『「承認欲求」の呪縛』承認欲求を無くすことは不可能だが、軽減は可能
著者が言いたいことは大体こんな感じです。
承認欲求は他人に依存する欲求だよ
承認欲求は極めて強力な欲求だよ
イジメ、パワハラ、うつ病などの問題も承認欲求が関わっているよ
noteの記事にスキが欲しい、フォロワーが増えほしい、コメントが欲しいと思うのは、典型的な承認欲求です。
どうやったらスキやフォロワーに囚われずnoteを楽しむことができるでしょうか?
著者の以下のように回答します。
リアルを充実させる
複数のSNSを使い分ける
以上です。
残念ながら拍子抜けというか、望んでいた回答は得られませんでした。
「リアルを充実させる」については説明不要。
そんなこと言われなくても分かってます。
「複数のSNSを使い分ける」というのは、
SNSを数分おきにチェックしないと不安になるような中毒の人でも
複数のSNSを運用すれば分散されてちょっとはマシになるよね、
という程度の妥協案でしかありません。
そもそも本書はどういう内容なのかというと、
承認欲求が人間にとってどれだけ大きな影響を与えているか
承認欲求が組織や社会にどれだけの危険性、弊害を与えているか
ということを解説した、組織論的な本です。
SNS依存症の人がどうやって抜け出すか、
みたいなことはあんまり書かれていません。
タイトルがちょっとミスリードかもしれません。
『「承認欲求」の組織論』
みたいなタイトルの方が本書の内容に合っている気がします。
(このタイトルで売れるかどうかはともかく)
「セルフハンディキャッピング」という心理学用語があります。
たとえば大事な試合の前に、体のどこかを痛めたり、
体調を崩しやすい人がいます。
これは周囲に期待を抱かせないようにするためで、
「けがをしているのだから勝てないだろう」
という風に思わせたいために起こります。
失敗したときに自己評価が大きく低下することを予防しようとする、
一種の自己防衛というわけです。
このように色々な行動や社会問題などを
「承認欲求」と関連づけて説明しています。
話はパワハラや過労死、さらには森本・加計問題にまで広がり、
「さすがに話が飛躍し過ぎではないか?」という気がしてしまいました。
無意識のうちに精神的な負担となってしまう承認欲求。
その解決策として以下のような提案がされています。
リーダーがプレッシャーをかけすぎないように配慮する
チームで楽しむことを追求する
もう一つの世界を持つ
この「もう一つの世界を持つ」ということについて
詳しく見ていきます。
例えば副業をせず本業一本だと、
いまの会社や職場から切り離されることに対して
どうしても不安を抱きます。
副業などでもう一つの帰属先をもてば、
その不安は小さくなるというわけです。
学生であれば学校という共同体に100%帰属するより、
校外のクラブや塾などに所属するとか
あるいはSNSなどで外部の人たちと繋がる方が
呪縛に縛られずにすむのではないか、というのが著者の提案です。
その際、二つの世界が被らないことが大切であると著者は強調します。
学校で問題になっているSNSによるイジメは、
大抵がクラスの仲間や同じ学校の中などで起こっており、
リアルの世界とネットの世界が独立していません。
二つの世界が被っている状況では、
承認欲求のしがらみを軽減することができません。
例えばボランティア活動や、新しい趣味を作ることなどは、独立した「もう一つの世界」を持つのに有効そうです。
「結婚」も、独立した「もう一つの世界」を持つことそのものだなと思いました。