【馬と人の関係】Joyful Communication-その2
馬場でも厩舎でも、タロウとルーカスと接していると、いつも頭に浮かぶ言葉があります。
それは、「今、ここ、自分」
すこし長くなりますが、ゆっくりと読んで頂けたら嬉しいです。
書の詩人、いのちの詩人とも言われる相田みつをの書、詩に、
「いま ここ じぶん」というのがあります。
禅僧ティク・ナット・ハン師の言葉に、
「今を生きるとは、過去に捕まらないこと。未来に引っ張られないこと。」
という主旨の言葉があります。
どちらも、「いま」というものの尊さが誰よりも身に染みている「人」のとてもシンプルな言葉です。
読んだだけで、この言葉の奥の深さが感じられます。
でも、わかったような気になっても、日常生活はといえば、人間誰でも、
仕事、人間関係、 子育て、 お金、健康などの悩みや心配を抱えていて、
「過去」の怒りや悲しみ、未練や後悔などを引きずっていたり、
まだ来ぬ「未来」を不安と緊張で見ていて、胸が締め付けられます。
「いま ここ じぶん」 シンプルだけど、難しいです。
ちょっと、どきっとしたご質問を頂いたのですが、
「いま ここ じぶん」、それはわかります。で? それが何か?とか、
「いま ここ じぶん」のメリットは?癒しですか?悩み解消ですか?とか
馬とどんな関係があるのですか?とか…
ん~。 こちらが心の中で、その方々に逆に質問してみます。
そもそも、いま、ここ、じぶん ってなんでしょう?
人生訓なのでしょうか。
処世術なのでしょうか。
何かのスキルなのでしょうか。
何かの「利益」に直結するものなのでしょうか。
目的、目標… 何かを追い求め、その先に何か在るものなのでしょうか。
ちょっと視点を変えてみます。
人は食べ物に対して多かれ少なかれ、
あれは嫌い、これが好きといった嗜好性があります。
これは「過去」の経験の影響が大きいです。
また、これから摂る食べ物、つまり「未来」の食事に対しては、あれが食べたい、これが食べたいという「欲求」が働きます。
「今」食べているものに対しては、これはまずい、これはおいしい…
ん~何か変です。
「過去」に思いっきり捕まって、あれは嫌い、これは好き。
「未来」に思いっきり引っ張られて、あれが食べたい、これが食べたい。
そして「今」、何かを食べている「今」、これはまずい、これはおいしい…
ただ、ぼーっと食べていることすらしょっちゅうです。
過去、今、未来。いつも何かを「選択」と「評価」です。
「選択」と「評価」 が悪いわけではありませんが、
ひとつ足りないもの、「選択」と「評価」 に「在るがまま」を加えたら…
「過去」に捕まって、思いっきり後悔したり、怒ったりしても…
「未来」に引っ張られて、不安になったり緊張したりしても…
でも「今」だけは、「ただ在るがまま」。
あれは嫌い、これは好き。
あれがまずい、これがおいしい。
あれ食べたい、これ食べたい… だけではなく。
朝から時がたつのを忘れて、厩舎や畑で、額に汗して思いっきり働いて、
お腹がもうペコペコになってはじめて、時はお昼だということに気がつく。
出された塩おにぎりを食べる…
この1個の塩おにぎりの一口目を噛みしめる時に、
あれは嫌い、これは好き。
あれがまずい、これがおいしい。
あれ食べたい、これ食べたい…
こんな「選択」と「評価」の余地はあるでしょうか。
あるのは心の叫び、「うまいっ!」のみ。
お米の産地や品種を 四の五のと「評価」しておいしい、まずいではなく、
鮭だ昆布だとおにぎりの中身を「選択」する余地もなく、
ただ塩を振っただけのおにぎりを、受け入れて頂くこと。
「選択」も「評価」もせずに、ただ在るがままの塩おにぎりの一口目のうまさはひとしおです。
この「うまいっ!」の最中に、
「過去」に捕まって、「あ~きつかった。」… ありません。
「未来」に引っ張られて、「あ~、午後もやるのか。」… ありません。
今、現在の「うまいっ!」があるだけです。
この一個の塩おにぎりに、人は何を感じるか。
おそらく、 「しあわせ」 を感じるのではないでしょうか。
先ほどのご質問に対する答え…
それは、「いま ここ じぶん」とは、今の「しあわせ」に気づくこと。
たとえ日頃、後悔や未練、不安や緊張があったとしても、
いつも「選択」と「評価」ばかりしているとしても、
じつは「今」、この瞬間、「しあわせ」だということに気づくこと。
つまり、「我に返る」こと。
【自分自身との関係】「自分を変える」? いえ、「我に返る」です。
さて、先ほどのご質問に対する回答は、
メリットですか? 我に返ることで気づくことがいろいろあります。
悩み解消ですか? 我に返ることで、悩みの本質に気づくかもしれません。
癒しですか? 我に返ることで、馬と通じ合えます。癒やされます。
馬とどんな関係があるのですか? 馬から見て安心できるヒトになれます。
長くなってしまいました。
自らが感じて、実感として体得しなければわからないことを、
言葉で説明することは困難を極めます。
今回は、人の側の「今、ここ、自分」でした。
次回は、馬の側の 「今、ここ、自分」です。
【馬と人の関係】Joyful Communication-その1
【馬と人の関係】Joyful Communication-その3
ウマに訊いてみよう!目次はこちら。
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