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右脳型の会社説明会 ① 魅力を伝える方程式

こんにちは、採用支援サービス Saimaneを提供している、
アローリンクの蘓(いける)です。

私が採用担当をしていた頃、会社説明会がまったくうまくいかず、失敗と試行錯誤を繰り返していました。そんな中、ある出来事をきっかけに、一つの「方程式」を見つけることができました。

今日は、この「会社説明会の方程式」を同じ悩みを抱える採用担当者のみなさんにお伝えしたいと思います。

(こちら↓の記事に説明会設計の準備についても書いてます)

誰も教えてくれない

「採用の正解って、誰も教えてくれないんだよな...」

採用担当2年目の春、私は深いため息をつきながら、パワポと向き合っていました。

説明会の参加者は少しずつ集まるようになったものの、選考の参加には繋がらない。
内定を出しても、承諾率は低迷。辞退者は続出。
「これでいいのかな...」という不安と戦いながらの日々でした。

きっとみなさんも私と似たような経験をされたことがあるのではないでしょうか?

☑️社内に相談できる先輩がいない
☑️他社の採用担当とも情報交換ができない
☑️セミナーに参加しても具体的な方法は教えてもらえない

「もっと会社の良さを伝えたいのに...」
「どんな説明をしたらいいんだろう...」

悩みを抱えながら、私は採用関連の本を読みあさり、媒体主催のセミナーにも参加して、手探りの日々を過ごしていました。

そんなある日、学生からこんなひと言をもらいました。

「制度は理解できたけれど、会社の魅力は感じにくい」

なるほど…。

福利厚生、制度、待遇...これらの情報は確かに重要。
でも、それだけでは学生の心は動かせない。

この言葉をきっかけに、私は説明会を根本から考え直すことを決意しました。

そして試行錯誤の末「会社説明会の方程式」と呼べるものを見つけたのです。

その結果、今では説明会参加者の95%が選考に進むようになり、内定承諾率は以前の3倍になりました。

そして何より、学生からの「参加してよかったです」という言葉が、私の大きな励みになっています。

この記事では、私自身の失敗と挑戦から学んだ実践的なアプローチを赤裸々にお伝えします。


こんな方に読んでいただきたい

□ 「採用の正解」を一人で模索している方
□ 説明会でのプレゼンに手応えを感じられない方
□ 内定承諾率の改善に悩んでいる方
□ 他社との差別化に課題を感じている方
□ より効果的な説明会の進め方を知りたい方

一人の採用担当者として、同じ悩みを持つ皆さんと一緒に、より良い採用活動を創っていければと思います。

それでは、いってみましょう!

目次

1. 感動を動かすストーリー
2. ビジョンを抽象から具体へ
3. 「会社」と「自分の未来」を繋げる
4. 「背景」を語る
5. 「制度説明」の方程式

1. 感情を動かすストーリー

「年間休日は125日です」
「福利厚生が充実しています」
「インセンティブがあります」

当時の私はこんな説明を延々と続けていました。
資料には企業情報、実績、数値データ、制度説明...。
定量的に見せて、納得感を与えることが大事と考えていたので、とにかく「正確な情報」を伝えることに必死だったのです。

給与や制度を伝えれば伝わると思っていたけど、まったく会社の魅力が伝わらなくなっていた。

私は大きな勘違いをしていたのです。

転機となった質問

ある日、先輩からなにげない質問を受けました。

「なんでこの会社を選んだの?」

「え?それは...」

「給与が良かったから?休日が多かったから?」

「いいえ...。実は、この会社で働く先輩の熱意に感動して...」

その瞬間、私は気づいたのです。
私自身、給与や福利厚生だけで入社を決めたわけではなかった。
むしろ、内定をもらっていた会社の中にはもっと良い条件の会社もありました。
私にとって、そこは重要ではなかったと言ってもいいかもしれません。

なのに、なぜ説明会では数字ばかりを並べていたのだろう?

