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まんまるの本棚2022

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#読書

『永遠のお出かけ』益田ミリ

『永遠のお出かけ』益田ミリ

いわた書店さんの一万円選書のうちの三冊目。

特段好きな作家さんというわけではないけれど、最近益田ミリさんの作品に触れることが多い。

母親と同じ世代の方だから、価値観や考え方に自分と相違があるのはもちろんだけど(別に世代だけが要因ではないか)、文章からやさしい雰囲気が伝わってくるのは好きだ。

本書は父親の死について書かれた一冊である。

世代の話をしたけれど、この本は読むときどきの年齢によって

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『人質の朗読会』小川洋子

『人質の朗読会』小川洋子

いわた書店さんの一万円選書のうちの一冊。

表紙の子羊の瞳に惹かれ、二番目に手に取った。

南米でテロに巻き込まれた8人が自らの人生の物語を順番に語っていく物語。それらはささいな物語だけれども、ささいだからこそ、その人の人柄や人生の重みを感じさせる。

人は、案外簡単にいなくなってしまうのだとおもう。

そして、一人という個はどこまでも「個」であるとともに、人間という「全」でもあるのだともおもう。

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『こっちへお入り』平安寿子

『こっちへお入り』平安寿子

岩田書店さんの一万円選書の中の1冊。
自分では選ばないような、それでいてどこかで自分が求めていたような、そんな本たちとの出会いをくれる。

つまらない日常を重ねる平凡なOLの日常が落語と出会うことで劇的に変わっていく話。

少し前、大学院に通う主婦の方に対して「大学院は主婦のカルチャーセンターではない」という書き込みがされ、炎上したことがあったが、そもそもカルチャーセンターだって馬鹿にできない。

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『正しい女たち』千早茜

『正しい女たち』千早茜

 千早さんの本を読むのは2冊目だ。
 小説という形をとりながら、今日の女性たちの抱える問題(もっとも、女性たちが抱えさせられていると言った方が正確かもしれないが)について、まるで論文を読まされているかのように切り込んでくる。

・温室の友情

 遼子、環、麻美、恵奈の4人をめぐって進行していく。本書は群像劇のような構成になっており、彼女らはおおよそ全編にわたって登場する。
 男から見た「女の友情」

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『無敵の未来大作戦』黒崎冬子

『無敵の未来大作戦』黒崎冬子

「合言葉は~!?せえのっ!希望~!」

全3巻からなる漫画。

ハイテンポなギャグとその中に垣間見える社会への問題提起が心地よい。

少子化を解消するために、選ばれし資産家の「聖人」が一妻多夫や一夫多妻を許される近未来日本。

この作品の中では恋愛のタブーが存在しない。

複数の伴侶を持つことはもちろんのこと、性別や貧富の差、体系など、「恋愛に必要なこと」とされるありとあらゆるものを登場人物は当た

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『せいのめざめ』益田ミリ・武田砂鉄

『せいのめざめ』益田ミリ・武田砂鉄

最近、知り合った人の影響で図書館に通っている。

図書館は学校のくらいしか利用したことがなかったけど、利用してみると面白い。

街の図書館は「こんな本あるのか」と「この本がないのか」の繰り返しである。

だから、借りたい本を定めて狩りに行っていたあの頃よりも予期せぬ出会いが多くて楽しい。

今回は3冊借りた。

1冊目は、『せいのめざめ』益田ミリ・武田砂鉄(2017)。

コラムと漫画が交互に展開

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