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【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第二部ー72
「発表会のエントリー」
「今そこで牧野君が走っていったけど何かあるの? 」
入れ替わるように新田が入ってきた。
「これ、岸本君がお土産だって置いていったよ」
そういってケーキの箱をテーブルに置いた。
「新田君は発表会のエントリーされましたか? 」
「発表会? あぁ、なるほどね。
牧野君はそのエントリーに行ったのか」
新田は箱を開けると、
「俺は見る専門かな」
笑いながらドーナツを一つ取って口にくわえた。
「向井さん珈琲飲む? 」
コーヒーカプセルをセットした。
「飲みます」
向井も箱を覗いてドーナツを選んだ。
「あっ、ドーナツ? 俺も食べる」
安達が入ってきた。
休憩室に人がいる時はお土産があるので、
それを嗅ぎつけてやってくるものが多い。
「アニマルドーナツだ~! これ、凄い人気なんだよ」
安達が頬を緩めて眺めた。
「そうなの? 」
新田と向井は、
夢中になって選んでいる安達を笑いながら見た。
「どれも可愛い……ピンクのウサギは苺かなぁ~」
「なに? ドーナツ? 安達はウサギがいいのか?
じゃあ俺は……ヒヨコにしよう」
死神課から戻ってきた牧野が後ろからのぞくと、
サッと手に取り口にくわえた。
「あ……」
安達の表情が曇るのを見て向井が言う。
「安達君も早く選ばないと食べたいのが無くなっちゃうよ」
「う~~~~ん、クマ?……やっぱウサギにする」
「味なんかどれも一緒だろ? 」
牧野の言葉に、
「違うよ。これは中にクリームが入ってるんだよ」
安達が文句を言う。
「ん? あっホントだ。俺のはカスタード。
向井と新田のは? 」
二人もなにげに食べていたので中身を確認して言った。
「ナッツクリーム。新田君のは? 」
「俺のは抹茶。香りもいい」
「ほら~」
安達はむくれた顔を見せてから、
ナプキンにそっとドーナツを包んだ。
「真ん中のウサギが壊れちゃうから、
ゆっくり食べなきゃ」
「腹に入ればどれも同じだろ? 」
「違うよ」
そんな二人のやり取りを見ながら、
珈琲を運んでくると新田が笑った。
「近頃の安達君は人が変わったみたいに子供っぽくなった?
可愛いからいいけど」
「リングのせいだと思います。
陰の気を吸い取っているので痛さが消えて、
陽の部分が表に出ているんでしょうね。
これが本来の安達君の姿なんじゃないかな」
「それは安達君の霊媒体質が相当強いという事? 」
「多分。子供の頃から、
かなりの苦痛を感じていたと思う」
安達の魂について何も知らない新田は思い遣るように言った。
「俺は霊感もないからわからないけど、
視えたり感じる人には辛いんだろうね」
「そうですね」
二人がそんなことを話していると妖鬼が入ってきた。
「おっ、ドーナツ? 俺にも一個ちょうだい」
ひょいっと箱からドーナツを掴むと向井の方を向いた。
「そうだ。向井さんを呼びに来たんだ」
「なに? 」
ソファーに座る向井が妖鬼を見上げる。
「発表会の事で聞きたいことがあってさ」
「何か問題でも出ましたか? 」
「問題じゃなくてレイアウトを聞きたくて」
「ああ、そのことですか。
じゃあ、今ステージを見に行きますから」
「そうだね。見てもらって指示したほうが早いね」
「だったら、俺もちょっと覗こう」
向井達はドーナツを食べ終えると部屋を出て行った。
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