【感想】人を選ぶ技術
冒頭
みなさんは、人を見る目にどれくらい自信がありますか?
私は「人を見る目があります」とはっきり言い切ることはできません。仕事で面接や組織設計に関わることが増えてきましたが、確立した論理もなく、選定後に確固たる自信が生まれたこともありません。
みなさんも同じような感覚を持っているのではと思うのですが、どうなんでしょう。
「人を見る力」を言語化し、少し光が見えてくる一冊を読んだので、そのことについて書いていきたいと思います。
優秀認定は怪しい
面接や人事異動に関わったことがなくても、「あの人が優秀」「この人は優秀じゃない」といった話をよく耳にしたり、自分でも言ったりしますよね。
でも、その「優秀」とは何を基準に判断しているんですかね。
私も過去に「優秀だよね」と感じたり言ったりすることが多くありましたけど、いざ「なんで?」とか「どこが?」問われると明確に答えられないことが多いです。なんだか上辺だけのどこにでもある言葉を並べて表現しちゃいがちだな~と思います。
昔、イチロー選手の獲得を体格を理由に見送ったメジャー球団があったそうですが、どれほど悔しかったでしょうか。イチロー選手を逃してしまうのは本当に大きな出来事ですが、大小あれど、私たちも判断基準を言語化していないと、同じようなことをしているのかもしれません。
さて、なんでそんなことが起こるかと言うと、みなさんご存じ、さまざまなバイアスがかかるからですね。
学歴差別は良くないと言われますが、中卒や高卒と比べると、大卒の方が優秀に感じてしまう効果はあるように思います。また確証バイアスのように、自分の意見や仮説を支持する情報を優先的に探し、相手の本質を見抜く前に自分の感覚だけで判断してしまうこともよくあります。
色んなバイアスがかかって、正しい目を持つことが出来ない。
つまりは私たちがしている優秀認定は怪しいってことですね。
こうしたバイアスが自分にかかる前提をしっかり持つことが、人を選ぶ技術に直結するのだと感じます。
私も以前、ある中途入社の方を平凡だと思い、特に成長する余地もないと評価したことがあるんですが、実際には大活躍した例を体験しています。彼は特筆すべき技術を持っていなかったものの、想像よりも早くグループのリーダーに成長した方がいました。今振り返ると私の浅い経験が反映され、バイアスがかかっていたのだと今では感じています。
ポテンシャルを何で感じるのか
みなさんも感じている通り、人を見る目には常にバイアスがかかっていますよね。
そんな前提の中で、私たちはどのようにしてポテンシャルを見極めればいいのでしょうか。
その答えの一つが、本書で書かれている4つのポテンシャルモデルです。
①好奇心
②洞察力
③共鳴力
④胆力
これらは人間の持つ可能性を表す、いわば羅針盤のようなものになるかもしれません。
著者の小野さんは、長年の経験を通じてこれらのポテンシャルをエネルギーとして感じ取り、まるでオーラのように色で見えるようになったそうです。
私たち凡人にはそこまでの域に達することは難しいかもしれないですが、この4つの要素を意識することで、人を見る目は確実に磨かれていくはずです。
例えば、データサイエンティストを採用する場合を考えてみましょう。ここでは特に「洞察力」が重要になってきます。本書によると、洞察力には「集める」と「つなげる」というサブセットがあるそうです。
情報を貪欲に集め、それらを整理して意味を理解することにワクワクする。さらに、その情報を新たな視点でつなげていく。こういった特性を持つ人物は、データ分析の分野で大きな可能性を秘めているといえるでしょう。
ただ、注意したいのは、これらのポテンシャルに優劣はないということです。
それぞれの特性が、どの役割や職種に適しているかを見極めることが重要なのだと思います。
営業職であれば「共鳴力」が、新規事業の立ち上げであれば「胆力」が、より重要になるかもしれません。
また、ポテンシャルを見極める際には、その人の背景や経験も考慮に入れる必要があります。例えば、「好奇心」が強い人は、これまでどのような分野に興味を持ち、どのように学びを深めてきたのか。
「胆力」のある人は、過去にどのような困難を乗り越えてきたのか。そういった具体的なエピソードを聞き出すことで、よりリアルにその人のポテンシャルを感じ取ることができるのだと思います。
さらに、ポテンシャルは固定的なものではありません。環境や経験によって変化し、成長していくものです。ですから、現時点でのポテンシャルを見極めるだけでなく、将来的にどのように伸びていく可能性があるかも想像することが大切なんだと感じました。
人を見る目を磨くことは、単に優秀な人材を見つけ出すためだけではありません。それは、一人一人の持つ可能性を最大限に引き出し、組織全体を活性化させることにつながるのですね。
そう考えると、ポテンシャルを見極める力は、単なる人事スキルではなく、組織や社会をより良くするための重要なツールだといえるでしょう。
この4つのポテンシャルモデルを意識しながら、日々の中で人を見る目を磨いていく。そうすることで、私たちは少しずつ、でも確実に、人を見る力を高めていけるはずです。
まずは試す、そしてチャレンジを続けようと思います。
カルチャーフィットとは
面接で陥りやすい意外な落とし穴として、モチベーション、カルチャーフィット、性格の3つが紹介されています。
この中でカルチャーフィットの文脈が特に面白いと思ったので、少し触れておきたいと思います。
私も「あの人はカルチャーフィットしている」などと言うことが多いですが、カルチャーに合う人を選ぶ会社や組織も多いですよね。
そのうえで、みなさん「御社のカルチャーとは何ですか?」と聞かれてなんと答えますか?
多くの答えとして想像出来そうな所で言うと「誰とでもフランクに話せるところです」と答えられそうですが、これは表面的なんだそう。
社員一人一人が能力を発揮し、売り上げを上げる場所であるはずだと思うと、カルチャーフィットは曖昧です。小野さんは、会社のカルチャーの物差しは評価システムと権限委譲システムだと言います。
評価システムは「良し」とする姿と給料の払い方で、権限委譲システムは物の決め方のスタイルです。
評価システムで言えば、チームワークが得意で自己犠牲が評価される組織か、個人が切磋琢磨して成績を残す組織かでカルチャーは違います。権限委譲システムも同様に、中央集権的な意思決定か、現場での判断を良しとする会社かでカルチャーは変わります。
私も会社の中でカルチャーを感じ、伝える役割を持っていますが、この話に沿って進めると、どんな人がカルチャーマッチングするのかを言語化し、伝えられる気がしました。
まとめ
人を見る力というと、人を品定めしているような感覚になり、難しくなんだか避けたくなる場面も多い気がします。
また、面接は基本的に一対一で行われることが多く、良い面接や判断基準がわかりづらく、フィードバックも受けにくいため、自己流に陥りがちで難しいと感じていました。
そんな中で学んだのは、相手の能力とポテンシャルを冷静に見抜き、それに合った期待値を描き、委ねるべき仕事をデザインすることが人を選ぶということだということ。
相手を完璧にジャッジすることはできないし、人は平等でも一定でもないという小野さんの言葉に共感しました。相手の能力とポテンシャルを冷静にジャッジし、期待値を描き、バイアスがかかっているかもしれないし、読み違えることも多いですが、その中で描けることをしっかりと相手に伝えることが大事ですね。
人を選ぶ技術は難しく、永遠のテーマですが、少しずつ言語化しながらチャレンジすることが大事だと感じた一冊でした。