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文…ジョン・ルイス 絵…ジョー・ウィーヴァー 訳…さくまゆみこ『風がはこんだ物語』

 海図もない。

 オールもない。

 エンジンも止まってしまった。

 これは、そんなボートに乗り合わせた難民たちを描いた本。

 ボートは、星の光に照らされながら、荒れた海の上をまわり続けます…。

 ⭐️単行本版


 ある少年が、

 もうどれも、思い出のかけらでしかない。
 きらめいていた瞬間は頭の片隅にとじこめられ、時間は星くずの中にこぼれていく。

 すべてが、別の世界のものになってしまい、
 今はもう手にすることができない。

 死も、こういうものかもしれない。
 愛していたものから引きはなされ、
 大事なものをすべて置きざりにして、
 もうもどることができないのだから。

(文…ジョン・ルイス 絵…ジョー・ウィーヴァー 訳…さくまゆみこ『風がはこんだ物語』P8〜9から引用)


 と物憂げに考えるのが強烈です。

 まだ年若い少年なのに。

 どんなことがその身に起きれば、こういう心境に至るのでしょうか…?

 おそらく壮絶な体験があったのでしょうね…。

 また、きっと他の人々も、それぞれに色んな想いを抱えながらこのボートに乗り込んできたのでしょう…。

 少しずつ誰かが話し始めると、それに呼応するかのように、ぽつり、ぽつりとまた誰かが身の上話を始めます。

 それぞれの口からあふれ出る言葉は、ほかの者たちの心に自分の名前をきざみつけようとする。

 おぼえていて。

 名前を忘れないで。

(文…ジョン・ルイス 絵…ジョー・ウィーヴァー 訳…さくまゆみこ『風がはこんだ物語』P17から引用)


 そして、少年は異国の有名な物語を語り始めます。

 たまたま同じボートに乗り合わせただけの人々が、だんだんその物語に心を傾けていく様子にわたしはとてもグッときました。

 希望さえ見いだせました。

 もしも、この世がこの一つのボートのようであるならば、皆でこうして肩を寄せ合って生きていきたいものです。

 心に響く物語を語り継ぎながら…。


 〈こういう方におすすめ〉
 胸が締め付けられる物語を読みたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間くらい。

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