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砂漠の夜に
コロナ禍の自粛期間中。誰もが家に篭ったあの日々で、ものがたりを書いた。
気が付いたら書き始めていて、形になりはじめたときにはそれは、サン=テグジュペリの「星の王子さま」のオマージュ作品となっていた。
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皮肉めいたことばの中で、ときどき、希望を求める秘密の声を込めた。
いつかどこかで思い出せるための美しい風景と、美しさの影で生まれ続ける絶望と。
世界は変わってしまったように見えるけれど、それは普遍的な光景でもあった。
世界の全ては繋がっているからこそ、目に見えている範囲はとても狭い。気が付いたときにはすでに失っているものがたくさんだ。
愛も、死も、失うことに気が付かなければ幸せでいられることはたくさんあっただろう。
気が付いてしまったその日から、自由を求めるしかなくなっていた。
神様に抗っても挑んでも、祈っても、手のひらで転がされるのなら、こっそり気付かれないように、わたしは皮肉を垂れるだろう。
人々と共に生きることを決めたその日から、人の守り方を学ぼうと決めたよ。
存在していくためには、進化し続けていくためには、存続していくためには。彼らと、彼女たちと、我々が共に生きていくために何を残せるのか。
こうして必死に考えたものの、答えなんてないのだろう。世界の真実なんて、今はわからないのだから。
ただ、もし、そうだとしたら。わたしたちは、わたしは、どう生きるか。それだけをずっと、考えてきた。
6月にそのわたしの中でのひとつの答えを、
手のひらを開いてみようじゃないか、と思った。
ものがたりの題名は最後まで悩みに悩んだけれど、やっぱりこれ以外考えられなかった。
〈 バラと飛行船 〉
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2022年6月9日(木)〜12日(日)
元映画館/スナック、シネマのあとで