「なんとなく」で決まる購買意思決定 〜ネオ昭和〜
ある方の話を聞いて、やっぱりなと感じつつ、改めて文字に起こしておきたいなと思ったことがあるので、そのことについて話をしたいと思います。普段営業を生業にしていますが、営業というか購買行動に対する考え方を改めて認識し直そうと思っています。
ある企業さんからの営業勉強会を頂いて、講師が投げかけた質問は、一見シンプルなものでした。
「皆さんは、お客様がなぜ商品を買うと思いますか?」
みんなからの答えは予想通り。
「性能が良いからです!」
「価格が魅力的だからです!」
「営業担当との関係性です!」
私も思わず頷いていました。当たり前じゃないですか。だって私たち営業マンは、日々そう信じて必死に製品の特徴を説明しているわけです。
日常に潜む「なんとなく」の正体
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
私たちは毎日、数えきれないほどの選択をしています。
朝起きて、スマホを手に取る。LINE使うのに、なんでiPhoneにしたんだっけ?
通勤中に、コンビニでコーヒーを買う。なんでセブンイレブン?
昼休みに、スーパーで食材を買う。なんでイオン?
夜、動画配信サービスを見る。なんでNetflixにした?
もっと大きな買い物だってそう。
車を買い換える時、なんでトヨタ?
引っ越す時、なんでその不動産会社?
光回線を契約する時、なんでその会社?
「理由はちゃんとあるはず!」
そう思って、講師の方が実際に購入者に調査をしたそうです。結果は...。
驚愕の真実:8割超が「なんとなく」
なんと、商品やサービスの購入を決めた理由を聞くと、8割以上の人が「なんとなく」と答えたそうです。
最初に聞いた時は、みんなが「えっ、まさか!」という雰囲気に包まれました。みなさんもきっとそうなんじゃないかと思います。
でも、よくよく考えてみると...。
実は「なんとなく」には、私たちの時代を反映した深い理由気がしています。現代社会では、情報があまりにも多すぎる。
スマホ一つ買うにしても:
何十社という製造メーカー
各社から出ている複数のモデル
それぞれの細かいスペック
契約プランの種類
キャンペーンの内容
...etc
全部を完璧に比較検討したら、それだけで一週間くらい仕事を休まないといけないでしょう(笑)
結局のところ、私たちにできることは:
自分で集められる範囲の情報を集める
信頼できる専門家の意見を聞く
その中から、自分のタイミングに合うものを選ぶ
つまり、「なんとなく」は「限られた情報の中での最適な判断」なんだと私は思います。
品質競争の終焉
ここで気づいた重要なポイント。
今や、商品やサービスの品質は、ほとんどの業界で限界まで来ています。
例えば:
スマホ:どのメーカーも高性能
家電:基本機能に大差なし
インターネット回線:速度はどこも十分
自動車:安全性能は各社とも充実
新しい機能や性能は、すぐに競合他社にコピーされる。
価格も、大きな差をつけることは難しい。
そんな時代に、何が勝負を分けるのか?それはネオ昭和時代の到来だと私は思っています。
昭和的な「当たり前」を法人営業の世界で考えると:
元気よく挨拶する
返事はすぐに返す
直接会う機会を増やす
嘘はつかない
...という、まるで昭和の営業マニュアルのような基本に立ち返ることが、実は最先端になってくる気もしています。
なぜか?
それは「なんとなく」の正体が、実は「信頼」だからなんじゃないかと思うからです。お客様は、すべての情報を完璧に比較検討することはできない。
だから、「なんとなく信頼できる」と感じる相手を選ぶ。
その「信頼」を築くのは:
小まめな連絡
誠実な対応
約束を守る姿勢
困った時の素早いサポート
つまり、昔から変わらない「当たり前」の積み重ねなんですよね。
最後に
「AI」や「DX」という言葉が飛び交う2025年。
テクノロジーは日々進化し、ビジネスモデルは複雑化する。
でも、人と人との関係は、結局のところ「なんとなく」で決まる。
そして、その「なんとなく」を支えているのは、実は昔ながらの「当たり前」の積み重ね。
かっこつけなくていい。
地味だけど必要なこと。
それが今、「ネオ昭和」という新しい形で復活してくるんじゃないかと私は感じています。
新時代の営業の方程式
結論としては:
品質の限界 + 情報過多 = 「なんとなく」の時代
「なんとなく」の正体 = 信頼関係
信頼関係の築き方 = 昭和的な基本の徹底
どこかおかしな話に聞こえるかもしれません。
でも、この「なんとなく」と「当たり前」の組み合わせこそが、これからのビジネスの本質なのかもしれません。
私も明日から、新たな気持ちで「当たり前」の積み重ねを始めていきたいと思います。