕の事実が判明する。

なんと父は、
「”総入れ歯”にしたから、もう歯磨きはしなくてもいい。」と思い、13年間も、ろくに歯を磨いていなかった!!
(おまけに入れ歯もたまにしか外さない!)

オイオイオイオイ・・・・・嘘だろっ?!

私の優しい態度は豹変したw
即、父が診察券を持っていた歯医者さんへ強制連行。
連行途中の車内で父が不満げにつぶやく。

「なんで歯がないのに、歯茎が痛くなるんだろ・・・。」

そりゃ歯がなくても、歯周病菌は生きているからさぁ―っ!! 歯がないからって、歯磨きしないとか、マジあり得ねぇ――っ!!!(怒

私は、運転席の窓を開けて、そう叫びたかった・・・。

行きつけの歯医者さんの診断では案の定、総入れ歯の下のあちこちで歯肉炎が勃発していると。年をとって、歯肉が痩せて来ていることもあり、入れ歯が合わなくなっているのに、無理に噛んでいるから、歯肉炎が広がってしまうんですよね・・・と。

さらに、最悪な事に「歯がないから歯磨きいらない!」とか、口腔ケアを疎かにしてきたことが、更なる、負のループを生んでいたのは、明らかなわけでしてっ!!(ま、それは歯医者さんには言わなかったけどw)

そこで、私は思いきって『総入れ歯の代替え』を歯医者さんと父に提案した。85歳と高齢で、後、何年生きるかはわからないけど「日々の食事をちゃんと噛んで食べられること。」それが、今の父には”最重要課題だ”と感じていたからだ。

父「でも・・・上下で30万もかかるんだよ?お金、なくなっちゃうよ・・・。」
私「大丈夫だよ!!お父さん!!  月1万円として、30ヶ月長生きして年金貰えばペイできるっ!! 」
父「そっか!! そういうことだな?!」
私「そういうことだw 自分の入れ歯代は、自分で稼げ!!」

85歳と高齢の親に対して、そう言い放つ娘に、歯医者さんは爆笑だった。

こうして、父は、歯肉炎の治療をしながら数ヶ月をかけて、調整しながら新しい総入れ歯を作った。

「噛む力」が甦った父は、毎食、笑顔で良く食べるようになった。入れ歯が合っているので、話す言葉も表情にも、自信が満ちて、ハッキリしてきた。この時、私は父の「脳の覚醒」を体感した。件の伊東先生の記事の事例と、全く同じ事を経験したのだ。

しかし、実は、この件でもうひとつ、良い効果があった。

「入れ歯代なんか、その分、長生きして年金で稼げばいいじゃん!」と言った私の何気ない言葉が、「あぁ、俺はまだ、元気に生きて稼がないと!! 入れ歯代の元を取らないとっ!!」という、父の”やる気スイッチ”を押したらしくw

それからというもの、毎日、毎回、ちゃんと入れ歯を外して専用の歯磨き粉で洗い、歯茎のマッサージをして、入れ歯を外したまま、歯肉炎を防止するマウスウオッシュで口をゆすいで仕上げるという、「口腔ケア」のルーティーンを父は自ら丁寧に取り組んでいる。

新しい総入れ歯は、それまで母の介護で、すっかりしおれてしまった父の「生きる力」までも、呼び起こしてくれた。

新しい総入れ歯を入れてから、現在、13ヶ月と半月が経過している。総入れ歯代をペイできるまで、後、17ヶ月・・・。

いや、後3年、90歳までは、何とか元気に目指せそうだw
あの時、総入れ歯の代替えをしたのは、正解だったと思っている。




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