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教え子との10年ぶりの電話で感じた教師の醍醐味

突然、教え子から電話がかかってきた。きっかけは間違い電話。私の旧姓と彼の上司が同じ名前だったから、間違えて私にかけてしまったのだ。

でも、10年ぶりに話す彼の声は懐かしく、すぐに当時の思い出が蘇った。

「あのときはお世話になりました」
「先生、飲みに行きましょうよ」

現場にいた頃は辛くて辞めたくなる日も多かった。でも、この電話は、自分が蒔いた種が芽吹いたような感覚を教えてくれた――教師という仕事の醍醐味を。

彼と出会ったのは、教員2年目で25歳。
人生初の中学一年生からの受け持ちで、期待と不安が入り混じった日々だった。

入学式、教室で迎えたときのまだ幼さのある子どもたち。
彼らが三年生になるまでずっと担任を持ち上がった。

初めての修学旅行の引率。
初めての受験指導。
初めての大失敗。
初めての特大クレーム。

周りはベテランの先生ばかりだっただけに、若くて経験の浅い私はずいぶんと父兄には頼りなく見えただろう。

「早く10年経たないかな」

経験を積めばこんなに心が揺らぐことも、指導に迷うこともないのかも。
ネガティブな考えが頭をぐるぐると回って、何度も何度も学校に行きたくないと思った。

でも、行けば楽しかった。
授業や休憩時間でのちょっとしたやり取り、誰かが天然な発言をしてクラスみんなが笑う瞬間。

濃密な三年が過ぎ、卒業式を迎えた。
生徒からもらった手紙を開いたとき、こんな言葉が溢れていた。

「話を聞いてもらえてうれしかったです」
「三年間、ありがとうございました」

普段の彼らからは決して聞けない、素直な思い。

精一杯だったけど、満足できる指導なんてできなかった。それでも彼らは純粋に慕って、感謝まで伝えてくれる。

教師って、なんて忍耐のいる仕事だろう。

三年が経ったときようやく分かった気がして、私は職員室でひっそりと笑った。


大人にとってはあっという間の三年間も、中学生にとっては長い。大人の手をすり抜けていく子もいれば、人が変わったように成長する子もいる。

一人ひとり家庭環境は違って、価値観も違う。それに寄り添うのは、大変な仕事だった。

どれだけ心を尽くしたつもりでも、至らない点は残る。
生徒、父兄全員が信頼できるような教師になれた感覚は、今もない。



わが子と向き合う時間を大切にするために、私は教壇を離れた。
電話をくれた彼は、もう25歳になる。

あのときより低く、大人びた声が、当時と同じように笑いかけてくれる。

「あのときはお世話になりましたから」

一丁前に大人びた挨拶まで言えるようになって。
10年前に途切れたと思った人生の交錯点が、また重なる。

「春になったら飲みに行きましょう」

彼の言葉が、こんなにも心を満たす。
卒業式で送り出したときよりもずっと感慨深く、胸に熱いものが込み上げた。

これからも、またこんな風に、立派に成長した姿を見る日が来るのかもしれない。

ああ、教師ってなんて尊い仕事だろう。

教師を辞めた今だからこそ、この仕事が「聖職」だと言われる理由を思い知る。


いつまでも、彼らが誇れる大人でいたい。
誠実に生きて、懸命に仕事に向かって、成長したい。

大人になった彼らに、「先生もすごいでしょ?」と自慢できるように。


蒔いた種は、いつか芽吹く日が来るのだと伝えたい。


✒️ーーーー想いは駆けるーーーー🐎


✒️プロフィール

文筆屋ことロップ代表
茨木彩菜〈ペンネームはアヤコ〉


幼少期から日記、エッセイ、小説を執筆する。大学卒業後は中学校国語教員を務め、出産をきっかけにwebライターに。多世代共生社会実現のため、介護職に従事。現在は文章コンサルタントとして、「自信を持って書ける人」を増やす活動に専念する。

✒️お仕事実績

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・webコンテンツの企画・執筆・代筆・添削
・HP文章の執筆、添削
・チラシ文章の作成、添削

・プロフィール文の作成、添削など
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茨木アヤコ|文章コンサルタント
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