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#91 百鬼堂農園(32) 降り籠められてのちに

 秋雨というより驟雨なのか。秋に入っても降り籠められている時期が長かった。ハクサイの種を買ったのに、種まきのタイミングがない。

 ダイコンの葉は鳥についばまれているようだが、全体的な被害は3割くらいか。知人のダイコンは虫にやられて全滅だそう。何年も畑をやっているベテランだが、全滅は初めてとのことだ。うちの周囲の畑はネットをしっかり張っているため、鳥も虫も寄せ付けず、青々と葉を茂らせている。

 ネット界隈でそれなりに評判のいい、岡恒の剪定鋏を買う。革のケースも一緒に買った。確かにジャキジャキと気持ちよく枝が切れる。太すぎる枝は数回に分けて切る必要はあるが、ヒマワリの枝もこれで土に還りやすくなるだろう。ホームセンターのものよりやや高価だったが、いい買い物だった。大事に使おう。

いい道具はカッコいい

 晴れ間を見つけてなんとかハクサイの種をまいた。ハクサイは株間を空けるよう南東さんに言われたが、失念して詰め気味にやってしまった。タイミングをみて間引くか。無事に芽が出たらの話だけど。ぬかるんでいるため、長靴につく泥がものすごい。水だけでは洗い流せない。

 「●●は葉がこんなに大きくなって、上手に育ってるね」「●●も長いこと収穫できてるみたいだね」南東さんの解説を聞きながら、他の人の畑を勝手に見てまわる。人様の畑でも、野菜が育つのを見るのは楽しいものである。別れ際に、「タマネギを早く植えないと苗が売り切れるよ」と助言をいただいた。タマネギは越冬して半年近くはかかるはず。きちんと準備せねば。

 面倒だしゴミが出るのが嫌で、マルチ(保温、防草、除虫に効果があるとされる黒いビニール)を使ったりネットを張ったりしない。ダイコンなどが虫や鳥の被害に遭うことについて、南東さんに相談する。

 「全部やられるわけじゃないから、その分たくさん種まけばいいんじゃない?」

 なるほど。余裕たっぷり、貫禄が違う。さすがである。

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