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丹波〜因幡見聞録1 あさご芸術の森美術館
“予もいづれの年よりか片雲の風に誘はれて、 片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず”という芭蕉翁の言葉ではないけれど、旅に出たくて出たくてウズウズしていた。
仕事が落ち着いたら…と思っているうちにどんどん予定は積もってきて、むしろ今週くらいしか行けないか、と思い立って、ちょうど宿も手頃な値段のところが空いていたので思い切って飛び出した。
一泊だけの小旅行だけれど、なかなか充実した旅になりました。
朝。ボストンバッグを車に放り込んでいつもより少し早く家を出る。お気に入りのカフェでまずは朝食。木曜日限定のホットケーキでモーニング珈琲。
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旅のお供に文庫本を持って出るようになったのは数年前から。旅先で文字を追うのは、日常の生活の中で読むのとはまた違った感触になる。旅先で読み返してみて、気づくこと、心に響く言葉、がある。今回は『自省録』。特に意味はない。目についたから。
思い起せ、君はどれほど前からこれらのことを延期しているか、またいくたび神々から機会を与えて頂いておきながらこれを利用しなかったか。
文中の“これらのこと”とは、良く生きるための活動なのだけれど、それを“旅”に置き換えてみる。そうだ、旅に出たいと思いつつ、どれほど前から延期していたことか。
腹ごしらえも済んだので、車を北に向かわせて、あさご芸術の森美術館へ。
あさご芸術の森美術館は、6000㎡もの広大な野外彫刻公園と屋内の美術館によって構成される芸術空間です。(略)
朝来市出身で日本近現代彫刻の先駆者、淀井敏夫(1911~2005)の作品を屋内外に常設展示するほか、各種の展覧会やワークショップによる教育普及活動を展開しています。そのほか、朝来市ゆかりの作家の作品を多数所蔵しています。
https://asagoart.com/index.html
ここは十年くらい前に竹田城へサイクリングした帰りに立ち寄ったのだけれど、時間もあまり取れず疲れてもいたのでゆっくり観ることができず、万全の状態で再訪したいと思い続けていた。
それほど、素晴らしかったところ。
再訪してみてその想いはまったく裏切られることなく、むしろもっと好きになる。
淀井敏夫
あさご芸術の森美術館は、戦後日本の彫刻家・淀井敏夫の個人記念館的な性質が強い。
一見、ジャコメッティの強い影響下にあると思ってしまいがちだけれど、ちゃんと鑑賞するとそうではないことが分かる。
(淀井とジャコメッティの“非類縁性”については研究者の論文もあるので興味ある人は検索したらすぐ見つかります。)
淀井の作品の縦の長さへの希求は、偏に、空に憧れているからだと想う。鳥がモチーフの作品が多いことからもそれは分かる。
建物の中の常設展示も素晴らしいのだけれど、屋外展示がされている中庭が超絶素晴らしいので、ずっとここにいたくなる。
ちょうど天気も良くて、青い空に向かって、淀井の作った人物や鳥たちが、伸びやかに向かっていく。
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美術館のすぐ前には多々良木ダムがあり、この中庭はダムの岩壁を借景としている。ゴツゴツした石たちが、淀井の作品と共鳴しておるようで、絶妙な塩梅。
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本当に気持ちの良い空間、こんな空間を湛えている美術館、なかなかないと思う。
もっと多くの人に知られて欲しい。
第1回あさごビエンナーレ2024 優秀作品展
美術館では今年から始まったあさごビエンナーレの優秀作品も展示されていた。あさごビエンナーレは公募型のイベントで、全国の新進作家たちの作品が多く集まっている。
全151作の応募作の中から、大賞1作、優秀賞2作、奨励賞5作、スポンサー賞4作、入選50作。それら全てが展示されている。
撮影は禁止だったので、印象に残ったタイトルだけ記すと、森垣正則「OMOKAGE」(写真)、月蛙「PINKfrog-O氏とのsession 1」が良かった。
森垣氏の写真は、モチーフの形象を写真でできるギリギリまで抽象化していて、光と影の中に映された景色が溶け込んでいくようで、一見写真と分からなかった。
月蛙氏は、書家(おそらくO氏)が書き損じた反故をコラージュ的に集めて、その上に複数の蛙をあしらったもの。書家の字のラインと蛙の配置が絶妙で、面白かった。
ほぼ全ての作品に著者コメントがついていて、作品に込めた想いや表現しようとした意図などが記されている。公募展とはそういうものなのかもしれないけど、作品鑑賞時には、ちょっと煩く感じてしまう。作者の想いなど知らぬ存ぜぬで、作品を観たいと思う。
あさご芸術の森
美術館の周辺には、現代アートのオブジェが多数屋外展示されている。美術館で散策マップももらえるので、是非こちらも見逃さないで欲しい。
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全部で40作品くらいあって、ちょい離れたところにあったりもするので、コンプリートはできなかったけれど、これだけの作品が屋外展示されているスペースというのも、なかなかないんじゃなかろうか?あるのかな?
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正直、一つ一つの作品に何か心に響くものがあるわけでもないけれど、こうした、アートが置かれた空間そのものが、人を包み込むというところに、屋外展示の魅力があるように思う。
右衛門五郎
たっぷりあさご芸術の森を楽しんで、もうお昼。お腹も空いた。
車で15分ほど走ってお蕎麦屋さん「右衛門五郎」へ。
太い道から脇道に入ってラスト200mのアプローチは、ほんまにこんなとこにお店あるんかいな?と不安になる山路。
登っていくと看板も見当たらないけど暖簾のあるそれらしき建物がある。
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少し平たいお蕎麦も、揚げたての天ぷらも、とても美味しかった!
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再びお腹も満たされたので、次の目的地山路寺へ向かいます。(続く)