墨子の思想
毛沢東は、諸子百家の一人・墨子の思想を好んだ。
おそらく、旧来の儒家思想への批判に共感したのだろう。
だが、このような中国史的文脈を越えた普遍性が、墨子の思想にはある。
とくに「兼愛」や「非攻」などのキャッチーなキーワードは、もっと日本でも知られるべきだ。
日本では老子や荘子が人気のようだが、老荘思想は捉え所が無さすぎて筆者は苦手だ。
また、孟子の性善説は「渡る世間に鬼はなし」として、荀子の性悪説は「人を見たら泥棒と思え」として誤解されている始末。
墨子の「兼愛」や「非攻」のほうが日本人には理解しやすいと思うのだが、日本で墨子ブームが起こった形跡はないし、起こりそうな気配もない。
寂しい限りだ。
ところで、墨子の音楽批判は少々のみ込みづらい。
しかし歴史上、音楽が戦争などに利用されてきたことを考えると、墨子には先見の明があったと言えよう。
さすが、墨子!
参考文献
『中国の思想 5 墨子』徳間書店、1996