感情を動かすストーリー

そこで、説明会の構成を「左脳型説明会」から「右脳型説明会」に大転換しました。
具体的には以下のような構成にしました。

Before:左脳型の説明会
☑️会社概要の詳細な数字や制度説明
☑️市場データや業績推移の説明
☑️一方的な質疑応答

After:右脳型の説明会
☑️共感を呼ぶエピソードの紹介
☑️若手社員の成長ストーリー
☑️対話的な質疑応答

例えば、事業の説明では若手社員が挑戦し成長したエピソードを取り入れ、学生が自分の将来をイメージしやすくしました。

Before
「◯◯事業の売上は前年比150%成長、市場規模は〇〇億円...業界シェアは...」

After
「入社2年目の田中さんは、あるお客様の『こんなサービスがあったら』という何気ない一言からサービスのアイデアを思いつきました。最初は不安だらけでしたが...」


2. ビジョンを抽象から具体へ

「弊社は『未来の当たり前を創造する』ことを目指しています」

このようなビジョンの説明してませんか?

確かに言葉だけ並べるとビジョンはかっこよく見えるかもしれません。
しかし、それだけでは学生の心には響かないのです。

では、どうすれば抽象的なビジョンを、具体的な仕事の魅力に変換できるのでしょうか?

効果的なビジョン説明の例

私は、ビジョン説明にもこのようにストーリーを語るようにしました。

「10年前、スマートフォンが普及し始めた頃。多くの人が『そんなの必要ない』と言っていました。でも、私たちは『これが当たり前になる』と確信していました。

実際、現在では皆さんの生活に欠かせないものになっていますよね。

では、10年後の『当たり前』は何でしょう?

私たちがちょっと先の未来を創造し提案する。それが私達の目指す『未来の当たり前を創造する』という仕事です」

アプローチのポイントは
1. イメージしやすい具体例から入る
2. 身近な経験と結びつける
3. 未来への想像を促す

ビジョンを具体化する3つのステップ

Step1:現在の「当たり前」を示す
Before :社会に貢献しています
After:スマホ決済が当たり前になった今、次は...

Step2:自社の取り組みを説明
Before:革新的な製品を開発します
After:子育て世代の○○という課題を解決し、利用者が前年比300%に

Step3:個人の貢献可能性を示す
Before:やりがいのある仕事です
After:入社2年目の山田さんは、この製品の核となる機能を開発しました


3. 「会社」と「自分の未来」を繋げる

「御社で働くと、具体的にどんな成長ができるのですか?」

これは、説明会でよく受ける質問ではないでしょうか。

この問いかけの裏側には、

「この会社で、自分は成長できるだろうか?」
「5年後、10年後の自分をイメージできるだろうか?」

といった学生たちの不安が隠されています。

「充実した研修制度があります」
「様々なキャリアパスを用意しています」

私たち採用担当者は、往々にしてこのように答えがちです。

しかし、こうした一般的な回答では、学生の不安は解消されません。

なぜなら、彼らが求めているのは「未来の自分」像だからです。

未来の成長ストーリー

「入社1年目の私は、最初の商談で大きな失敗をしました。提案が上手くいかず、落ち込む日々が続きました。でも、その失敗が大きな転機になったんです。

先輩と一緒に失敗の原因を分析し、提案の組み立て方を一から見直しました。3ヶ月後、同じ企業に別の角度で新しい提案を実施。

無事成約に至り、今でもその企業とは取引が続いています。さらに、企業の実績は前年比180%に成長しました」

このように、担当者や先輩社員の等身大の成長ストーリーを伝えることで、学生は自分の未来をより具体的にイメージできます。

成長ストーリーのポイント

- 結果ではなくストーリー
- 課題→挑戦→成長
- 具体的な数字を交える
- 等身大のエピソードを入れる

例1.
Before:若手から活躍できます
After:入社2年目で1000万円の案件を担当。プレゼン当日大きな失敗も経験しながら、今では...企業の紹介をもらい

例2.
Before:若手から様々な経験ができます
After:3年目で店舗責任を任されパート採用から集客施策まで任されされています。最初は不安でいっぱいでしたが、、

例3.
Before:手厚いサポート体制があります
After:毎週の1on1で上司からフィードバックを受けながら、具体的な改善を...


