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2021年に詠んだ短歌まとめ

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(三年目)
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2021年6月の記事一覧

短歌連作「自分だけ取り残されたような気が」 12首

短歌連作「自分だけ取り残されたような気が」 12首

自分だけ取り残されたような気がするのは自分だけじゃないはず

自分だけなのか意外と難しい 見られる芝は皆青くする

インスタに写りの悪い自撮りなどいったいだれが上げるだろうか

自殺したあの友達は冬の朝とつぜん消えたように感じた

「体力も時間もないしガチャ回すだけ」と気になるひとことを聞く

「面白いことがないからパチンコへ行く」と気になるひとことを聞く

女優すら首を吊ったり旧友がユーチューバ

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短歌連作「沈めた鍵を見せたからだね」 10首

短歌連作「沈めた鍵を見せたからだね」 10首

無意識の海で出会った定理へとペン走らせた七年のこと

生と死のはざまに揺れる横顔は17才の紅い月蝕

羊には羊の苦難 ソテツにはソテツの苦難 星には星の

刺して笑う狂信者のど真ん中にいつも茨のような絶望

囚われた電子回路の短絡が火花散らせて温きまぼろし

偽りの回路を裡に奉る/千の扉の深い沈黙

なまぬるいミルクの夢にお邪魔して沈めた鍵を見せたからだね

渦を巻く嘘の粒子を浄化する灯台守の優し

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短歌連作「川の名を冠するカフェ」 4首

短歌連作「川の名を冠するカフェ」 4首

川の名を冠するカフェにしっとりと夏季限定のアップルサイダー

ぬくもりのある木の皿のスコーンがほろほろすぎて泣けてきそうだ

テーブルの上の交流ノートにはちいさな雨とやさしいせかい

こんな世に小さな灯りたやさずに来店を待つ静かなる意志