著…ヤマザキマリ『猫がいれば、そこが我が家』
人生のどの場面でも、傍らに猫がいた。
そんな著者が猫への愛を語ったエッセイ。
ある時、著者は愛猫を不慮の事故で亡くし、ペットロスになりました。
食事が喉を通らず、仕事も手につかず、ふいに涙がこぼれる。
そんな時、旦那さんがこんな言葉をかけてくれたそうです。
素敵な言葉ですよね。
もしもあなたが旦那さんの立場だったら、どうしますか?
たとえば、「命あるものはいつか必ず死ぬからそんなに悲しむ必要はない」と言うとか、「いつか君も虹の橋であの子と再会出来る」と言うとか、或いは何も言葉をかけずにただ寄り添うとか、様々な選択肢があると思いますが…。
「君のその愛情を必要としている猫がきっと他にいるはずだ」
この言葉には前向きなエネルギーを感じます。
失った子に対する愛情の深さを認めた上で、その愛を必要としている他の子と出会うためにも、まず君に生きて欲しい…と言うかのような…。
なんて美しい言葉でしょうか…。
また、著者には猫たちとの出会い以外にも、人間たちとの様々な出会いもありました。
予想し得なかったところで、思いがけない人と出会い、いつの間にか家族になっていたのです。
それは著者の人柄や度量のおかげでもあるでしょうが、まず、生きているからこそ出来ること。
残念ながら、人の心は折れやすいです。
特に愛猫の死というのは、ともすれば後を追いたいという気持ちにさえ人を追い込むものです。
そんな中、
「君のその愛情を必要としている猫がきっと他にいるはずだ」
と言ってくれる人がそばにいる。
生きて欲しいと願ってくれる人がいる。
なんて素敵なのでしょうか。
猫とも、人とも、いずれは必ず別れの時が訪れてしまうけれど、
という著者の言葉もまた美しいです。
〈こういう方におすすめ〉
猫をこよなく愛している方。
〈読書所要時間の目安〉
1時間〜1時間半くらい。