精神疾患の哲学的解釈について
木村敏『異常の構造』(講談社学術文庫、2022)を、症例のみ読んだ。
それらの存在論的解釈は、難しいので読んでいない。
タイトルと著者名だけは中学時代から知っていて、興味はあった。
当時見たのは講談社現代新書で、1993年刊行だったようだ。
本書における「精神分裂病」という表現は現在では不適切であり、正式名称は「統合失調症」に変更されている。
そもそもタイトルにある「異常」も不適切である。
また、親が教師だと統合失調症になりやすいという記述があったが、それも留保が必要だろう。
統合失調症は内因性の病気とするのが、今の精神医学の定説のはずだ。
その病因を生育環境に求めるのは古い議論なので、2022年において何の注釈も追加せず文庫化されたのは残念だ。
文章の哲学性に魅了される木村ファンは多いと思われる。
だが、そうした哲学的解釈は、治療に役立つのかも含めて、最新の医学的見地からの検証が必要と言えよう。