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"右脳型採用" 感情リクルーティングのすべて

こんにちは、採用支援サービス Saimaneを提供している、
アローリンクの蘓(いける)です。

今日は私が採用担当時代に実際に経験した採用現場での気づきと、そこから見えてきた新しい採用手法についてお話ししたいとおもいます。

(感情リクルーティングの基礎編も参考ししてください)

2年目の悩み

「また内定辞退者が出てしまった...」
採用部門を任されて2年目の私は、深いため息をつきました。
説明会の参加者数は前年比25%増加、エントリー数も10%上昇、数字だけ見ればまずまずの結果なのに、なぜか最後の最後で優秀な学生に逃げられてしまっていたのです。
気がつけば内定承諾率は前年よりも10%以上低下していました。

なぜこれほどまでにミスマッチが起こってしまうのでしょうか?

あとあと気がついたのですが、それは私たちの「採用の常識」の中に隠されていました。

なぜ、従来の採用手法は通用しなくなったのか

評価型採用プロセスの罠

皆さん、こんな質問、面接で使ってませんか?

「御社の志望動機を教えてください」
「なぜこの業界を選んだのですか?」

これらの質問には大きな落とし穴が潜んでいるんです。

面接では完璧な受け答えをする学生が、入社後わずか半年で退職。
面接での受け答えは素晴らしかったのに、なぜ...と悔しい思いを。

皆さんにも心当たりがありませんか?

実は、従来の採用手法には致命的な欠陥があることに気がつきました。
それは「評価」に重点を置きすぎるあまり、最も大切なことを見失ってしまっているということ...

数字では測れない「採用の真実」

採用担当者って、ついつい数字に目を奪われがちですよね。

エントリー数
説明会参加者数
内定承諾率
採用コスト

もちろん、これらの指標は大切です。
でも、本当に重要なのは、その向こう側にいる「人」と向き合うということなんです。

実際に私自身、会社説明会で必死に給与や福利厚生をアピールしていました。

「これだけ充実した待遇があれば、きっと学生は振り向いてくれるはず!」って。

でも、それは完全な的外れでした。

なぜか?そもそも中小企業が給与と福利厚生で戦って勝てると思っていた時点で、大きな勘違いをしていたんです。
しかしある時、すべての学生が給与や福利厚生だけを求めてるわけじゃない。

「この会社で自分が何を実現できるのか」という未来のビジョンを求めている学生も多くいるということに気がつきました。

この気づきこそが、「感情リクルーティング」という新しい採用手法を生み出すきっかけになりました。


感情リクルーティングで採用が変わる

学生が就職先を選ぶ際、左脳(=論理的な判断)右脳(=感情的な判断)の2つの基準があることを知っていますか?

左脳的判断とは「給与」「休日数」「残業時間」といった判断。

右脳的判断とは「社員の雰囲気」「価値観との一致」「成長できるか」という感情的な判断です。

最終的な決断に大きく影響するのは、この「右脳」による判断です。
ある新入社員からこんな話を聞きました。

「正直に言うと、給与は他社の方が良かったんです。でも、インターンシップで関わった先輩社員の姿に憧れて、この人たちと一緒に働きたい!というのが決め手でした」

この「感情的な判断」は企業の文化や、社員同士のつながり、あるいは直接話した社員の印象。学生たちは、こういった細かな要素から「ここで働きたいかどうか」「この人たちと一緒に成長していけるか」を直感的に判断しているんです。

学生は企業の説明会やインターンシップで得た感覚や、直接話した社員の印象を通じて、「ここで働きたいか」「この人たちと共に成長できるか」といった直感的な判断を下します。この直感こそが、学生にとって「右脳的な判断」の基礎となるのです。

例えば、説明会での社員のイキイキとした表情やエネルギッシュな雰囲気。それを見た学生は「この会社は自分を大切にしてくれそうだ」「このチームの一員として、きっと自分も成長できる」といった感情を抱きます。

「説明会で社員の方が本当に楽しそうに仕事の話をしていて。自分もここで働けば、同じように充実したキャリアを築けるんじゃないかって、すごく感じたんです」

こうした「右脳」で選ばれる会社には、共通点があります。

企業の理念や成り立ち、困難を乗り越えてきたエピソードなど、企業のストーリーを通じて学生は感情的なつながりを感じる。ストーリーが学生に「共感」や「誇り」を持たせ、「この会社の一員として一緒に物語を作りたい」という気持ちを抱く。

