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組織カルチャーの種をまく、人事手当施策の考え方
人事手当施策を組織のカルチャー形成につなげよう
先日、支援先のクライアント企業の人事の方々とお話ししていた時に「人事制度の中でスポットで支援できる施策を検討したい」という話になりました。
等級や職務要件の定義、給与や評価などの人事制度のフルリニューアルには思想の検討から設計・構築まで一定の検討期間を要しますので、そのつなぎの間に従業員に還元できるものがないか?というスピーディーに短期でできる取り組みとして、どのようなことが施策実現できるか?というのが検討のポイントです。
その中で実現できそうなものとしてアイデアが上がったのが、表彰・インセンティブなどの一定期間の特筆すべきパフォーマンスに対して報いるスポット的なもの。そして、自己研鑽意欲の高い人に対して書籍購入などの金銭的支援を行うもの。また、対面接客シーンでは、制服を支給しているため、制服の支給は従来からも行なっていますが、その維持・管理を適切に行うためのクリーニング代を支援するもの。この3つが検討に上がりました。
いずれも、よくある金銭的支援であり「表彰制度」「インセンティブ制度」「図書購入支援手当」「クリーニング手当」などと言われているものだと思います。
ここで、人事としての企画力が試されるというか、腕の見せどころは、単純に手当を作るだけではなく、手当を活用して組織のカルチャー形成や組織活性化につなげる発想までに昇華させたものにできるか?という点です。
KPIには企業のカラーがにじみ出るよね
例えば、上記の「表彰制度」「インセンティブ制度」であれば、もちろん会社の事業業績へのインパクトが主軸になりますので、予算というKGI達成も大切ですが、それだけではなく、そのプロセス上で企業として大切にしているKPI(中間指標)なども組み入れることで、予算達成という明確なゴールだけではなく、やり方(予算達成に向けた行動・バリュー面)に対しても表現をして、それを賞賛することができると思います。
KPIに関しては、その設定項目そのものに企業としてのカラーがめっちゃ出るものです。もちろん予算達成した人も賞賛したいのですが、仮にやり方が企業のカラーと合わなかった場合は、短期的には報いても、職務等級を上げてマネジメントを担うなどの人材になるのは難しいケースがありますよね(西郷隆盛さんの言葉で有名な「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」のように、短期的には禄(インセンティブや賞与)を与えたとしても、地位までは与えにくいので)。
ですので、ここで大切なのは、表彰やインセンティブとして支給するKPIの設定です。新規件数だけではなく、顧客満足度やリピート件数、クチコミなど企業によって何を大切にしたいかはさまざまですし、その時の事業方針によっても変わってくるかもしれませんが、明確に発信・表現することで、事業活動の中でどのようなやり方が是とされるのか?が日々の活動に落ちてくるのではないかと思います。
「感情報酬」が人事施策を一気にエモくする
ちなみに、表彰をするならぜひ盛大に賞賛をしてほしいし、スポットライトを浴びてもらいたい。インセンティブの金額といった金銭報酬ももちろん大切ですが、それよりも大切なのは、頑張りを認めたり、達成感を味わってもらったり、時には自尊心を満たしてあげたりといった感情をくすぐり、「感情報酬」をできるだけ満たしてあげること。
インセンティブといった金銭報酬は一過性の麻薬みたいなものですが、そこに紐づく感情報酬は、ずっと体験の記憶として残り続けるものです。
さらには、表彰者が実践してきた取り組みを公開して、お手本のノウハウ発信にまでつなげられれば理想ですよね。「この人と同じように、私も明日からやってみよう!」と思ってもらえれば、どんどん学びあう組織になります。「頑張りが認められて嬉しい!」「受賞できなかった、悔しい!」「次こそは!」などと感情の揺れ動く仕事にこそ、その結果はどうあれ、人はやりがいを感じるものではないでしょうか。
表彰制度・インセンティブ制度を単に予算達成者だけを表彰していてはもったいないというのは、上記のような理由からです。人事制度全てに共通することですが、経営メッセージとして「どんな頑張りを評価するのか?賞賛するのか?」という発信が、組織のカルチャーを作っていくのではないかと考えています。
社内ライブラリーによる共通言語化を
その他にも、「書籍購入支援」なら、よくあるのは、業務に関係する書籍については申請の上で上長承認で会社から全額支援するというものだと思います。もちろん、これでもOKだと思いますが、組織のカルチャー形成の視点でもう一歩踏み込むなら「社内ライブラリー」まで昇華させられると理想だと思います。
購入した書籍は、もちろん本人の所有物で問題ないのですが、誰でもがその人から借りれるように可視化して、図書館のように運用するなどできれば、「その本貸して!」「読んでみて、どうだった?」などのコミュニケーションが生まれます。また、書籍に限らずではありますが、共通のインプットによって、脳内の前提が揃うため余計な説明や定義をショートカットでき、コミュニケーションスピードが格段に上がるという効果もあります。
従業員個人の自助努力には頼らないように
制服の「クリーニング手当」なら、支給している制服をしっかりとメンテナンスする目的・意味を再認識してもらう機会にできるはずです。顧客との最前線で接客をするスタッフは、企業イメージやブランドの体現の最前線にいるメンバーです。
クリーニング代も、いまのご時世だと一式なら1回で1,000円は超えるでしょう。若手なら、比較対象として食費1食分をクリーニングに充てるか?という判断はなかなかしない気もします。自己負担にしている場合は、会社としても強いメッセージは出しにくいでしょうし、しっかりと目的を限定した金銭的な支援をしてあげることが大切だと思います。
せっかくやるなら、ネーミングにもこだわりたいよね
このように人事制度は、企業のカルチャー体現そのものだと思います。いろんなものが散らかってよくわからない状態になっているケースも見受けられますが、全ての基本軸は「企業として、従業員のどんな頑張りに報いてあげたいのか?」を持つこと。これがブレていると、何のためにある人事制度なのかよくわからないものになってしまいます。
また、このように思い入れのある制度ができれば、きっと企業として独自性を打ち出せるような素敵なネーミングも出てくるはず。近年では、特長的な人事制度の有無は、人材採用時の処遇・待遇面の対外広報では優位に働くことも多いですよね。
そんな時に「表彰制度」「インセンティブ制度」「図書購入支援手当」「クリーニング手当」などと一般的な表現名を使うのではなく、制度のネーミングにもこだわれると面白いと思います。上記にもあった感情報酬の話と同じく、よくある一般的なものにはテンプレ感が強く、そこに温かみ・人肌を感じにくいんですね。
募集要項の一般的な手当の羅列には、ほとんど訴求力はありません。それよりも、「ん?何だこれ?」と採用候補者に思われたら勝ちです。もちろん、社内でも愛着を持って呼ばれるものをぜひ考えていけると良いですね。
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