『ダイナミック・ケイパビリティの企業理論』D・J・ティース
はじめに:ダイナミックケイパビリティ入門
今回はダイナミックケイパビリティ(以後DC)についての本を紹介したい。この本は、DC理論の巨匠ティースによって書かれた論文をいくつか和訳して本にしたものである。
DC理論は、日本ではあまり研究が盛んではないが、欧米では非常に熱い議論が巻き起こっている分野でもある。
今回は、DCの概要を分かりやすく説明する。今後もDC関連の本の紹介を行っていく予定だ。
そして、女史のnoteをどう読むか、こちらを参考にしてくれ。
定義:ダイナミックケイパビリティとは
DCとは、変化する環境に適応するため、既存の固有の資源自体を再構成・再配置そして再利用し、付加価値を最大化しようとする、より高次の変化対応的な自己変革能力である。
企業とは、人・モノ・カネ・情報以外にも様々な資源を持つ。サプライチェーンであったり、提携取引先やR&D施設なども資源である。
環境が激しく変化するこの時代、企業は、迅速に環境変化に対応して、資源をオーケストレーションしていく必要がある。
ダイナミックケイパビリティの論理構造
ダイナミックケイパビリティの重要要素として、機会の感知、捕捉、脅威・変容のマネジメントの3つが挙げられる。
感知とは、機会を感知するためのフィルタリング・分析システムを指す。R&Dの推進やオープンイノベーション、ニーズの把握などが挙げられる。
捕捉とは、機会の捕捉のための企業構造、手法、デザイン、インセンティブを指す。ビジネスモデルやコントロール、ロイヤリティ・コミットメント、意思決定、プロトコルの選択が挙げられる。
脅威・変容のマネジメントとは、特殊な有形・無形資産の継続的整合性・再整合性を指す。分権化と準分解可能性、共特化、ガバナンス、ナレッジマネジメントが挙げられる。
これら感知、捕捉、変容のプロセスを通過し、DCが実践される。DCによって企業の資源を再配置し、経営戦略を柔軟に変革させていく。
これがダイナミックケイパビリティである。
おわりに:理論の重要性
実はこのダイナミックケイパビリティとは、論争が非常に盛んで、論派が分かれている。だからこそ、この理論が余計面白く感じる。
企業が環境変化に迅速に適応するために、DCの実践が必要であることは間違いない。ただし、それを具体的にどのように実践し、結果的にどれほどの効果があるのか、定量的な研究がさらに発展していくことが期待される研究分野でもある。