また、学生にとって企業文化の魅力は、インターンシップや職場見学での体験的な学びを通じてさらに強化されます。例えば、オフィスでのフレンドリーなコミュニケーション、社員同士がサポートし合う姿勢、上司が後輩を育成するために真剣に関わっている様子などを目の当たりにすることで、学生は「この場こそ自分の場所だ」と感じやすくなります。こうした具体的な体験が、感情的な選択に大きな影響を与えます。

さらに、「共感」だけでなく「感動」も大きな要素になります。例えば、採用担当者が学生の夢や悩みに真剣に耳を傾け、一緒に将来を考えてくれる。そんな経験をした学生は、「この会社なら自分を本当に大切にしてくれる」と心から感じるんです。

結局のところ、「右脳的な判断」って、私たち企業側がどれだけ学生の心を動かせるか、にかかっているんです。「ここで働くことへの誇り」や「この人たちと一緒に何かを成し遂げたい」という想いを、どれだけ芽生えさせられるか。

数字や条件以上の価値を提供し、学生の心をつかむ。
それこそが感情リクルーティングなんです。


「左脳」で選ばれる就職先

そしてもう一つの重要な判断軸、それが「左脳的な判断」。

つまり、論理や分析に基づく合理的な判断です。これは、企業の安定性、給与、福利厚生、働き方など、数値や論理で裏付けられた要素を指します。
ここで大切なポイントは、この左脳的な判断とはすべて「他人軸」なんですよ。

どういうことかというと...

例えば、「この会社は給与が高い」「休みが多い」といった情報、これって誰に聞いても同じ評価になりますよね。

つまり、他の人に相談しても、同じアドバイスが返ってくる。そういう意味で、とても比較しやすい要素なんです。だからこそ、学生たちは就活初期の段階で、こういった指標を重視します。

わかりやすいですからね。
わかりやすいからこそ、企業側もアピールします。

でも、ここが私たち中小企業にとっての悩みどころなんです。
なぜかというと...

給与や福利厚生といった「他人軸」で、中小企業が大手企業と戦うのはかなり厳しい。土俵が違いすぎますよね。

学生たちの就活初期は、かなり「理論的」です。
まずは企業のウェブサイトを見て、説明会に参加して、会社案内をチェックする。

そこで彼らが知りたいのは、こんなことです。

「この会社って安定してるのかな?」
「口コミ評価はどうだろう?」
「給与はどのくらい?」
「休みはしっかり取れるの?」

つまり、左脳的判断である数字やデータで比較できる情報を、まずは集めていくんですね。これって、就活生の誰もが通る道なんです。

しかし、先ほども言いましたが、私たちがこの「左脳的な判断」だけで勝負するのは、かなり厳しい。大手企業が持つ豊富な経営資源を上回るのは難しいですよね。

皆さんも日々、そんな現実に直面されているのではないでしょうか?

だからこそ、私たちは「右脳的な判断」で勝てる採用手法を構築しました。学生一人ひとりの「自分軸」に働きかける手法です。つまり、その学生ならではの感情や価値観に真摯に向き合い、「共感」を生み出していく。そこには中小企業でも戦える場所があります。

ここで大切なのは、この共感を「偶然」ではなく、「意図的」に作り出していくこと。それこそが「感情リクルーティング」の本質なんです。


共感を生み出す3つの場面

感情リクルーティングでは、学生の「感情」に訴えかける3つの重要な場面があります。

1. インターンシップ:体験による共感

「どうすればインターンシップで深い共感を生めるのでしょうか?」この疑問、皆さんもお持ちではないでしょうか。私も最初は「とにかく業務を体験してもらえばいいのかな」と考えていました。しかし、それだけでは不十分なんです。大切なのは、学生に「この会社で働く自分」をリアルにイメージしてもらうこと。

具体的には、自己理解のワークショップや、実際の社員とチームを組んでリアルな課題に取り組むプロジェクト体験を取り入れてみてください。これにより、学生は会社との強いつながりを感じることができます。特に効果的なのは、自分の将来と会社のビジョンを重ね合わせられるような活動です。

