採用広報を始める前に考えること【設計編】〜採用オウンドメディア運用のはじめに考える15項目〜
企業活動の中で採用広報・採用オウンドメディア位置付けを考える
こんにちは。道場(どうじょう)です。
今日は、採用広報をゼロベースから始めようとする時に、何を考えておくことが大切なのか、戦略設計面のお話をしようと思います。採用広報はたしかに、公式ブログを開設すれば簡単にできるものではありますが、以前の記事の中でもお伝えしたように、「とりあえず、他の企業もやってるから…」という流行りだけで開始しても長く続かないことが多いです。
中長期的に続けることで、潜在層へのアプローチで中長期的な効果を狙いつつ、短期的には現在の母集団形成チャネル(人材紹介や求人広告、その他募集手段)などの顕在層への採用選考時のエンゲージメントを高めることが主な運用の目的ではありますが、企業の公式の発信である以上、企業ブランディングにも影響するのが採用広報活動です。場当たり的な運用によって、企業ブランドを毀損したり、訴求意図が定まってないが故に「結局、どんな会社なのかよくわからない…」となっては、本末転倒ですよね。
企業の中での運用の位置付けを整理し、運用目的と運用計画を最初に立てておくことで、他部署を巻き込んで複数人で運用をする時や後任の方に引き継ぐ時の基本ガイドラインにもなります。しっかりと取り組む前に検討しておくことで、継続的かつ効果的な運用の認識合わせと仕組み作りを目指したいものですね。
今回は、まず採用広報を始めるにあたって主軸となっている「採用オウンドメディア」に取り組む際、何から考えていけば良いのか、企画・設計面のお話をしようと思います。これは、私が企業様の採用オウンドメディア構築・導入支援の際に初期戦略段階で検討している内容・流れですので、異論もあるかもしれませんが、その点はご容赦くださいませ。
採用オウンドメディア運用のはじめに考える15項目
一覧にすると下記のようなイメージです。(お時間のない方は、こちらの項目だけでもご参考ください)
(戦略設計)企業活動と採用オウンドメディアの位置付けの整理
まず、企業活動とどのようにリンクさせた活動にするのか、企業活動全体の視点から考えてみることが大切です。暗黙知的な理解がある場合でも、社内の関係者と認識を合わせるためにも、整理しておくと採用オウンドメディアの取り組みの意義が明確になり、社内外の協力者・サポーターも得られやすいと思います。
【1】や【2】は、企業の中期経営計画や事業計画の中で、人事戦略に関わる部分を再確認するという意味合いです。採用オウンドメディアの運用は、あくまで上流の戦略からの一つの戦術であり、手段です。運用することだけが目的化することを防ぎ、企業として訴求意図をもったコンテンツの展開をするためにも、把握しておくことが大切ですよね。もっと深いところまでたどると、企業のバリュー・価値観を抑えることも重要です。
【3】【4】は、人事戦略の中で様々な施策が動いていると思いますが、採用オウンドメディアに取り組むことによって、現在の施策と合わせてどんな効果を狙うのか、相乗効果や統廃合なども含めて大きな絵を描いたものを整理する意味合いです。採用オウンドメディアの実施目的や与える効果イメージを人事施策全体の中の”点”ではなく、”線”や”面”で捉える、そして、また、エンゲージメント向上は、アウターだけではなくインナー向けの効果を狙うということもあり得ますよね。
(リサーチ)コンテンツを届けるターゲットの設定、リサーチ
企業の中での戦略イメージが固まってきたら、次は具体的に「誰に」「どんな内容を届けるのか」といったコンテンツに関わるイメージを固めていきます。ここでも、いきなり「ウケるコンテンツは何か?」とコンテンツありきで検討するのではなく、企業のブランドイメージ訴求の観点から、コンテンツを通じて、どんな人たちに、何を感じてもらいたいのか、知ってもらいたいのか、理解してもらいたいのか、といったポイントを整理しておくことが大切ですね。
上記のフェーズは一言で言うと、「ペルソナイメージを作りましょう」ということです。採用オウンドメディアに限らずですが、万人にウケる必要はありません。逆に、それを求めてしまうと、本当に届けたい人たちに刺さる情報を発信できなくなってしまいます。
まずは、ユーザー側の視点を想像してみて、自分たちがリーチをしたいと思っている人たちが、どのような生活をし、どのような情報に触れ、どのような情報を知りたいと思っているかなど、ターゲットの志向や価値観を知ることから始めると良いと思います。
そのイメージができてから、はじめて、「じゃあ、その人たちに自社が届けられる情報価値、興味を持ってもらえそうな内容ってなんだろう?」という自社の魅力探しをしていきます。最初から自社の魅力探しをするケースもあると思いますが、同じファクトであっても、ターゲットによって魅力の切り出し方、見せ方は異なるはずです。
これまでの経験上、「誰に」が無い状態で「自社の魅力ってなんだろう?」という漠然とした探し方をすると、逆に発想が散漫となるため、魅力の原石を発見できないことが多く、「やっぱり自社には魅力なんて無いんだ…」と、逆にモチベーションを下げることもありました。まずは、志向や価値観のイメージを絞ってアイデアを検討しましょう。
※USPとは、Unique Selling Propositionの略で、「自社の独自の売り」のことです。採用活動においては、他社と差別化できる自社のセールスポイントのことですが、ターゲットイメージによって訴求する文脈(コンテキスト)は変わります。
(企画)採用活動全体の最適化とコンテンツの役割の検討
自社の戦略理解、ターゲットイメージの理解までできたら、いよいよ採用オウンドメディアのコンテンツの企画です。
冒頭にお伝えした通り、採用オウンドメディアは、中長期的に続けることで、潜在層へのアプローチで中長期的な効果を狙いつつ、短期的には現在の母集団形成チャネル(人材紹介や求人広告、その他募集手段)などの顕在層への採用選考時のエンゲージメントを高めることが主な運用の目的です。
ですので、短期的に効果を上げようと思った場合は、「採用選考プロセス」を分解し、「現在の流れの中でどこに課題があるのか?その理由は何なのか?」をしっかりと把握しておくことが大切です。
例えば、本来は歩留まってほしい候補者が、どこかのタイミングで離脱をしているのであれば、その要因を分析し、魅力付け要素として不足をしていた内容を把握する。その魅力付けが不足をしていたものをコンテンツに反映して届けることで、歩留まりの改善が見込めます。
採用選考プロセスとコンテンツマップを重ね合わせて、一つの表にして管理しておくと、どのタイミングで、どのコンテンツを候補者に届けるのか(コンテンツのURLを届けるなど)を戦略的に可視化でき、採用プロセスの中で企業主導で候補者への魅力付けプロセスをコントロールできますね。コンテンツによる効果性は、動かしてみないと分からないところもあるので、運用しながら、効果検証し、改善・アップデートをしていくのが良いと思います。
(メディア構築)採用オウンドメディアのコンセプト・デザイン・運用体制の検討
この辺は構築、デザイン、運用面の検討事項です。採用オウンドメディアを作ることと共に、「届けること」「続けること」を予め考えておくとスムーズだと思います。
特に中長期な成果イメージである中長期的に続けることで、潜在層へのアプローチを狙う場合、SNSなどで、自分たちで流入チャネルを育てていくことは武器になりますので、採用オウンドメディアの運用時に一緒にはじめることで、SNSの特長を最大限活かし、拡散効果を高めていけると良いですね。
最後まで、ご覧いただき、ありがとうございました!具体的なコンテンツ企画などの”実践編”もお届けしておりますので、よろしければ、ご覧ください。