【詩】手を引く者
小さな頃の僕は臆病で
親に手を引かれ
いつも大きな背中を見て歩いていた
思春期を迎えた僕はぶっきらぼうで
親の手を離れ
脇目もふらず先へ先へと走り出した
大人になった僕は久々に実家に帰ると
親の手はしわくちゃで
大きかった背中が小さく見えた
親になった僕は子どもを見せに行くと
親をじいじとばあばと呼ぶようになり
子どもを見る2人の姿が懐かしく思えた
子どもが歩くようになると
今度は僕が子どもの手を引いて歩いていた
親はそんな僕の背中を見て歩いていた
嗚呼、そうか
僕は理解した
親の手から子どもの手へと
まるでバトンのように握る手が替わり
僕は手を引く者になったのだ
今繋いでいる小さな手のひらは僕の背中を見ている
いつかこの手が離れて役目を終えた時
大きくなった背中を見せられることになるのだろう
親になるという連鎖の中に僕も組み込まれたのだ
そんな物思いに耽っていた公園の帰り道
まだ小さな手のひらを固く握り直すと
少し寂しい気持ちになった
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大学時代に同じタイトルで詩を書きました。
そちらはもう残っていないので書き直しました。
本当に親になったからか、書いていてちょっと泣いちゃいました。
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