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【短歌一首】 空蝉(うつせみ)は身の亡き後も年越えて幹を掴みてこの初夏に在り
空蝉(うつせみ)は
身の亡き後も
年越えて
幹を掴みて
この初夏に在り
いつも定点観測している桜の写真(6日ほど前のもの)を何の気なしに眺めていたら、幹の下の方に小さな茶褐色の突起のような見えたので、指で写真を拡大したら、何と蝉の抜け殻だった。
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毎年、夏になるとこの桜の木にはおびただしい数の蝉の抜け殻が見られる。それらが羽化して夏の蝉しぐれもけたたましい。そして秋以降、たくさんあった蝉の抜け殻もどんどん剥がれて落ちていく。 その後はあまり蝉の抜け殻を意識してみることはなくなるが、まさか去年の蝉の抜け殻が、まだ残っているとは・・・・。
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早速、抜け殻の存在を確認するために、昨日この桜を見に行った。やはり、抜け殻はしっかりと木の幹を掴んで残っている。一体、この抜け殻が木にくっついてから、どれだけの大雨や強風、そして台風が過ぎていったのか。その全てを乗り越えて今、この初夏に残っているとは。周りはすでに翌年の新緑に覆われているというのに。
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もしかしたら他にもまだ抜け殻が残っているかもしれないと、道端から注意深く観察してみると、あった、あった、こんなところにも。それは、桜の木のそばにある古い民家の木の壁。建物の真ん中辺りに抜け殻が二つ見えた。
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家の木の壁は桜の木の幹に比べると、平らでホールドしにくいように人間には思えてしまうが、二つも抜け殻が残っているとは・・・・。 風の直撃も受けそうなものだが、どんな足先、指先のホールド力なんだろう。 ボルダリングなどのクライミング競技なら圧倒的に優位。(二匹でどちらが上に登って羽化できるかを競っていたのかも。)
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蝉の抜け殻のことを「空蝉(うつせみ)」と呼ぶが、これは「現人(うつせみ)」がもともとあった言葉で、「空蝉」は当て字らしい。 いずれにしても、なんか大自然と人間界の「諸行無常」や「虚無感」が満載されている言葉だと思う。
あらためて辞書を引いてみた。
【現人(うつせみ)】
①この世に現存する人間。生存している人間。
②この世。現世。また、世間の人。世人。
【空蝉(うつせみ)】
現人に「空蝉」の字を当てた結果、平安時代以降にできた語。
①蝉の抜けがら
②転じて、蝉。
③魂がぬけた虚脱状態の身。
④源氏物語の巻名。また、その女主人公の名。
ってことは、現人=空蝉 → 人間=蝉の抜けがら、または蝉? そして空蝉は魂が抜けた虚脱状態。
う〜む、「うつせみ」といえば、子供の頃から忍者が自分の姿を消して別の物を残していく「うつせみの術」くらいしか知らんかったけど、いずれにしても深く考えさせられる言葉だ。
あの幾多の試練を乗り越えて、桜の木の幹に残っている蝉の抜け殻は、何を語っているのだろうか。蝉は土の中に7年居て、そこからようやく地上に出て二週間くらいくらい生きると、子供のころ理科で学んだ。しかし、蝉の寿命が尽きたのちに、抜け殻だけが次の初夏になってもまで残っているとは。
あの桜の下の土の中には、すでに7年前から今年の蝉の幼虫がいて、もうすぐこの夏に羽化するために登ってくる。 今年も蝉しぐれがすごいんだろうな。
猫間英介