4. 「背景」を語る。

当時の説明会資料には、びっしりと数字が並んでいました。

- 育休取得率:100%
- 年間休日:125日
- 平均残業時間:月10時間
- 有給取得率:85%
- 福利厚生の種類:20種以上

実は私は説明会の資料を見て密かに自信を持っていました。

「これだけ充実した制度があれば、きっと学生も興味を持ってくれるはず」

しかし、現実は違いました。

制度説明のスライドに移った瞬間、会場の空気が重くなっていきます。
学生たちの視線は下を向き、メモを取る手も止まる。
質疑応答の場面では、当てて欲しくないと言わんばかりに誰も目を合わせてくれない。

「なぜだろう?これだけ良い条件を提示しているのに...」

そんなとき、ある学生から痛烈な一言をもらいました。

「正直、どの会社も同じような数字を並べるので、結局何が違うのか分からないんです」

その言葉で、やっと気づいたのです。

左脳に働きかける情報(数字、データ、制度の詳細)ばかりを提示していた。

でも、人の心を動かすのは、右脳に働きかける要素(物語、感情、共感)なのだと。

そこから私は経営陣にインタビューをおこない、それぞれの制度の背景を知りにいきました。

福利厚生ひとつ取っても経営陣の想いを乗せて語れるように、もちろん背景がない制度もありましたが、そこは会社のビジョンや性格から仮説を立てて背景を語れる準備をしました。

すると参加学生の表情が少しずつ変わり始めましたのです。


5.制度説明の方程式

そして試行錯誤の末、私は一つの方程式にたどり着きました

共感を呼ぶ制度説明 = ストーリー(Story) + 未来展望(Vision) + 自分ごと(Personal)

この方程式は、採用担当者が学生に対して共感を引き出し、関心を高めるために効果的です。右脳的な感情にアプローチしながら、会社の制度をより具体的かつ魅力的に伝えることができます。

制度説明の3要素

制度説明の方程式は、以下の3要素で構成されます:

ストーリー(Story):制度の背景や導入に至ったストーリーを伝える

☑️制度がどのようにして生まれたのか、そのきっかけや経緯
☑️具体的な課題やニーズから着想されたエピソード
☑️制度の誕生に関する感動的または共感できる話

未来展望(Vision):この制度が生む未来の影響や可能性

☑️制度を利用した結果、社員や会社にどのような未来が描けるか
☑️社員の成長やキャリアパスに与える影響
☑️制度が組織全体や社会に与えるポジティブな波及効果

自分ごと(Personal):自身の未来にどのような影響を与えるか

☑️自分自身と企業にとってどのように有益であるかを示す
☑️社員の具体的なエピソードを通じて自分ごととして考えられる
☑️自分自身の未来をイメージしやすいように伝える


具体的な展開例

この方程式を使うと制度説明はこう変わります。

<Before>
当社の育休制度は最長2年間取得可能です。取得率は100%、復帰率は95%以上となっています

<After>

ストーリー(Story)
育児と仕事の両立に対する社員の不安を解消するために、社員の声を反映させながら制度を作り上げました。

未来展望(Vision)
この制度の利用者の95%が復帰し、そのうちの60%が3年以内に管理職に昇進しています。また、この制度を通じて、育児と仕事の両立を成功させた社員たちが次世代のワークライフバランスのロールモデルとなり、職場全体にポジティブな影響を与えています。