インターンシップ中に自身の「成長シナリオ」を描かせたり、先輩社員との「キャリア面談」を実施することで、学生は「この会社で自分がどう成長できるのか」を具体的にイメージできます。さらに、インターンシップ後に継続的なフォローアップを行うことで、関係を深め、内定承諾率を高めることが可能です。

2. 会社説明会:物語で心を動かす
数字やデータだけでは、学生の心に響かないと気づいた経験はありませんか?私も同じ壁にぶつかりました。そこで、説明会での会社概要の説明を簡略化し、代わりに想いや実体験を共有する時間を増やしてみたんです。すると、学生たちの目の輝きが全然違うんです!説明会後の応募率は、なんと1.5倍にまで上がりました。

効果的な説明会を実現するためには、「物語」を通じて学生の感情に訴えかけることが重要です。例えば、創業の苦労や理念にまつわるストーリー、制度ができた背景や想い、若手社員が経験した挫折と成長の体験などを共有してみてください。これにより、企業の「真実の姿」を知った学生は、「この企業と一緒に成長したい」という気持ちを抱き、強い印象を受けるはずです。

さらに、グループ選考では学生との双方向コミュニケーションを重視しましょう。学生に「自分が将来この会社でどのような役割を果たしたいか」をディスカッションや発表で表現してもらったり、グループワークで実務に近い課題に取り組ませることで、彼らが企業の一員としての未来を描ける環境を提供できます。これにより、学生の心に響く説明会や選考会が実現します。

3. 面接:対話から生まれる化学反応
「面接って、結局何を見ればいいんでしょうか?」こんな疑問を抱いたことはありませんか?実は、この質問自体に大きな落とし穴があります。なぜなら、面接は単なる「評価」の場ではないからです。面接は「評価」であると同時に「共感」を生む場でもあるんです。

私たちは、学生の適性を見極めるだけでなく、「面談」として彼らと向き合うことで、動機形成を促す絶好の機会と考えています。特に最終面接に近づくにつれて、評価を超えて、学生の意思を固めるための「共感の場」としての役割が重要になります。

特に最終面接では、評価以上に学生を引きつけ、強い意志を形成させることが求められます。このプロセスを通じて、学生たちは「自分の成長を支えてくれる会社」としての魅力を感じ、企業との心理的な距離を縮めることができるのです。


採用マーケティングを仕組み化する

「感情リクルーティング」って、なんだか感覚的な話に聞こえませんか?でも実は、しっかりとした"科学"があるんです。それが「採用マーケティング」です。

感情を動かす「採用マーケティング」5つのフェーズ

学生の感情は段階的に深まります。このプロセスを「認知」「興味・関心」「理解」「共感・ファン化」「訴求」の5つのステップで捉え、採用活動を組み立てることで、学生の心をしっかりとつかむことができます。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか?それぞれのフェーズについて、実践的なポイントをお話ししていきます。


フェーズ1:認知 - 存在を知ってもらう
まずは、学生に企業の存在を知ってもらいます。SNSや採用サイト、合同説明会などで名前を見てもらうことが大切です。

「面白そう」「気になる」と思わせる内容を発信しましょう。社員の日常やオフィスの様子をSNSでシェアすると効果的です。

ポイント:すべてを伝える必要はありません

フェーズ2:興味・関心 - 興味を引く
興味を持ってもらうためには、学生が「もっと知りたい!」と思うような情報提供が欠かせません。社員のインタビュー動画や、企業の文化を垣間見れる短編映像をSNSに掲載してみましょう。

「社員と一日過ごす」イベントやオンラインQ&Aセッションを開催することで、学生が企業についての理解を深められる機会を提供することも効果的です。

ポイント:出来るだけナチュラルに

フェーズ3:理解 - 深い情報提供
学生が企業の詳細を理解する段階では、具体的なキャリアパスや実際の業務内容、働き方に関する情報を提供します。オープンカンパニーやインターンシップ、さらに企業の価値観や将来のビジョンを共有するワークショップなどが有効です。

このフェーズでの鍵は「透明性」です。

例えば、社員がどのようなキャリアを築いてきたのか、実際の事例を通じて示してください。学生は自分の将来像をより明確に描くことができます。また、入社後の成長支援プログラム(メンター制度やトレーニングなど)についても具体的に説明し、学生に安心感を与えることが重要です。

