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読了!冲方丁「十二人の死にたい子どもたち」

《粗筋》
廃病院に集まった十二人の少年少女。初対面同士の子どもたちの目的は、みんなで「安楽死」をすること。病院の一室で、すぐにそれは実行されるはずだった。しかし、十二人が集まった部屋のベッドにはすでに一人の少年が横たわっていた。彼は一体何者でなぜここにいるの?この集いの原則「全員一致」にのっとり、十二人の子どもたちは多数決を取ろうとする。俊英・冲方丁がデビュー20年目にしてはじめて書く、現代長編ミステリー!性格も価値観も環境も違う十二人がぶつけ合う、それぞれの死にたい理由。彼らが出す結論は…


《感想》※ネタバレ注意
圧倒された…
正直序盤、中盤はグダグダ状況が語られているだけのような気がして退屈していた。でも終盤の12人の子ども達が"安楽死"を選んだ理由について話し始めた時は、グダグダしてた序盤中盤があったのもあって一気に惹きつけられた。

いろんな価値観や、家族の数だけの家族のカタチ等、多様性について考えさせられる。キレイゴトかもしれんけど、俺らはしっかり話せばぶつかることもあるだろうけど、分かり合えるし、助け合えるんじゃないかなって思えた。本書の12人の子ども達がそうだったように。お互いにリスペクトし合っている様子も見ることができて心が温まりすぎた。

結局全員死ぬオチとかも予想してたけど、自分の予想の中での一番のハッピーエンドでブチ上がった。


《引用》
マイは彼の話を聞いているうちに、どっちが病気なんだっけ、と混乱してしまった。タカヒロのほうなのか。タカヒロが服従し続けなければならなかった母親のほうなのか。(P335)

ただ動けなくなるだけじゃなくて、考えることが難しくなるんだ。どんどん思考が乱れてまとまらなくなっていく。それがいつまで続くか分からない。回復のない下り坂を永遠に下っていくんだ。ここに来たのは言ってみれば贅沢がしたいと思ったからだよ。せめて考えることができるうちに、自分の意思で眠りにつきたい。この国じゃ安楽死は認めてもらえない。両親からして絶対に許してくれない。別に両親と仲が悪いわけじゃないよ。二人ともすごく良い親だと思ってるし、感謝してる。でもこれは僕の命なんだ。僕が終わりを決めたい。そういう贅沢をするために、僕はここに来たんだ。(P347)

「安楽死を実行するなら僕は止めない。単にここを出て行くだけだ。ただその前に、みんなに御礼を言いたいのと、何人かに提案をしたいと思ってるんだ。僕の携帯の番号を教えるよ。解決はできないかもしれないけど弁護士である僕の両親に相談することはできる」(P474)
(2020/12/10)

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