地政学は、現代の課題解決の糸口の宝庫である。(田中孝幸『13歳からの地政学』を読んで)
空前の地政学ブーム。
ちょっと乗り遅れた感があったので、まずは入門書からスタート。中学生でも分かるストーリー調の本書に、地政学のエッセンスが詰まっている。
『13歳からの地政学〜カイゾクとの地球儀航海〜』
(著者:田中孝幸、東洋経済新報社、2022年)
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世界中の貿易は9割以上が海を通っている
地政学が重要である理由のひとつが、経済において地政学を無視することができない点が挙げられるだろう。なんせ、世界中の貿易は9割以上が海を通っているからだ。
つまり、制空権ならぬ制海権というのは非常に重要なわけで。排他的経済水域を確保したいと、各国が自ら領土を主張する。それがときに諍いを招いているのは周知の事実だが、それにはそれなりの理由があったのだ。
本書では、朝鮮半島の地形についても言及している。
・強国(ロシアと中国)に挟まれている
・ほかの国との境目に川や山など、大きな自然の障害物がない
・豊かな資源や農産物、便利な港といった貴重なものがある
海をベースにして、地形の良し悪しが決まってくる。朝鮮半島の地形は、「侵略者」にとっては魅力そのもので、歴史上たびたび侵略の憂き目に遭ってきた。ただだからこそ、グローバルに常に目を向け、世界で通用するコンテンツが生まれているのだと筆者は説いている。
なぜ多様性が大切なのか。シンガポールの事例
地政学は、様々な学問を包括する。
その中で、民族をめぐる問題は、なかなか特定の学問だけでカバーすることが難しかったと思う。歴史にせよ、政治にせよ、横断的に学ぶ必要があるため、逆に「誰も本気で学ばなかった」という事態を招いたように思う。
その中で、地政学はシンガポールの成功の秘訣について、ヒントを提唱している。民族同士の争いによって国がめちゃくちゃになることが多いと知っていたシンガポールの建国の父、リー・クアンユーは、「一つの団地の中でもいろいろな民族が住むようにして、ある民族だけしか住まない団地ができないようにした。そして、民族の間での争いにつながるような行動は、徹底的に取り締まった」そうだ。
リー・クアンユーが地政学について学んでいたかはさておき、彼の施策は実に地政学的だったと思えるエピソードだ。
ここに、「なぜ多様性が大切なのか」のヒントもあるような気がしている。地政学には、今、なかなか解決が難しいとされている問いに対するヒントも豊富に眠っているように僕は思う。
知識を増やすということは、だまされないように武装するということ
Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のMVを巡って、ネガティブな言説がSNSを賑わせている。
本人たちは「意図と異なる形で線で繋がった時に何を連想させるのか、あらゆる可能性を指摘して別軸の案まで至らなかった我々の配慮不足」といっているが、シンプルに知識と想像力の欠如が原因だったと認めざるを得ないだろう。
著者は、国同士で諍いが絶えない理由を、「お互いを知らないこと」だと説く。お互いを知るためには知識が必要不可欠だとも。
だまされないために、知識をつける。
少しネガティブに聞こえる表現だが、アフリカでの労働搾取の例なども挙げられ、「知らない」ことが為政者をはじめとする権力者をのさばらせることになっていると筆者は警告している。
「知らないことの強さ」も、確かにあるのだろう。だが、その強さは決して長続きしない。これは少し前にノートに書いた、菅付雅信さんの新著『インプット・ルーティン』にも通ずることだ。
地政学がホットな学問になっているのは、学ぶうえでの間口が広いからかもしれない。政治、経済、哲学、歴史、デザイン……。ありとあらゆる学問を包括するものとして、地政学は存在している。
何を学ぼうか迷う人は、ぜひ地政学から始めてみればいい。ラジオ「SCHOOL OF LOCK!」で鼻くそみたいなことしか言えなかった某アーティストたちにも、地政学から始めてみれば?と強く勧めたいのだが、届くだろうか。スタジアムライブのことで頭いっぱいだろうな!
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先ほど聴いたラジオがあまりに酷過ぎて(というか何も言っていなくて)、ちょっと腹が立ったので若干の暴言を吐いてしまいました。
でも、学ぶことって、ほんと大事なことだと思うのです。
Mrs. GREEN APPLEの関係者の方、ぜひ本書お勧めください!
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