書評 『クリエイティブと日課』
ぼくのような凡人にとって、日課ほど重要なものはありません。
「習慣は、第二の天性である」というキケロの言葉のとおり、毎日の日課のあるなしが、その人の生産性におおきく関わってきます。
そんな日課について、NYタイムズでベストセラーとなった『クリエイティブの授業』の著者が、創造的な仕事をしつづけるための10のヒントを教えてくれるのが本書。
感性を研ぎ澄ませることや、自然の中を歩くことなど、クリエイティブでいる方法をとてもわかりやすく書かれていて、すぐに実行したくなる本です。
考える機会が多いマーケティングや企画の仕事に携わっており、良いアイディアが浮かばなくて困っている人の助けになってくれます。
また、モチベーションが下がっていて、スランプに陥っている人や、フリーランスの方や、クリエイティブな作業をしている方で、仕事を投げ出したくなっている人にもおすすめ。
クリエイティブな生活習慣を身につけたいという人にも、クリエイティブな思考でいるための基本的なことが書かれており、日常で見落としがちな、大切なことに気づかせてくれます。
印象的なのは、クリエイティブでいるための日課とともに紹介されている、偉人のことば。
たとえば、「散歩は魔法の薬。歩けば問題は解決する。」というヒントに対して、「足が動き始めた瞬間、思考が働き始める気がする」というヘンリー・デイビッド・ソローのことばが引用がされており、それぞれのヒントにたいしての理解が深まります。
本書の10のヒントを列挙すると、
1 毎日が新たな“目覚め"
2 至福の空間を作ろう
3 “名詞"は忘れて、“動詞"で生きよう
4 贈り物を作ろう
5 平凡+注目=非凡
6 アートの怪物をやっつけろ
7 考えは変わっていい
8 迷ったら、整理しよう
9 悪魔は新鮮な空気が苦手
10 庭に花を植えよう
で、このうち1〜4が創作を続けるうえでのスタンス、5と6が創作に対する世間の誤解を扱い、7と8でスランプを克服する方法について語り、9と10が創作をつづける方法の紹介となります。
気になったヒントから、つまみ食い的に読むことが可能なので、すぐに自分の日課作りに取り組むことが可能です。
さっそく取り入れたいと思った日課を2つほどご紹介。
まずは、創作をする場所と時間について。
特別な部屋と特別な時間、両方あれば最高だ。でも、僕の経験上、片方がなくても、もう片方で十分埋め合わせられると思う。p48
創作に行きづまると、なにかと場所と時間といった、環境のせいにしがちですが、じつは、創作をするときに、時間も場所も満たされるのは稀で、たいていのばあい、どちらかは欠けていいます。
両方とも満足できないのは問題ですが、片方のどちらを整えたら、作業にとりかかろうとアドバイスしてくれています。
次は創作とお金についてのヒントで、
・「好きなことで生きていく」+倹約=よい人生
・「好きなことで生きていく」+ぜいたく=時限爆弾
というもの。
趣味を副業にせず、そのために、収入相応ではなく収入未満の暮らしを心がけるようアドバイスしています。
著者のオースティン・クレオン(Austin Kleon)は、テキサス州オースティン在住のクリエイター。
新聞記事の黒塗りで作った詩集『Newspaper Blackout』の作者で、『クリエイティブの授業』『クリエイティブを共有! 』を送り出したベストセラー作家。
また、「デジタル時代の創造力」をテーマに、PixarやGoogleといった企業でも講演を行なう講演家でもあります。
本書は大好きなシリーズの3作目で、さらっと読めて、すぐに自分の生活に取り入れられるので、これまでの2冊もたまに読み返しています。
この本はタイトルどおり、最高の仕事をするために、1日の使い方を見直すことができる本。
調子のよい日も悪い日も、よい日課は、1日24時間という限られた時間を乗り切り、最大限に活かすのに役立ちます。
「雨垂れ石をうがつ」のように、毎日の小さな日課のつみかさねが、大きな効果を生み出すので、本書での学びをつかい、さっそく日課の見直しをしたいと思います。