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作…シド・フライシュマン 訳…野沢佳織『〈天才フレディ〉と幽霊の旅』
人が人を殺すということの愚かさや醜さを教えてくれる物語。
児童書ですが、大人にも読んで欲しい一冊です。
※注意
以下の文には、結末までは明かしませんがネタバレを含みます。
第二次世界大戦が終わってしばらく経ったある日。
売れない腹話術師のフレディの前に、少年の幽霊が現れます。
幽霊の名前はアヴロム。
フレディはすぐには思い出せなかったのですが、アヴロムは「僕は生きていた頃、あなたを助けた。あなたは〝戦争が終わったら恩返しをする〟と言ってくれた。だから会いにきた」と言います。
アヴロムは生前起きた残酷な出来事についてフレディに話します。
自分はナチスの将校に殺された。
妹のスルカも殺された。
自分は銃で6度も撃たれ、妹は毒殺された。
妹が無理やり毒を飲まされて「お兄ちゃん」と叫びながら死んでいくのに、自分は妹を助けてやれなかった。
抱きしめてやることも出来なかった。
自分にはこの世でやらなければならないことがある。
…と。
この物語がどう展開し、どんな結末を迎えるのか。
興味を持たれた方には、是非実際に読んで確かめて欲しいです。
アヴロムはフレディの体を借りて復讐を果たすのか、それとも…?
また、わたしには、特にフレディとアヴロムのこの会話が心に刺さりました。
「そのドイツ人の将校を裁判にもかけないで殺すなんて、できるもんか」
「ぼくが殺されたときは、裁判官も陪審員もいなかったよ」
…これ、この世の理不尽さの一つをまざまざと思い知らせる会話ですよね。
何の罪も無いのに命を奪われた被害者。
被害者たちはみんな、アヴロムとは違って、幽霊となって自分を殺した犯人を糾弾することも、己の無念を訴えることも出来ません。
まさに「死人に口無し」。
なのに、加害者は裁判を受けられます。
弁護士だってつけられます。
裁判次第では、罪のある者が「無罪」にされることもあります。
…わたしはなんだかそんな残酷な縮図を、フレディとアヴロムの会話に見た気がしました。
そして、今この瞬間も、アヴロムやスルカのような目に遭わされている子どもたちや大人たちが世界中にいることも…。
そこにもやはり裁判官や陪審員はいません。
あるのは殺す側の身勝手な動機や言い訳のみ。
〈こういう方におすすめ〉
殺人という愚かしさや醜さについてじっくり考えたい方。
〈読書所要時間の目安〉
30分前後。
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