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著…ウルリヒ・ビショフ『エドヴァール・ムンク』

 5歳で母を、14歳で姉を亡くしたエドヴァール・ムンク。

 「不安と病がなかったら、わたしの生涯は舵のない船のようなものだったろう」
(P10から引用)

 と、そうした喪失体験をむしろ糧にして、芸術という形で昇華させた画家。

 これは、ムンクの作品とその解説についての本。

 恐ろしい心象風景を描いた絵もあれば、日常の様子を描いた作品もあります。

 わたしはムンクと言うと「叫び」のように怖い絵を描く画家というイメージがあったので、例えば「カール・ヨハン通りの春の日」のような作品も描いていたことがとても意外でした。

 しかし、やはりゾッとするような作品が目を惹きます。

 闇と人との境界線が曖昧で、今にもフッと人の輪郭が溶けて闇に吸い込まれてしまいそうな…、そんな胸騒ぎを覚える作品があるのです。

 特に「死んだ母とその子」という作品は、その傾向が分かりやすいと思います。

 事切れた女性が横たわるベッドの周りには、なすすべの無い大人たちと、耳に両手を押し当てている少女が描かれています。

 少女は目を見開き、声も涙も出せずに泣き叫んでいるように見えます。

 その少女を描く線は奇妙なことに、少女の亡くなった母親の白い「死」の世界と部屋のオレンジの「生」の世界にそれぞれ入り込んでいるかのよう。

 まだ幼いのに、生と死の境界線で揺れ動く少女が哀れです…。

 この少女と、子どもの頃のムンクの心象風景は重なるのでしょうか…?

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