「非正規雇用者」は個人でも労働者でもなく、商品として扱われる。
雨宮処凛 著『非正規・単身・アラフォー女性「失われた世代」の絶望と希望』を読みました。
アラフォー(就職氷河期世代)
非正規雇用
独身
の女性にインタビューをした本です。
読んでいて憂鬱になるので観覧注意。
特に鬱病の人は要注意。
悪書ではないです。
むしろ同じ境遇の人にとっては救いになるかもしれないし、
そうでない人にとっても他人事ではありません。
就職氷河期世代について
本書が出版されたのは2018年5月で、
当時のアラフォー女性は就職氷河期世代です。
(現在だと既にアラフィフに差し掛かっています)
この世代は過酷な受験競争を強いられ、
社会に出るころにはバブルが崩壊し、就職氷河期にぶつかりました。
そのため多くが派遣やフリーターなどの非正規雇用となりました。
正社員と非正規は「身分」が違う
これ、日本の話ですよ??
昭和とか戦前の話じゃないです、21世紀の話です。
正社員と、契約社員やアルバイトの間には露骨な差別が存在します。
現代日本の「カースト制度」です。
正社員と非正規は「身分」が違い、人間としての「価値」が違う。
そうとしか言いようがない、グロテスクな現実です。
バブル崩壊やリーマンショックのような金融危機、
東日本大震災やコロナのような外的ショックが起こる度に
若者は雇用から排除されました。
本書は就職氷河期世代に焦点を当てたものですが、
現在の若者も他人事ではありません。
「少子化で働き手が不足しているから就職は楽になっている」
「10年前に比べてブラック企業は減った」
「普通に生きていれば非課税世帯にはならない」
などと楽観視していると、
また金融危機や災害が起こった時に、再び若者が雇用から弾き出されるのは明らかです。
独身女性に対する法律
本書が出版された2018年当時、独身女性に対する法律は一つしかありませんでした。
それは何だと思いますか?
(ちなみに2024年11月現在は、『困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援新法)』があります。)
答えは売春防止法です。
「売春を行うおそれのある女子を要保護女子とし、保護更生を図る」という名目で、婦人保護施設に「収容」する。
これしか困窮した女性を助ける法律はありませんでした。
要は政府が独身女性を見るまなざしが
「生活に困った女は売春するかもしれないから保護しておこう」
ということだったわけです。
労働問題や、それを解決するための政策は、結局はオジサンが主役でした。
パート労働者や外国人労働者の問題などは、女性やマイノリティに特有のものとして公に共有されませんでした。
その結果、今の貧困問題を生み出す根っこが育ってしまいました。
546万1000円
これは、高齢者一人の介護に必要な金額の目安だそうです。
ちなみに、この額に生活費は含まれていません。
アラフォー、アラフィフ世代は介護の問題にも直面しています。
親の介護のために仕事を辞める。
これは一番やっちゃいけないことって言われますね。
筆者の知人男性で、親の介護で離職した後ホームレス生活になった人の話が紹介されています。
父親の介護のために、年収1000万円を超える大手百貨店の仕事を40代で退職。
父を看取った後に母親の介護が始まり、母親が亡くなると貯金が尽きて、そのまま路上生活者となったそうです。
親の介護で困った時、まずはどこに行けばいいのでしょうか?
答えは「地域包括支援センター」です。
地域包括支援センターとは、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが相談に応じてくれる機関です。
困ったら、まずは自分の住む場所の地域包括支援センターに行きましょう。
申請することで「要支援2」とか「要介護1」などの認定がおります。
介護保険の申請は早くした方がいいです。
最近は認定がおりるまですごく時間がかかるそうです。
親の介護となると、いろいろなものを諦めなければいけないと思いこみがちですが、情報収集や、使える制度を使うことが大事です。
そしてとにかく仕事をやめないこと。
短時間でもいいので仕事を続けることが、精神的にも金銭的にも支えになります。
介護離職した結果、金銭面で詰んで共倒れになるというのが最悪のケースです。
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