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著…貴志祐介『十三番目の人格ISOLA』
こわいというよりも、悲しい小説。
救いを求めたのに、救われなかった。
そんな哀れな魂たちが結びついてしまったのですから…。
⭐️Kindle版
⭐️文庫本版
※注意
以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。
細菌。
ウイルス。
通常、そういったものが体の中に入って来たら、免疫細胞が排除しようとしますよね?
異物を感知したら拒絶反応が起きるものです。
しかし、元々何かの理由で体が弱っていたとしたら…?
免疫作用がうまく働かず、取り返しのつかない重篤な症状に至ることもあります。
…この小説に出てくる少女・千尋もそうでした。
何の罪もないのに、胸糞悪い犯人に心と体を傷つけられ、弱っていた千尋の心は、「ISOLA」の侵入を許してしまいました。
「ISOLA」は恐ろしい存在です。
「ISOLA」に「感染」したことによって、千尋の心の中では大変な事態が起きてしまいました。
けれども、実は「ISOLA」もまた、哀れな身の上の持ち主。
どこにも居場所がなく、誰にも顧みられず、ほんのわずかな時間休ませてもらえる場所もなく、孤独で、彷徨い、絶望していたのですから。
まるで、傷ついた者同士が自然と惹かれ合うかのように、千尋と「ISOLA」は結びついてしまいました。
…しかし、本当の怪物は誰なのでしょうか?
千尋?
「ISOLA」?
どちらも違うとわたしは思います。
わたしは、千尋を苦しめた犯人こそが怪物の名を与えられるに相応しいと思います。
人間という生き物の中には、善い人もいるけれど、反吐が出るような鬼畜もいるものです。
そういう人間は、どんなにオカルト的な存在よりも恐ろしいもの。
身勝手で、残酷で、歪んでいます。
この小説において、千尋が最終的にどうなったかははっきりと描かれておらず、読者の想像に委ねる形となりました。
これまでとても辛かったけれど、これからは少しでも安らぎを感じられるような日々を生きていって欲しいです。
…たとえ、これまで通りの日常には決して戻れないとしても…。
〈こういう方におすすめ〉
人間の心の闇に焦点を当てた小説が好きな方。
〈読書所要時間の目安〉
3時間くらい。
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