著…スーザン・コリンズ 訳…河井直子『ハンガー・ゲーム2 燃え広がる炎(上)』
この小説を読んでいると、人間という生き物のことがつくづく不思議に思えてきます。
他人の死を悼む心優しき人間。
他人に対してどこまでも冷酷になれる人間。
他人からどんなに恐怖を植え付けられようとも決して未来を諦めない人間。
みんな同じ「人間」という種族のはずなのに、なぜこんなにも違うのでしょうか?
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
老人が頭を撃ち抜かれるシーンがとてもショック…。
その老人はただ、ルーに哀悼の意を示してくれたカットニスに向かって口笛を吹いただけ。
老人が吹いたのは、カットニスとルーが無事を知らせる合図として使っていたマネシカケスのメロディー。
ただそれだけなのに、その場で即処刑されるなんて…。
この『ハンガー・ゲーム』の世界では、ハンガー・ゲームに選ばれて人を殺したり殺されるのは名誉なことであり、それを悲しむのは「首都キャピトルへの反逆の意思あり」と見なされるようです。
また、カットニスはその「名誉ある」ハンガー・ゲームにおいて、他の参加者を殺すのでも殺されるのでもなく、自殺することによって抵抗しようとしたため、キャピトルへの反乱の火種となり得る危険分子として常にマークされています。
だからといって、カットニスに口笛を吹いただけの老人を殺すなんて…。
ピータが「今日殺されなかったら、それだけでも運がいい」と言い切った通り、キャピトルのやり口は異常。
キャピトルに暴力や恐怖によって抑え付けられている人々は、カットニスの姿に触発されて反乱し始めますが、それを知ったカットニスは苦しみます。
もう誰にも死んで欲しくないのですから。
しかし、キャピトルは想像を遥かに上回る残酷さで反乱を潰そうとします。
キャピトルの最高権力者である大統領スノーはハンガー・ゲームの「記念大会」を開催すると発表しました。
ハンガー・ゲームの勝者はキャピトルによって一生安泰を約束されていたはずなのに。
その約束はあっさりと反故にされました。
キャピトルはどこまで卑劣なのでしょう。
カットニスは新たなハンガー・ゲームに強制参加させられることとなります。
〈こういう方におすすめ〉
デスゲーム系の小説が好きな方。
〈読書所要時間の目安〉
2時間半〜3時間くらい。