ポイント:出来るだけオープンに

フェーズ4:共感・ファン化 - 感情的なつながりを築く
感情的なつながりを築くためには、企業との「共感」を生むことが大切です。学生が企業のビジョンや価値観に共感できるよう、細やかなメッセージ対応を心がけましょう。インターンシップや面談の場での深い対話が求められます。

特に面談では自社への動機付けだけでなく、学生自身に関心をもち就活全般のアドバイスをする立場をとってみてください。

また、学生が自分を「企業の一員」と感じられるような体験も効果的です。例えば、インターンシップ中に重要な役割を任せ、チームの中で自分の成果が反映されるプロジェクトに取り組ませると、彼らは自分の存在意義を感じ、企業への愛着が生まれます。

小さなコミュニケーションを重ね、深い面談を実施しましょう。

ポイント:回数×深さ

フェーズ5:訴求 - 最終的な決断を促す
最後に、学生に「ここで自分の未来を築きたい」と思わせることが重要です。内定直前や内定直後にキャリアデザインや、具体的な成長プランを描かせる面談を実施し、学生が自分の将来の姿を明確にイメージできるようにします。

例えば、最終選考時に「3年後の自分」をテーマに具体的なキャリアプランを描いてもらい、人事担当者や部署の上司に発表する場を設けます。そうすることで、学生は自分のビジョンと会社のビジョンをより具体的に共有できます。

また、最終面接では、本人の価値観に寄り添ったキャリアイメージの提供や、入社後の成長イメージを持たせることで、学生にとっての「入社後の道筋」が明確になります。

ポイント:互いのビジョンを共有する


採用担当者へのメッセージ

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
私がこの記事を書こうと思ったきっかけは、ある学生の何気ない一言でした。

「内定はもらえたけど、なぜかこの会社で働きたいとは思えなかったんです...」

その言葉に、ハッとさせられました。企業がどれだけ「優秀な人材」と評価しても、人の心をつかめなければ、本当の意味での採用の成功とは言えないのだと気づかされたのです。

左脳的判断。

確かに重要な要素です。でも、どれだけ条件を満たしても、それだけでは人は幸せになれない。なぜなら、本当に大切なのは「自分の人生をどう生きるのか、一緒にどんな未来を描けるのか?」ということだからです。

私たち採用担当者にできることは、実はとてもシンプルです。学生の想いに耳を傾け、真剣に向き合い、一緒に未来を描いていくこと。

「でも、それって時間がかかりそう...」

そう思われるかもしれません。私も最初はそう感じていました。確かにその通りです。でも、まずは一人の学生の話に真摯に耳を傾けてみたんです。すると、不思議なことが起きました。その学生の目が輝き始め、「この会社で、自分の夢を叶えたい」と言ってくれたのです。

私たちの仕事って、本当に素晴らしいと思いませんか?
学生と出会い、その人生の大切な選択に寄り添い、企業の未来を共に創っていく。

この「感情リクルーティング」は、決して難しいテクニックではありません。それは、私たち採用担当者が学生と「本当のつながり」を築くための、ごく自然なアプローチなのです。

よく学生に尋ねる質問があります。

「なぜ、この会社を選んだんですか?」その答えは、意外とシンプルなんです。

「この人たちと一緒に働きたいと思ったから」

そう、最後に人の心を動かすのは「心」なんです。

もちろん、給与や制度も大切です。でも、それ以上に大切なのは、その人が描く「未来への期待」なのではないでしょうか。

私たちも日々の採用活動で、悩み、試行錯誤を繰り返しています。でも、私は信じています。

真摯に向き合い、誠実にコミュニケーションを重ね、本気で共感する。このシンプルな積み重ねが、必ず実を結ぶと。

明日から、少しずつでも構いません。学生の想いに耳を傾け、共に未来を描く採用活動を始めてみませんか?きっと、素晴らしい変化が待っているはずです。

そして、いつか採用の現場で、「うちも感情リクルーティング、始めてみたんです!」という嬉しい報告を聞ける日を、心から楽しみにしています。

共に、学生の夢を応援し、企業の未来を創っていきましょう。今日もどこかで、素晴らしい出会いが待っているはずです。

株式会社アローリンク 蘓伸太郎


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