レビュー『じぶんの学びの見つけ方』
先日以下の記事で紹介した『森ではたらく』に登場していた山伏で、山菜採取家の成瀬正憲さんが気になり、本書も手に取ってみました。
「学び」についての本で、第一線で活躍する26人が紹介されています。
彼・彼女らが、働き方、暮らし方、生き方を考え、自らつくりだしていくストーリーを知ることができ、なかにはMBAを持つお坊さんも登場。
26名の専門分野は、食、建築、写真、文学、メディアや場づくり、スポーツ指導、芸能と幅広く、自分の学びへの参考になります。
すでに何かを学んでいる人、さまざまな学びに関わるきっかけを探している人、人の学びの環境をつくっている人におすすめ。
そして、「一生の学び」という長期の視点を持ち、アクションを起こそうとしている社会人にとって、学びについてのアイディアが満載です。
「あなたは、何から学んできたのですか?」
「なぜそれを学ぼうと思ったのですか?」
「どうやって学び続けているのですか?」
「あなたの人生において“学び"って何だと思いますか?」
これらの質問をそれぞれの著者にぶつけ、彼・彼女らの物事に対する独特の思考・着眼点や、ダイナミックな学びへの解釈が考察されています。
それぞれの方が、どんなときに、どんなことを考え、どんなものに出会い、どのような選択をしてきたのかがわかります。
面白く読んだのが、英文学者・高山宏さんの「強烈な嫉妬からの学び」。
高山さんのモチベーションは、他作家への強烈な嫉妬で、その嫉妬をモチベーションにジョン・ダンという詩人・宗教家の全詩全説教を書写したり、塚本邦雄氏の全短歌を書写。
ほかにも、グスタフ・ルネ・ホッケの『迷宮としての世界』とロザリー・L・コリーの『パラドクシア・エピデミカ』の一冊丸写ししたりと、嫉妬を学びにつなげていました。
後者の『パラドクシア・エピデミカ』という本に関しては、高山さんが日本語訳を担当するほど。
自分の学びを見つけることは、自分らしい生き方を考えて、自ら作り出すことと教えてくれます。
本書はまさに第一線で活躍する著者たちの短い自伝ともいえ、彼・彼女らの多様な学びのあり方を知ることで、社会とのつながりを見つけるのに役立つはず。
建築家・田根剛さんの「世界で生き抜くには、その場その瞬間から学ぶ力が問われます。一瞬にして起こる目の前の現実から何を感じ、どれだけ学ぶ力があるか、自分を試し続ける力が問われます。」という言葉が胸に響きます。