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『キャッチ22』ジョーゼフ・ヘラー
はじめに:重いがシニカルな戦争小説
キャッチ22は、英語でも日常用語として使われるようになるほどのセンセーションを巻き起こした言葉だ。これは、抜け出せないジレンマを表す。
例えば、就職活動をする際に、どこの企業の仕事も経験者しか求めない。しかし、経験者になるためには仕事を得る必要がある。
このジレンマを、キャッチ22という。本小説では、理不尽な戦争から、キャッチ22に首根っこをつかまれ、結局抜け出せないというシーンが多く出てくる。
本作では、戦争の狂気をシニカルに描いた小説である。
キャッチ22:抜け出せないジレンマ
キャッチ22の主人公は、戦争から抜け出したいと思い続ける若者だ。彼は、戦争から抜け出そうと、ありとあらゆる手段を検討するが、キャッチ22なるルールに縛られ、抜け出せない。
彼の軍の中に、狂人がいた。やることなすこと支離滅裂で、皆彼を狂人と思い、相手にしなかった。
とある日、その狂人が乗った飛行機が墜落した。皆、彼は死んだ者と思っていた。ところがどっこい、彼は実は墜落したふりをして飛行機から脱出し、戦争が全く関係ない土地に逃げだしていたのだ。
主人公は、戦争から抜け出したいという思いはあった。しかし、キャッチ22のルールを破ってまで行動するということができなかった。
一方でその狂人は、狂人を演じることで巧みに脱出を計画し、キャッチ22などどこ吹く風、脱走を成功させたのだ。
おわりに:狂気と正常の境目
本小説では、狂気と正常が巧みに混ざり合って描かれている。どちらがまともなのか、読者でさえ分からなくなってしまう。
戦争状態の中、脱走を企てたり、戦線離脱を願望することは、正常な思考とはされなかった。人々はキャッチ22というルールに忠実に従った。
結果、多くの人が死んだ。
本作は、狂気と正常は、所詮状況によって反転しうるものだということを教えてくれる。