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【社会科】少数意見の尊重はなぜ大切?アビリーンのパラドックスから考える

どうも。いかたこです。

中学校で社会科の教員をしています。

noteでは、授業がより楽しくなるアイデア(授業のタネ)を発信しています。

今回は、少数意見の尊重についての授業のタネです。

少数意見の尊重
少数者の意見発表や批判の自由が認められ、また意思決定に際しても多数と少数の交流が行われ、全体の意思が形成されていくこと。少数意見を尊重しないと、多数の圧制につながる。

政治・経済用語集 山川出版 2016

教材研究の時に調べてみて驚きでした!

少数意見の尊重とは、「いろいろな考えを持つ人がいるから、少数派の意見も思いやりを持って聞いてあげよう!」みたいな道徳的なものだと思っていました。

もちろん、そのような意味もあると思いますが、少数意見の尊重には、少数派の意見を取り入れていくことで、集団の決定をよりよいものにしていくという意味もあるようです。

なぜなら、民主主義において、常に多数派が正しいとは限らないからです。

今回の授業のタネでは、「アビリーンのパラドックス」を用いて、少数意見の尊重がなぜ大切なのかについて学習していきます。

生徒たちからの評判も良く、楽しみながら考えることができると思います。

以下では、詳しい内容について説明しています。
よろしければ、最後までご覧ください。


アビリーンのパラドックス

ある八月の暑い日、アメリカ合衆国テキサス州のある町で、夫妻とその舅夫婦が団欒していた。そのうち舅が53マイル離れたアビリーンに夜食を食べに行こうと提案した。姑も夫妻もその提案に反対しなかったが、道中は暑く埃っぽく到底快適なものではなかった。
4時間かかって疲れて帰宅した後で彼らはこう言い合った。
姑「家にいたかったけど、あなたたちが行きたそうなのでついて行ったわ」
夫「別に乗り気じゃなかったが、他が行きたそうだから連れて行ったんだ」
妻「あなたたちが行くと言うから一緒に行っただけよ。暑い中で出かけるなら家にいたわ」
舅「わしは別に行かんでも良かったが、お前らが退屈だから行こうと思ったんだが」

アビリーンのパラドックス - Wikipedia

アビリーンのパラドックスとは、誰も異議を唱えなかった結果、集団が誰も望まない決断を下してしまう現象のことです。

ここまで極端ではないにしろ、アビリーンのパラドックスに近い状況は、生徒たちにとってもあるあるだそうで、思っていた以上に興味を持ってくれました。

Wikipediaに掲載されていたものが、私が見た中では一番簡潔に書かれていたため、引用させていただきました。

ちなみに、「舅」は「しゅうと」と読み、夫または妻の父のことです。読めなかった・・・(^0^;)

授業で説明した際には、舅・姑という意味を知らない生徒もいるため、4人家族という設定に変更しました。

また、アビリーンという地名にも馴染みがないため、日本の地名に変更して物語を作りました。


授業の展開

① アビリーンのパラドックスについて説明する

② アビリーンのパラドックスの原因を考える

Q. なぜアビリーンのパラドックスが生じてしまったのか?
・誰も自分の本当の意見を伝えなかったから
・みんな周りの意見に流されてしまったから
・話し合いを十分に行わなかったから
・異議はないか確認を取らなかったから

③ 当事者意識を持って考える

Q. もしその場にいたら、自分の意見を伝えることができただろうか?
・家族なのであれば、しっかり自分の意見を伝えられる
・自分も周りの意見に流されてしまうと思う
・周りは賛成しているのに、自分だけ反対するのは難しい

Q. 自分の意見を伝えやすい環境とはどのようなものか?
・周りと違う意見を言っても否定されない
・自分の意見も議論の中に入れてくれる
・時間に余裕があり、異なる意見を伝えても改めて議論できる

つまり、少数意見の尊重です。

*箇条書きは、実際の授業で出てきた意見です。

このような流れで、少数意見の尊重によって、集団の決定をより良いものにすることができ、アビリーンのパラドックスが生じないようにできることを理解してもらいました。


まとめ

以上が今回の授業のタネです。

学校現場でも何かを決める際に多数決が用いられることが多くあります。

そのため、生徒も多数決の際には、少数意見を尊重しなければならないということについて感覚的に理解していると思います。

しかし、少数意見を形式的に聞くだけで、それらを取り入れてより良い決断を下そうとするのは、なかなか難しいようです。

もちろん、議論の中で少数意見を尊重し、上手く取り入れるのは大人でも大変です。

ですが、少数意見を尊重することで、集団の意思決定をより良いものにできるということを、この授業のタネを通して感じてほしいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
今後も授業のタネを発信していきます。お楽しみに。

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