
著…阿部佳『わたしはコンシェルジュ 「けっしてNOとは言えない」職業』
コンシェルジュという職業の奥深さを教えてくれる本。
阿部さんは某超有名ホテルのコンシェルジュ。
コンシェルジュをたずねて来るお客様自身も、自分が「何をしたいのか」「どう思っているのか」というイメージがはっきりしていない場合があると思います。
コンシェルジュは、そんなお客様と対話しながらお客様の本音を引き出して、少しでもその希望に沿えるよう出来る限りの手と心を尽くします。
凄い職業ですよね。
お客様の中には、例えば「二十年ほど前、アメリカのぼくの家の近くに住んでいた鈴木さんを捜して欲しい。日本に戻ったら横浜に住むと言っていた。二十年間全く連絡を取り合ってこなかった。何も覚えていない。下の名前も分からない」なんて要望を持った方も居たそうです。
よりにもよって、日本人の苗字の中でも極めて多い「鈴木さん」!
横浜在住の「鈴木さん」だけでも、その人数を想像すると気が遠くなりますね…。
単なる案内係であれば「何も覚えていない」と言われた時点で「No」と断ってしまいそうですが、そこで安易に「No」と断らないのがコンシェルジュである阿部さんの仕事!
お客様に質問を重ねて、お客様が覚えている限りの「鈴木さん」の情報を引き出したそうです。
お客様は、はじめは「何も覚えていない」と言っていたけれど、話しているうちにだんだん記憶が蘇ってくることはあるようです。
コンシェルジュチームで知恵を出し合って、手と心を尽くして連携プレーした結果、なんとお客様と「鈴木さん」はホテルのロビーで二十年ぶりに再会を果たしたそうです!
もしコンシェルジュがすぐに「No」と言っていたら、きっとこの奇跡の再会は果たせなかったでしょう。
どうしても不可能なことにはお応えできないけれど、まず真剣に取り組むことがお客様からの信頼に繋がりますね。
「〝ありがとう〟という言葉はもちろんうれしいですが、それはなくてもいいのです。何もおっしゃらなくても、満足していただいたという確かな手応えがあればじゅうぶん。それよりも、〝また来たよ!〟と言われるほうがもっとうれしい、そう思います」
といった言葉を読み、わたしもコンシェルジュとは違う業種ですが、そういう真摯な気持ちで仕事をしたい!と良い刺激を貰いました。
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