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正月の病院が8時間待ちで、植村直己の学習漫画を3周した話

めでたい正月早々、息子が熱を出した。いつもなら病院にすぐ連れて行くが、正月中の病院がどれだけ待つかは想像に容易い。病院でぐったり何時間も待つくらいなら、自宅療養した方がマシ。

そう思ったけれど、39度の熱が一向に下がらない。ほっぺも耳も真っ赤で、ぐったりとしている。水分は最低限摂取できているけれど、大好きなパックジュースさえ飲み干せないことに。

3時間待ちを覚悟して行った当番医で、まさか8時間も待つことになろうとは思わず…。


当番医は野戦病院のごとく、出入口にすら人が溢れかえっていた。もはや座る場所はなく、壁の隅や階段に立ち尽くす人々…。
「最低3時間コースだな」と覚悟を決め、夫と息子は車中で待機。私は病院で待つことに。

note記事を書いたり、チャットGPTに小説を書かせたりと、3時間はあっという間に経った。その頃、周りから「もう4時間経つね…」という声がした。

病院で受付したのが10時過ぎ。
時計はてっぺんを指し、箱根駅伝の選手たちはゴールの大手町に到着している。

方や私は終わりの見えないニューイヤー駅伝に参加して、ただひたすらに待つ。三が日に病院を開けてもらってるのだから、感謝の心を忘れずに。

待つ、待つ、待つ……。

待ち始めて4時間が経過。スマホを触りすぎて充電が少なくなってきた。
夫と連絡を取るためにも、これ以上は触れない。そこで、病院の本棚に目を向けることにした。

すっかり日焼けした漫画はどれも古臭く、あまり魅力的に見えない。目線を変えると、子ども向けコーナーの中に、冒険家・植村直己の学習漫画があった。

子どもの頃、学習漫画が好きで、30冊以上集めて読んでいたことがある。好んで読んでいたのは、外国の女性たち。アンネフランク、ヘレンケラー、モンゴメリ、キュリー夫人などなど。

男性は少なく、ましてや冒険家の学習漫画など手に取ったことはなかった。
けれど、あと何時間待つのか分からない耐久レースで、ファッション雑誌は心許ない。


咳と鼻水を啜る音が響く病院の待合室で、私は植村直己の冒険を覗くことになる。

植村直己(うえむらなおみ)
日本の冒険家であり登山家。1941年に生まれ、エベレストを含む世界の五大陸最高峰を日本人で初めて登頂。
1978年には犬ぞりで北極圏を単独横断し、極地探検家としても名を馳せた。

青年・植村直巳が登山を始めたのは、彼が大学生の頃。
当時は登山ブームで、「友達に誘われて」というのが冒険家の出発点だった。

初めての登山は彼の地元・兵庫の六甲山。
そのときの達成感をきっかけに、彼は登山にのめり込むようになる。

背が小さくよく転けるので、あだ名は「どんぐり」。抜群な登山センスはなく、むしろ最初は体力がなくて白馬岳の登山中に泡を吹いて倒れた。

そのときの悔しさが、彼の「徹底的に準備する」という姿勢につながる。


自然を舐めると痛いしっぺ返しがきた。
だからこそ、彼はトレーニングを地道に続け、周到に準備し、山へ挑む。北極圏を犬ぞりで横断するために、エスキモーと一年暮らして、北極の暮らしぶりを体に叩き込む。

その姿勢は友人曰く、「焦ったくなるほど入念に準備する男」だったそう。

だからこそ、彼は五大陸の最高峰を制覇するという偉業を成し遂げる。



⛰️五大陸最高峰の山

  1. アジア – エベレスト(8,848m / ネパール・チベット)

  2. 南米 – アコンカグア(6,961m / アルゼンチン)

  3. 北米 – マッキンリー(現デナリ)(6,190m / アメリカ・アラスカ)

  4. ヨーロッパ – エルブルス(5,642m / ロシア)

  5. アフリカ – キリマンジャロ(5,895m / タンザニア)


植村直己は1970年にエベレスト登頂を成功させ、日本人初の快挙を成し遂げた。なんと同年に五大陸最高峰をすべて登り切る。クレイジーである。

遠足の登山が苦痛でしかない私には、「なんでそこまで?」と思わざるを得ない。五大陸最高峰を登れば十分だろう。後進を育てるなり、講演活動に励むなりすればいいと思ったが、植村直己は止まらない。

真冬のマッキンリーに単独で登頂
本来、数名でチームを組んで挑む北米の最高峰を、たった一人で。


登頂を小型飛行機が確認したが、数日後、彼の消息は絶たれた。

自然が猛威を振るったと言われるが、私はむしろ植村直己の根性をマッキンリーが気に入って、連れて行ったんじゃないかと思う。

自然の中、自分の力だけで挑む登山。
自分を知り、限界を押し広げる旅。

彼はこんな言葉を残している。


「私は意志が弱い。その弱さを克服するには、自分を引き下がれない状況に追い込むことだ。」
「みんな、それぞれが、何か新しいことをやる、それはすべて冒険だと、僕は思うんです。」



時刻は16時を回っていた。
病院で待ち続けて、6時間。

まだ50人近い待ち人数に、彼の冒険の始まりをあと二度ほど読み返した。


順番が回ってきたのは、18時半。
すっかりくたびれ果てたけれど、彼の冒険譚との出会いが、小さなお年玉のようだった。



あなたの好きな偉人は誰ですか?
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茨木アヤコ|文章コンサルタント
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