著…マット・サイモン 訳…松井信彦『たいへんな生きもの』
「生命の神秘」なんてありきたりな言葉では言い表すことの出来ない本です。
どんな厳しい環境に置かれようとも、適応し、生き抜き、子孫を残そうという生きものの本能の強さに圧倒される本。
たとえば、深海の途方もなく広がる暗闇の中、深海魚はどうやって繁殖しているのだろう? と興味本位でこの本を手に取ってみたら…、衝撃的なことが書いてありました。
※閲覧注意
以下の文には衝撃的な内容を含みます。
チョウチンアンコウの場合、オスは物を食べることが出来ず、メスと出会えなかったオスは餓死するのみ。
メスと出会える確率は、なんと1パーセント。
メスを見つけると、なんとオスがメスの体に寄生して、メスから養分の供給を受けるので、不要となったオスの目や骨格は退化していき、あとは死ぬまでメスの合図で精子を放出するだけ。
メスに複数のオスが集まることもあり、奇妙な結合体になることもあるのだとか。
壮絶!!
この状況を人間に例えるなら、一人の女性に沢山のヒモがくっついて…って、人間に例えるのはかなり無理がありそうですね。
この本には他にも、色々な生きものが紹介されています。
ヒアリの体内に卵を産み付けて、生まれた蛆がヒアリの頭部へ移動して、ヒアリの頭部を落としてベビーベッド代わりにしてしまう「アリ断頭バエ」。
一度に3億個もの卵を産むけれど、そのうちたった2匹しか成魚になれない「マンボウ」。
自分の背中に卵を埋め込んで、我が子を小さなカエルになるまで育てて、我が子が母親の皮膚を突き破って出てくるカエル「ピパピパ」。
ナマコの肛門に入って、ナマコの生殖腺を食べて不妊にさせてしまった上、ナマコの体内で同種との生殖行為に及ぶ「カクレウオ」。
獲物から体液を吸い出した後、その死骸を自分の背に乗せる「サシガメ」。
…読んでいて悲鳴をあげたくなる話ばかり…!
その凄まじい生態に驚かされますが、彼らにとって見れば人間もまた「たいへんな生きもの」なのかもしれません。
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