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奇跡を味わう
休日の終わりって、どうしてこんなにも憂鬱になるのだろう。
明日が来るという現実を受け入れたくないし、あまりにも楽しかった出来事たちとの温度差で風邪をひきそうである。
楽しくて、幸せで、もう死んでもいいかも(大げさ)と思ったのも束の間、明日からまた仕事の日々がやってくるということを思い出し、まるで心に泥水が染み込んでくるようだ。
とはいえ、仕事がそこまで嫌いかと聞かれればそうではないし、始まってしまえばなんとかやれてしまうのだと思う。
けれど、どうしてもこの休日終わりの憂鬱には耐えられない。
重たい感情に押し潰されてしまいそうになるから、1人ブランケットにくるまって、ストーブの側で猫みたいに丸くなる。
そして、このどうしようもない憂鬱が過ぎ去るのをただひたすらに、待つ。
今日は1日、のんびりと穏やかに過ごした。
まずはベッドを整え、朝ごはんを食べる。
その後は宅配便を待ちながら、絵を描いたり、作りたい料理のレシピをノートにまとめたりしていた。
今日は、仙台にある大好きなお菓子屋さんからシュトレンが届くのだ。
わくわくしながら、自宅にかなり早めのサンタクロース(クロネコヤマト)が来るのを待った。
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なんとも可愛らしい包装で、シュトレンが届いた。
早く食べたい気持ちを抑え、まずはお昼ごはんを用意することに。
昨日、食料雑貨店で買ってきたグルテンフリーのパスタを使って、豆乳クリームパスタを作る。
パスタずっと食べたかったのだけれど、糖質も脂質も高いし、そもそも市販されているパスタの小麦の質が気になっていた。
だから、米粉ととうもろこしだけでできたグルテンフリーのパスタを見つけた時は嬉しかった。
これで、グルテンを気にすることなく、楽しいパスタライフ(何それ)を送ることができる。
ほんのちょっとのバターで鶏肉と野菜ときのこを炒めて、米粉、豆乳を入れてパスタと絡めるだけの、簡単なレシピだ。
簡単なのに、とってもとっても美味しかった。
香りも食感も良く、久しぶりにパスタを食べられた喜びもあってか、かなり大満足であった。
鶏肉の代わりにサーモン(鮭)でも間違いなく美味しいと思う。
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昼下がり、仕事が休みの母といよいよシュトレンをいただくことに。
添加物、砂糖完全不使用のプレミアムなシュトレンである。
ずっしりとした重みから、作り手の想いがこれでもかと詰まっている…そんな感じがした。
やっぱり、合わせるのはストレートの紅茶だろうと思い、お湯を沸かして、お気に入りのカップとソーサーも準備する。
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まるでここがドイツで、優雅なクリスマス前の休日を過ごしているみたいな気分になった。
何種類ものスパイスとココナッツ、そしてスペルト小麦の香りがたまらない。
ひと口食べると、口の中に幸せが広がった。
洋酒に漬け込まれたフルーツの甘さが、「砂糖は不要です」と教えてくれるようだ。
ナッツの食感もアクセントになっていて、コーティングのココナッツの風味もよく合う。
ひと口ずつ食べ進めるたびに、母と「美味しいねえ」と微笑んでしまう。
こんなに美味しいシュトレンは、生まれて初めて食べた。
改めて、このお店が世界一だと再認識したし、こんなに素晴らしいものを作れることに感謝と尊敬の念を送りたい。
あたたかく、幸せで、美味しい午後のひとときであった。
ひと休みしてから、日頃の運動不足解消のためトレーニング施設へ出かけた。
約1時間半ほど有酸素運動をし、気持ちのいい汗を流す。
汗が引くときに身体が冷えて風邪をひかないように気をつけないといけない、そんな季節になった。
ジョギングするのは楽しくて、気持ちいい。
座ってばかりいる仕事だから、思い切り身体を動かしたくなったのだ。
運動することで、憂鬱な気分ごと吹き飛ばしてしまいたかった。
よく、「奇跡の映像スペシャル」みたいな番組を見るけれど、今生きているこの世界こそが、奇跡なのではないかと思う。
心身ともに健康で、家があり、仕事があり、家族や友人がいて、今こうして生きている。
幸せを共有できる人がいる。
幸せを味わうことができる自分がいる。
同じ「今」を生きている。
それはもう奇跡としか言えなくて、この上なく儚いもののような気がした。
つつけば壊れてしまいそうなこの時間を、今を、ちゃんと味わいたいと思った。
大げさだと言われてもいいから、私はそうしたい。
漠然とした将来への不安を抱えていても、今を生きることはできる。きっと、大丈夫。