自分ごと(Personal)
例えば、あなたも将来、育児をしながら仕事を続けたいと考えたとき、この制度は大きな支えとなるでしょう。Aさんは育休を取得する際、職場からの温かい応援を受け、自分と家族の時間を大切にできたと感じています。また、復帰後も仲間のサポートを受けながら柔軟な働き方ができています。

方程式活用のポイント

ストーリー(Story)の語り方

☑️制度導入のきっかけとなった具体的な課題を示す
☑️経営陣や社員の実際のエピソードや想いを取り入れる
☑️誰もが共感できるストーリーを添える

未来展望(Vision)の示し方

☑️制度が社員のキャリアや生活に与えた影響を具体的に示す
☑️意外性のある効果や将来的なポジティブな影響にも触れる
☑️組織全体や社会への波及効果を強調する

自分ごと(Personal)の伝え方

☑️自分にとっての価値を感じさせる
☑️自分にどう役立つかをイメージさせる
☑️社員の体験を通じて、自分に置き換えて考えやすくする


まとめ

1.感情を動かすストーリーの重要性
数字やデータだけでは会社の魅力は伝わらず、右脳的なストーリーが必要。
2.ビジョンを具体化する方法
抽象的なビジョンから具体的なエピソードや身近な例で説明し、自分の未来をイメージしやすくする。
3.「会社」と「自分の未来」を繋げる
社員の成長ストーリーを共有することで、自分の成長可能性を感じ取れるようにする。
4.背景を語ることの重要性
制度や数字の裏にあるストーリーを伝えることで、共感を得る。
5.制度説明の方程式
「ストーリー+未来展望+自分ごと」というアプローチで、制度説明をより共感的で魅力的に。

新しい採用のカタチへ

「御社の説明会は他社とは違いますね」

説明会後、ある学生からそんな言葉をもらいました。

私は一瞬ドキッとしましたが

「他の会社の説明会では、ずっと数字の話ばかりで。でも今日は、御社で働く人たちの想いや、仕事に向き合う姿勢が伝わってきて...すごく印象に残りました」

彼女のその言葉を聞いて、これまでの試行錯誤が報われた気がしました。

独学では見つからなかった答え

振り返れば、ずいぶん遠回りをしました。

採用の成功事例は、どの企業も外には出してくれません。
大手媒体の担当者には広告の露出強化を勧められ、セミナーで学べるのは表面的なことばかり。

結局のところ、採用に方程式はないのかもしれません。

でも、「より良い方法」は確実に存在する。
そう信じて私は、数々の失敗を重ねながら学んできました。

変わりゆく採用市場

モノが溢れる時代。
採用市場は大きく変化しています。

左脳型アプローチ(数値、条件、制度説明)だけでは、学生の心を動かすことはできないのかもません。

必要なのは、右脳(感情)に働きかけるアプローチ。

感情に響く物語と、論理的な裏付けの、絶妙なバランス。
それこそが、これからの採用成功の鍵となるはずです。

共に創る、新しい採用のカタチ

この記事で紹介した方法は、あくまでも私の経験した一つの方法です。

大切なのは、この考え方をベースに、御社ならではの魅力を伝える方法を見つけること。

そのお手伝いができればと思い、現在は採用コンサルタントとして、多くの企業様の採用支援に携わらせていただいています。

会社説明会の組み立て方、若手社員の声の引き出し方、制度説明の効果的な伝え方...。

もし、この記事を読んで「もっと具体的に知りたい」と思われた方、「自社の採用にも活かせないか」と考えられた方は、ぜひ一度ご相談ください。

採用のやり方は企業の数だけあると思っています。

あなたの会社を理解してもらえる学生に、
あなたの会社ならではの魅力を、
心に響く伝え方で。

一緒に創っていきましょう!

次回予告
具体的に感情リクルーティングを用いた会社説明会構築の話しをしたいと思います!お楽しみに!!

株式会社アローリンク 蘓伸太郎


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