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#81 百鬼堂農園(25)と最近よんだもの(21) 農と書物・上
ヒマワリが枯れ始めた。まだ咲いている花もいくつかあるので、はさみで切って持ち帰り、花瓶に挿してみた。いけばなについて書かれたnote記事を愛読して興味をもった影響だろうけど、切り花を持ち帰って生けるなど初めてだ。不思議な感動がある。
今回は農園日記と読書記録のコラボ。というほどたいしたもんではないけれど。通し番号がいろいろ重なるのを仕事では毛嫌いしているのだが、ここではやってしまった。
図書館には農業に関する資料が山ほどある。家庭菜園向けのライトなものも少なくないが、作物の品種別だったり、有機肥料や農薬の使い方などかなり専門的な解説書もたくさんある。農家の方たちの需要も少なくないのだろう。
図書館で借りたり、書店で眺めるなどして選考し、常時家に置いて参考にするために購入した本は2冊。
「おいしい野菜づくり入門」(加藤義松監修、西東社)
「野菜づくり、はじめます!」(荻野千佳、SBクリエイティブ)
前者はイラストが多めで、わかりやすい。後者はコミックエッセイのスタイルで、気楽に読めた。
「ダダダダ菜園記」(伊藤礼、ちくま文庫)
伊藤翁が70代にして始めた菜園について書いた、研鑽と反省と挑戦の日々の記録。白眉は、父・伊藤整の書斎で発見したという「戦時農場の設計」という印刷物にまつわる話。「監輯 農商省農政局特産課 東京都経済局農務課」と書かれているそうで、食糧供給逼迫の折、各家庭に野菜の自家生産を奨励するために作られたものらしい。狭い畑で4種類の野菜の作付けと収穫が重ならないよう組み立てられており、その精緻さに驚く。農事とは何たるか、著者の発見に胸を打たれつつ、しばし戦時を思う。
筆致は軽妙で、徹頭徹尾面白い本。やはり農とは科学であり化学であるのだ。思想であり哲学でもある。
続きます。